波乱の予感
次の日学校に行ってみると、みんないつも通り数人でグループを作って話していた。
よかった。みんな昨日のこと気にしてないみたい。
「さーくら、おはよ」
今日もご機嫌な華が、私が来たことに気付き、私の席までやってきた。
「華! おはよ」
華も昨日のこと何も言ってこないし、大丈夫だよね。
私が安心していると、クラスの子たちがざわざわと騒ぎ始めていることに気付いた。私が疑問に思っていると、
「桜、拓海と蓮が来てるよ」
華が前のほうを指でさす。
「あっ!! 本当だ」
私は小さな声でそうつぶやいた。
「あいかわらず目立つよね、あの二人」
「そうだね」
私は、みんなにちやほやされている藤咲君を見て、なぜか遠い人のように思えた。
「なぁーに拓海のことじーっと見てるのよ」
華が私をからかうかのようにそう言ってきた。
「別に見てないよ」
あっ! しまった! 焦ってこんなことを言ってしまったが、華の性格からしてこんなことを言ってしまったらたぶん、
「ずーっと拓海のこと見てたじゃん。もしかして、好きになっちゃった?」
やっぱり私の予想通り。華はいったんこうなってしまうと、当分の間はこの調子だ。
そんなふうに華と話していると、女の子たちの視線が私たちに向けられていることに気付いた。
私が目の前を見てみると、一ノ瀬君がこちらに向かってくる。しかも、明らかに華ではなく、私のほうに向かってきている。
「桃山桜さん、だよね?」
一ノ瀬君が私と背を合わせるかのようにしゃがみながら聞いてきた。
「そうですけど」
平常心をよそおいながらも、一ノ瀬君の質問に答える。
「ちょっと話があるんだけど、いい?」
私に話? 華じゃなくて?
華のほうに視線を送ってみるが、華は首を横に振った。
それもそのはずだ。華は藤咲君とはいとこ、一ノ瀬君とは幼馴染であることを秘密にしている。なんでも、女の子たちにいろいろ言われたりするような面倒なことはしたくないらしい。だから、私を助けることは不可能だ。
私が困っていると、一ノ瀬君の後ろから手が伸びてきた。
「蓮、何してる」
と、藤咲君が一ノ瀬君の服を掴んだ。
「拓海、何すんだよ」
「用事も済んだし、教室に戻るぞ」
一ノ瀬君は、不満そうにこちらを見つめている。
「嫌だ」
子供のようにだだをこねる一ノ瀬君。
ちょっと可愛いかも。
「戻るぞ」
藤咲君が一ノ瀬君をにらみつける。
こっ、怖い。
一ノ瀬君は藤咲君に引っ張られながら、教室を出て行った。
「桃山さん!!」
「えっ!?」
二人が教室から出て行ったあと、周りにいた女の子が集まってきた。
「あなた、あのお二人とはどういう関係なの?」
「別に、どういう関係でもないよ。話すのも初めてだったし」
私はいつも通り、そっけない態度で質問に答えた。
キーンコーンカーンコーン
タイミングよくチャイムが鳴り、先生が教室に入ってきたので、みんな次々に自分の席に戻っていく。
「桜……」
華が心配そうに私を見ている。
「華、大丈夫だよ。安心して。私、次の授業サボるね。今日の数学あたっちゃうからさ。先生に適当に理由つけといて」
そう言って、私は教室から出た。
「全然大丈夫じゃないじゃん……」
そんな華の言葉も聞かずに……。
私が向かうのは屋上。あそこならめったに人は来ないし、涙を流しても気づかれないだろうから。そう、私はもう泣く寸前で教室から出てきたのだ。
私が入ってきたときには、すでに一つの人影があった。
「藤咲君?」
私は藤咲君だと思い声をかけた。でも、そこにいたのは……。




