予想外の接近
あれから数日が経った。
あれから、私も少しずつ藤咲君と普通に話せるようになってきている。
最近ではご飯を作って部屋に届けていることもしばしば。
なんでも、バイトばかりで栄養バランスの良い食事をしていないらしい。そのため、たまに私が作って届けている。
私が部屋に届けると、子供のように無邪気な顔で笑うので、それがいつしか可愛いと思ってしまう自分がいる。
私がいつも通りご飯を作っていると、
ピーンポーン
誰だろう?
私は扉を開けた瞬間、目が点になるほどに驚いた。
「藤咲君!! どうしたの?」
そこにいたのは藤咲君。
しかし、今の藤咲君は頭から水をかぶったかのようにびしょ濡れで、今にも風邪をひきそうなくらい寒そう。体も震えてるし。
「とにかく入って。すぐにタオルと着替え持ってくるから」
私は急いでタオルと着替えを取りに行く。
「はい。タオルと着替え。お父さんのだから、大きいかもしれないけど」
ふぅー。お父さんの昔の服が残っててよかった。
「やっぱり大きかったね」
「あぁ。そうだな」
まぁ、これで風邪をひくことはなさそう。
「藤咲君、なんでそんなにびしょ濡れになったの?」
「洗い物してたら、水道管が壊れて部屋の中がびしょ濡れになった。まぁ、家具も全然ないからいいんだけど」
それでびしょ濡れになったのか。
「でも藤咲君、これからどうするの?」
「えっ!」
藤咲君は急に困ったような顔をした。
「だって、部屋がびしょ濡れってことは、当分の間住むところないじゃん? だからどうするのかと思って」
藤咲君、下を向いたまま動かないし。どうしたんだろう?
「藤咲君、ご両親のところには戻れないの?」
だって、私みたいな事情ではないだろうし。
すると藤咲君の体がピクリと動いたのがわかった。
「あの家には、戻りたくない」
そう小さな声で答える藤咲君。
家でなにかあったのかな? まぁ、こんな時期に引っ越してきたんだから、それなりの理由はあるのだろうけど。
でも、家に帰れないってことは行くところもないよね。よし!
「藤咲君、ここに住まない? 行くとこ、ないんでしょ?」
藤咲君は目を丸くして驚いている様子。
男の子と住むなんて、私も正直言って戸惑う。だけど、目の前に困っている人がいるのにほうっておけないよ。
「いいのか?」
「うん」
これで、藤咲君は不幸にならなくてすむよね。誰かが不幸になるのはもう見たくないから。
「桃山、本当にありがとう」
「どういたしまして」
これで、よかったんだよね。
というわけで、私は藤咲君との同居生活が始まった!!




