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恋の果実  作者:
15/21

封印された過去

「桃山!」

「藤咲君!」

 後ろを振り向くと、拓海がこちらに走ってきた。

「ちょっと、華に用事があって。呼んでくれるか?」

 学校で華と話すなんて珍しいなあ。

 華は拓海と一瀬君との関係を隠してるから、当然学校で話すなんてこともしない。話すとしたら電話かメールで。直接話すことはない。

「わかった。教室にいるはずだから、ちょっと呼んでくるね」

 私は拓海にそう言い、教室にいるはずの華を呼びに行くために、教室に入った。

「藤咲君」

 そこに、彩ちゃんがいたことも気付かずに……。


「華、藤咲君が呼んでるよ」

 私は、自分の席で本を読んでいる華にそう伝えた。

「えっ! 拓海が?」

 華が目を丸くしながらそう言った。

 華が驚いてるってことは、華も拓海が何の用で来ているのかは心当たりないんだ。急用だったのかな?

「うん」

「わかった。教えてくれてありがとう、桜」

 華はそう言って、廊下に走って行った。


「桜ー」

 廊下に行ったはずの華が戻ってきた。

 話をしたにしては短すぎる。まだ一分も経ってないし。

「華、藤咲君と話した?」

「拓海、廊下にいなかったよ?」

 待っててって言ったし、拓海は勝手にいなくなるような人じゃないし。どうしたんだろう?

「私、探してくる」

 今は昼休みで、まだ15分ほど時間もあるから、次の授業までには戻ってこれる。

「桜!」

 私は無意識のうちに走り出していた。

 さっきから、胸騒ぎがする。どうしてだろう?


 私は、拓海の教室、中庭、使われていない空き教室、いろいろなところを探したけど、どこにも拓海の姿はなかった。

「残りは、屋上」

 あと拓海がいそうな場所って言ったら、屋上しかない。

 私は急いで屋上に向かった。

 屋上に行ってみると、話声が聞こえてきた。

「拓海、どうして私と別れたの?」

 この声、彩ちゃん? それに、別れたってどういうこと? 彩ちゃんってもしかして、拓海の彼女?

「本田、その呼び方はやめろ。俺はもう、お前の彼氏じゃない」

 彼氏……。その言葉が、私の胸に突き刺さった。ずっと憧れてた言葉。でも今は、その言葉を聞くと胸が苦しい。

「私、まだ拓海が好き。忘れられないの」

 あんなにかっこいいんだもん。好きになるよね。彩ちゃんと拓海なら、すごくお似合いのカップルになるんだろうな。

「悪いが、俺はもうお前のこと好きじゃない。それから、先に裏切ったのはそっちだ。別れた理由が分からないと言うのであれば、自分の今までの行いを振り返ってみろ」

 いつもよりも数段低い声。それに、すごく冷たい。

 やばい! 拓海、こっちに来る。

 私はとっさに物陰に隠れた。

「桜、いるだろう?」

 ばれてる!

 私は隠れるのをやめ、拓海の前に出た。

「全部、聞いてた?」

「ごめんなさい、盗み聞きする気はなくて」

 そう言いながら、私は頭を下げた。

「いいよ、別に。桜、今日家に帰ったら話があるんだけど、いいかな?」

 やっぱり、彩ちゃんのこと?

「うん、大丈夫」

 私たちは気付いていなかった。彩ちゃんが私たちの話を聞いていたことに、またあの恐怖を味わうことになることに。

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