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恋の果実  作者:
5/21

最初の一歩

 「桃山、ちょっと話があるんだけど」

 私が買い物を終え、さっそく夕飯の支度をしようと台所に行く途中、藤咲君に声をかけられた。

 それも、いつもの声よりもすごく低めの声で……

 なんだろう?

 そう思い、後ろに振り返る。

「ここに座って」

 真剣な目なのに、すごく低めの声で言う藤咲君。

 そんな顔で言われた断れるわけもなく、彼の言うとおりに座った。

 なんか、嫌な予感がする……。

「あのさぁ、一つ聞きたいことがあるんだけどいい?」

 嫌な予感、あたったかも……。

「うん。何?」

 私は不安でいっぱいになりながらもいつも通りにこたえる。

「じゃぁ聞くけど、なんで学校では明るくしないの?」

「えっ……」

 私は目を丸くしたまま動けなくなった……。

 確かに、私の性格の違いを知っていれば、疑問に思う人もいるだろう。でも今、このタイミングで聞いてくるなんて……。ごまかすつもりだったから、どう答えるかなんて考えてないし。

「だって、明るいっていうのが本当の桃山なんだろう? じゃぁなんで学校では地味でいるんだよ。桃山の良さは、明るくて優しいところなのに」

 本当の私……。藤咲君には感謝してる。私を少しだけ、昔の自分に戻してくれたから。でも、

「ごめん。今は言えない……」

 私は下を向いたまま、彼にそう伝えた。

 まだ、あのことは言いたくない。

「そっか。わかった」

 そう言って、藤咲君は台所のほうに歩いていく。

「藤咲君!? 何するの?」

 彼は後ろに振り向いて、

「今日は俺がカレー作る!」

 そう言って楽しそうにしている彼。

 まぁ、藤咲君も楽しそうだしいっか。

「うん、わかった」

 ということで、晩ご飯は藤咲君に任せて、私は学校の宿題をやることにした。

「はい、カレーできたよ」

 私が宿題を終えて少しあと、カレーができたようで、藤咲君が机まで持ってきてくれた。

「うわぁー。おいしそうー」

 そう言いながら、カレーを一口、口の中に入れる。

「かっ、からい」

 私は予想以上の辛さに驚きながらも、藤咲君のほうを見てみる。

 とうの本人は、おなかを抑えながら笑っている。

「藤咲君!」

 私は藤咲君をにらみつける。

「悪い、悪い。最近桃山元気なかったし、全然笑顔見せてくれないから、元気出してもらおうと思って」

 そういえば、最近学校のことが気がかりで、全然笑ってなかったっけ。藤咲君、気づいてたんだ。

「ありがとう。藤咲君」

 華以外でこんなこと言われたのは久しぶりだなぁ。

「あと、桃山の本当の性格言わないから安心しろ」

「本当に?」

「あぁ」

 私はてっきり藤咲君は女の子嫌いだから、周りの男の子に言うのかと思ってた。でも、これで一安心。

 藤咲君、私の思ってたような人じゃないのかもしれないなぁ。

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