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オモイノ・シリーズ

オモイノタネ 7

作者: 風紙文

発明を回収する少女の、今まで話の少し前に見た夢

今回は、そんなお話。

……ここも、久しぶりだね。

「確かに、アタシとアンタの始まりの場所だからね」

帰って、きたんだね。

「えぇ、アタシ達はやった。やりきったのよ」

後は……。

「何考えてるのよ。覚悟はしてたんでしょ? だったら胸を張って行きなさいよ」

ビーケ……うん。分かった。私、覚悟したから。

「そのいきよ、さぁ、行きましょ」

……うん。



……ただいま。

「お帰りなさい、恵里」

お母さん……。

「お帰り、恵里」

お父さん……。

「そしてありがとう、全ての発明を回収してくれて」

「アタシがいたからこんなに早く終わったのよ」

……うん。ありがとう、ビーケ。

「ふん。別にお礼を言われる筋合いはないわ、アタシはナビゲーター、案内するのが役目だからね」

それでも言わせて、どうもありがとう。

「……まぁ、半分はアタシのおかげだし? 一応、聞いておいてあげるわ」

うん。

「さて、恵里、父さん達は恵里が旅立った後、更なる研究を重ね、そして、完成したんだ」

「何が完成したのよ?」

「発明を分解する発明を、分解する発明だよ」

「あのネジ回しの事ね?」

うん。見せてくれない?

「あぁ……ほら、コレさ」

……コレが?

「なによ、ただの懐中時計じゃないの。アタシのセンサーにも反応しないし」

「それはそうだよ、コレは種の成分を分析、改良して作った。唯一の人工の発明だからね」

人工の発明……。

「名前は、そうだな……過去の発明使いタイマー、かな」

過去の発明使いタイマー……どんな能力なの?

「コレは過去に出会った事がある発明を思い浮かべるすると、それに変化するのさ、形から能力までね」

……そんな物を人工で?

「研究の成果さ」

……おめでとう、父さん。

「ありがとう、早速……」

……待って、父さん。

「なんだい?」

……ビーケと……。

「あぁ、うん。いいよ」

……ありがとう。

……ビーケ。

「……アタシは言った筈よ。いずれ来る別れなんだから悲しむのはダメ、惜しむのもダメ、一思いにお願いってね」

うん。聞いたよ……。

「だったら」

……分かってる。分かってるけど……うぅ。

「ほら泣かないの、念願の夢が叶うのよ、もっとさ、喜びなさいよ」

……う、うん……でも……。

「全く……アンタはアタシと両親の夢。どっちを取るのよ? どっちも、はナシよ」

……私は。

「長年の夢だったんでしょ? 叶える為に頑張ってきたんでしょ? だったら努力を無駄にするんじゃないわよ」

ビーケ……。

「覚悟……したんでしょ?」

……うん。

「だったら、決まりよね」

……分かった。

……父さん。

「うん。はい、コレ」

ありがとう……。

「さぁ、一思いにやって」

……うん。

「でも、最後に一つだけ……」

……何?

「アンタの気持ち……絶対に伝えなさいよ」

……うん。ビーケ……今まで……ありがとう。

「えぇ、どういたしまして……そして、さよなら」

……さよなら。




「恵里……」

「……恵里」

お父さん。お母さん。私ね、この旅で気づいた事があるの。

「なんだい?」

人が発明をするのは、人がそれを求めているから、人がそれを持っていないからなの。

無い物を欲するのは、人として必ずある気持ち、だから皆は発明の種を手にして様々な物を発明していた。

それを、私は見て回っていてそれで気付いたの。

人の発明に、限界は無い。人が思い考えられるだけ、発明のアイデアは存在する。

「恵里……」

だからね、発明を完璧に消すことはできないの。このタイマーだって発明、これは残ってしまうでしょ?

だから父さん。完璧に拘らないで、完璧を得る事は、絶対できない。だから人は、発明をするんだよ。

「……分かったよ、この旅で、色々と学んだんだね」

うん。そうだよ、だから私に、いいアイデアがあるんだ。




「……っていう夢を見たの」

「夢ね……でも、それってさ」

「うん。多分……正夢に……」

「このマクラで見た夢は、本当になる。既に効果は実証済みのね」

「だから私は今、覚悟を決めるよ」

「確か、夢に出た覚悟ってやつね、もう既に現実になりかけてるじゃない」

「うん……だから私、いずれビーケと……」

「ほら、覚悟するんでしょ? だったら泣かないの」

「……う、うん」

「それに、どれだけ先の話だと思ってんの?」

「うん……そうだね、だから、まだ覚悟しない」

「そう……まぁ、まだいいわ、当分先の話だし」

「……それに」

「それに? ……え?」

「ほら……こうやってマクラが無くなったら、今の正夢も無くなるかもしれない」

「……それで、いいのね?」

「もちろん。未来が決まってたら、つまらないよ」

「そうね……じゃあ、そろそろ行きましょうか?」

「うん……行こう」



発明の種

販売日から売り切れが続出し、更に多くの種が作られ、それもまた売り切れる。

更なる開発が進んだ際に、発明者が失敗に気付き、それ以降売られる事は無かった。

しかしその数は、万を優に越えていた。

それらを全て回収、分解するという、かなり果てのない旅に、彼女は望んでいたのだ。

全ては彼女が、自らの夢を叶える為に。



……ところで、アンタのいいアイデアってなんなのよ?


うん……実はね、ネジ回しを分解した後に、そのタイマーのデメリット。時間制限を過ぎると種に戻ってしまうっていうのがあってね、それを利用して、私がまた発明を作ったの。


それはね……


なんだか凄い最終回みたいな話ですが、まだまだ終わりません。

水野葉恵里とビーケのものがたりは、まだまだ続きます。

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