恋の花火
「怖い……」
私は人気のないところまで走った。
そこは、大きな桜の木のある、私の好きな場所だった。
ここは、星川神社という、この町では結構有名な神社で、小さい頃からよくこの神社に来ていた。そのため、どこに何があるのかぐらいはわかる。
この場所は、神社の裏側に位置しているため、ここに大きな桜の木があることも、ほとんどの人は知らない。しかも今日、この神社に訪れている人のほとんどは、花火を見るためだ。当然こんなところに足を運ぶ人などいない。
私は桜の木に寄りかかり、涙を流した。
彼女たちは、私が小学6年生のときに、私をいじめたうちの二人。私はあるときを境に、三人の女の子に、徹底的に痛めつけられた。あの二人は、いじめの黒幕ではなかったため、少し安心した。
そんなことを考えていると、頭上から、優しい声が降ってきた。
「桜?」
私はふと上を向いた。
「藤咲……君? なんで?」
なんで藤咲君がここにいるの?
「桃山が急に走り出すから、迎えに来た」
そう言って、藤咲君は私を抱きしめた。
まるで、温かい光に包み込まれたような、そんな感じだった。藤咲君の胸の中は、すごく温かくて、安心する。
やっぱり私、藤咲君のことが好きなんだ。もう一度だけ、信じてみようかな。傷つくかもしれないけど、それ以上の幸せが待ってるような気がする。
バン!
丁度そのとき、きれいな花火が空に浮かび上がった。
「きれいだね」
私は空に上がった花火を見ながら、そうつぶやいていた。
「そうだな。桃山、これからどうする? まだ、花火見てくか?」
どうしよう……。あの人たちに会いたくないし。
「帰ろうかな。藤咲君はどうする?」
「桃山が帰るなら、俺も帰る」
なんか、藤咲君に悪いことしっちゃったかな。
「帰ろう、桃山」
そう言って、藤咲君は私に手を差し出してくれた。
「うん」
私はその手を取り、二人で自分たちの部屋へと帰った。




