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恋の果実  作者:
17/21

新たな恐怖

 私は次の日、いつも通り学校に登校した。教室に入った瞬間、いつもの穏やかな空気じゃないことに気が付いた。冷たい空気で、クラスのほとんどの人の視線が私、または私の席に集中していた。

 この感じ、5年前感じたものと同じ……。忘れることのない、あの地獄と思うほどの日々が、また始まるのだと、私は自分の席の前に立ちながら思った。

 私の机の上には、“死ね”、“きもい”、“うざい”、“消えろ”などの言葉が紙に書かれ、それが机に貼られていた。

「桜!」

 今さっき登校してきた華が、私のところに駆け寄ってきた。

 誰が黒幕なのかなんてすぐにわかる。5年前と同じ人、同じ手口。“本田彩”、こんなことをするのは彼女ぐらい。

 彼女はこの数週間で、クラスのほとんどの子と仲良くなっている。彼女は、仲良くなった子を利用してこんなことをしたのだろう。

 これが彼女のやり方。自分の手は汚さずに、人を利用して自分の嫌いなものを排除する。

 それにしても、この紙を貼ったのが性格の良い子でよかった。悪い子だったら、ペンで机に直接書くぐらいはするしね。

 性格が良い子ってことは、彩ちゃんに弱みでも握られたのかな。彩ちゃん、いろいろな情報持ってるし、弱みを握るなんて、彼女にとっては簡単なこと。仲が良かったならなおさらね。

 私のせいで、関係ない人まで巻き込んでしまった。ごめんなさい。彩ちゃんや拓海だけじゃなくて、このクラスの子まで傷つけてしまったんだね。

「桜、来たよ」

 華が教室の出入り口のところを見ながら、私にだけ聞こえる声で、そう言った。

 彩ちゃんが、何も知らないと言った顔で、こちらに向かってきた。

 私たちは彩ちゃんがこちらに来る前に、紙をすべて取って、後ろに隠した。

「桜ちゃん、どうかしたの? 教室の雰囲気がいつもと違うけど」

「さあ? 私も今来たところだからわかんないや」

 そう言い、私は笑った。

 もう5年前みたいなことはしない。私はもう、逃げたりなんかしない。

「ふうーん、そうなんだあ」

 彩ちゃんはそう言い、他の子のところに行った。

 原因として考えられるのは、やっぱり拓海のことだよね。前と同じで、私は自分の恋の邪魔者なのだろう。

キーンコーンカーンコーン

 教室中にチャイムが鳴り響いた。

「早く席に着け」

 先生が、眠たそうな顔で入ってきた。

 今日もまた、先生の長い話で終わるんだろう。

 先生の長い話のあと、最悪なことが起きた。

「今日の4限目は、文化祭の出し物を決める。桃山、司会を頼むぞ」

 今日は気分が優れないんだけどな……。実行委員なんだし、しかたないか。

「わかりました」

「では、これでホームルームを終了する」

「桃山、今日の放課後に会議室で実行委員の集まりがあるか忘れないように」

 先生はそう言って、教室から出て行った。

 集まりまであるなんて……。


 ついに、4限目の時間がやってきた。

 みんなの前に立つのだって久しぶりなのに、司会なんて、うまくできるかわからないよう。

「桜、昔みたいにやれば大丈夫だよ」

「うん、頑張る」

 華の言葉を自信にして、私はみんなの前に立った。

「では、文化祭の出し物について話し合いたいと思います。意見のある人はいますか?」

 ほとんどのクラスが、ここで誰も意見言わなくて時間が過ぎていくんだよね。

「はーい。メイド喫茶がいいと思います」

 はっ、華! 意見出してくれるのはありがたいけど、どうしてメイド喫茶なの!?

「賛成!」

 女の子、みんな賛成してるし。

「男の子は、どう思いますか?」

 お願い、反対して!

「賛成」

 反対してよ!

 みんな賛成してるし、まあいいかな。メイドをやらなければいいんだし。

「では、1年A組の出し物は、メイド喫茶とします。まだ時間も余っているので、役割分担を決めたいと思います。接客は女の子のほとんど、裏方は男の子のほとんどにやってもらいます。そのほかに、料理をする人を男女各三名ずつ、呼び込みを男女二名ずつやってもらいます。また、衣装の準備をしなくてはならないので、裁縫やデザインがうまい人には、衣装の準備をしてもらいたいと思います。掛け持ちは負担が大きいので、なしとします。やりたいと思う人は手を上げてください」

 すると、華が手を挙げた。

「伊集院さん」

「私と実行委員が、衣装の準備をします」

 えっ!? 確かに裁縫は得意だけど……。

「いいですよね、実行委員さん?」

 華、黒い笑み浮かべてる……。断ったら何されるかわかんない……。

「わかりました。では、衣装の準備は私と伊集院さんでやります。他に立候補したい人はいますか?」

 そう言うと、姫川(ひめかわ)さんと宇佐美(うさみ)さん、北川(きたがわ)が手を挙げた。

「料理やります」

 私もやりたかった……。

「他に立候補はいますか?」

 霜月(しもつき)君と水野(みずの)君、渋谷(しぶや)君が手を挙げた。

「俺たちも料理やります」

「では、衣装の準備は私と伊集院さん。料理は女の子は姫川さんと宇佐美さん、北川さん。男の子は霜月君と水野君、渋谷君にやってもらいます」

 パチパチパチ

 みんなから拍手が送られた。

 キーンコーンカーンコーン

「では、これで4限目を終了します」

 やっと終わったー。

「桜、お疲れ様。スムーズに進めてたし、よかったと思うよ」

 華は私に駆け寄り、笑顔でそう言ってくれた。

「ありがとう。なんか、昔に戻ったような感じがしたよ」

 昔は、いつも笑ってた。話を進めていくのが楽しいと思ってた。

「昔のようになんてなれない。そんなの、私が全部壊してあげる。あの日のように。ねえ、桜ちゃん」

 彩ちゃんが笑顔でそう言った。でも、目は笑っていなかった。

 あの日もあの目で見られた次の日から、いじめが酷くなったんだ……。

 体が震えてる……。やっぱり、怖いんだね。

「桜、大丈夫?」

「正直言って、すごく怖い。でも、もう私は逃げない。私、今日司会してて、楽しい文化祭にしたいって思った。だから、この問題もすべて片付けて、クラス全員が笑顔になれるような文化祭にしてみせる」

「桜、前よりも強くなったね」

 強くなれたのは、華や拓海がいてくれたからだよ。それに……。

 このあと何が起こるかなんて、私は考えもしなかった。まさか自分のせいで、大切な人を傷つけることになるなんて、思いもしなかったんだ。

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