最初の一歩
「桃山、ちょっと話があるんだけど」
私が買い物を終え、さっそく夕飯の支度をしようと台所に行く途中、藤咲君に声をかけられた。
それも、いつもの声よりもすごく低めの声で……
なんだろう?
そう思い、後ろに振り返る。
「ここに座って」
真剣な目なのに、すごく低めの声で言う藤咲君。
そんな顔で言われた断れるわけもなく、彼の言うとおりに座った。
なんか、嫌な予感がする……。
「あのさぁ、一つ聞きたいことがあるんだけどいい?」
嫌な予感、あたったかも……。
「うん。何?」
私は不安でいっぱいになりながらもいつも通りにこたえる。
「じゃぁ聞くけど、なんで学校では明るくしないの?」
「えっ……」
私は目を丸くしたまま動けなくなった……。
確かに、私の性格の違いを知っていれば、疑問に思う人もいるだろう。でも今、このタイミングで聞いてくるなんて……。ごまかすつもりだったから、どう答えるかなんて考えてないし。
「だって、明るいっていうのが本当の桃山なんだろう? じゃぁなんで学校では地味でいるんだよ。桃山の良さは、明るくて優しいところなのに」
本当の私……。藤咲君には感謝してる。私を少しだけ、昔の自分に戻してくれたから。でも、
「ごめん。今は言えない……」
私は下を向いたまま、彼にそう伝えた。
まだ、あのことは言いたくない。
「そっか。わかった」
そう言って、藤咲君は台所のほうに歩いていく。
「藤咲君!? 何するの?」
彼は後ろに振り向いて、
「今日は俺がカレー作る!」
そう言って楽しそうにしている彼。
まぁ、藤咲君も楽しそうだしいっか。
「うん、わかった」
ということで、晩ご飯は藤咲君に任せて、私は学校の宿題をやることにした。
「はい、カレーできたよ」
私が宿題を終えて少しあと、カレーができたようで、藤咲君が机まで持ってきてくれた。
「うわぁー。おいしそうー」
そう言いながら、カレーを一口、口の中に入れる。
「かっ、からい」
私は予想以上の辛さに驚きながらも、藤咲君のほうを見てみる。
とうの本人は、おなかを抑えながら笑っている。
「藤咲君!」
私は藤咲君をにらみつける。
「悪い、悪い。最近桃山元気なかったし、全然笑顔見せてくれないから、元気出してもらおうと思って」
そういえば、最近学校のことが気がかりで、全然笑ってなかったっけ。藤咲君、気づいてたんだ。
「ありがとう。藤咲君」
華以外でこんなこと言われたのは久しぶりだなぁ。
「あと、桃山の本当の性格言わないから安心しろ」
「本当に?」
「あぁ」
私はてっきり藤咲君は女の子嫌いだから、周りの男の子に言うのかと思ってた。でも、これで一安心。
藤咲君、私の思ってたような人じゃないのかもしれないなぁ。




