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第一話

はじめまして、えびせんです。

風呂に入っていたらこの物語が浮かび上がってきました(なぜ?)。せっかくなので、なろうサイトに投稿してみようと思い、今、この前書きを書いています。

拙い文章だとは思いますが、どうか、温かい目で見守ってくれると嬉しいです。

「キャー!!愛しの長流先生!待ってましたぞよ泣」

「君はほんとに長流好きね、まあ強いからアタシも使ってるけど」

「だってだって、CV前原さんだよ!こんなん引くっきゃないのよ!…そ・れ・に!何といってもこのご尊顔…!!キャー!!しゅき♡」

「そっかそっか、アタシはやっぱ涼くん一筋ね〜」


私の名前は原結香はらゆうか、明日から高校生っていうのに深夜まで心のせいちゃんと共にゲームに勤しむ普通の女子である。


中学校ではせいちゃんと共に漫画研究部を作ってダラダラと3年間過ごしてきたのである。

あの頃のことを後悔するつもりはないけれど、いかんせん、女の子としての責務を真っ当できていなかったと思う。


「ねぇ〜せいちゃん」

「なぁにぃ〜」

「私、高校で友達できるかな?」

「いやそこは『あたい、高校で彼氏できるかしら?』じゃないのかい?…君はそこからなのか…」

「だって〜」


そう、私とせいちゃんは高校で離れ離れになってしまう。2人で1人の一心同体だった私たち(独りよがり)にとってかなり致命傷だった。


「高校が離れたとしても、今こうしてインターネット越しで会えてるんだからいいじゃない」

「でもさ〜教室じゃあひとりぼっちになっちゃうお〜」

「君はアタシがいても教室で、1人で漫画読んでたでしょ」

「仕方ないよ〜漫画は今この瞬間も増え続けているんだから、時間を無駄にはできないよ〜」

「その理屈だと、今この瞬間にも君は漫画を読んでいないと通らないぞー」

「それにさー、せいちゃんの周りの子たち、可愛すぎて近づけないよ〜泣」

「それ、さりげなくアタシのことディスってない?」

「よし、決めた!」


私は画面越しに宣言した。


「高校でびゅーをします!」


深夜2時にそんな大言壮語をかまし、朝の8時に目覚める1人の少女がそこにはいた。

というか、私だった。


———————————————————————


「やっば!!!」


そんな声と共に、脳が覚醒した。


「まみぃ!なんで起こしてクレヌンティウス?」

「起こしたわよ、そんなことより早く支度せいヌンティウス」


まみぃ、私が恥ずかしくなるから真似するのやめて。


「いってきまーす!」

「いってらっさい」


-


(まずいまずい、高校が中学より近いから油断した!あれ?始業チャイム8時半からだよね?やばいやばい!初手遅刻の悪目立ちは流石に避けたい!)


そんなことを思いながら無我夢中でチャリをぶっ飛ばした。この世界は漫画やアニメの世界ではないので、その後特に何もなく、始業チャイム5分前になんとか到着できたのである。


(えーと、私のクラスは…ABね…って、アルファベットのクラスはわかるけど、2文字って!!血液型かよ!!)


なんて1人でこの高校の風習にツッコミを入れつつ私は教室のドアを開ける。


「……ハァ…ハァ…お、はようございます……」

「…あと1人ですね」


先生らしき人物がそう呟き、私は少し胸を撫で下ろした。が…


「…」 「…」 「…」


この世界が漫画なら確実に今「じぃ…」というオノマトペがついただろう。もう帰りたい。


キーンコーンカーンコーン


私が着席する頃、始業のチャイムが鳴り響いた。

いよいよ始まるのだ、私の青い春……。

すなわち、青春が!

第一印象は遅刻の芋女だったが、ここからは勝利の上り坂だ!なんて1人意気込んでいたその時、


「バーン!!!」

「!?」


凄まじい勢いで開かれた教室のドアの前にその男は立っていた。


「おはよーございますぅ!」

「遅刻ですよ、春瀬くん」

「すんません、ひがし先生ぇ」

「はぁ…あずまです。着席しなさい。」


今まで凍りついていたこの教室が私にもわかるぐらい氷解した。この男、言うまでもなくこの場の男女を虜にしてしまったのだろう、それほどのイケてるメンズ。


(春瀬、くん…という男、とてつもなくイケメン…!!!………いや、あの顔は…あのご尊顔は…!!!!)


【長流先生(結香の推し)そっくりじゃん!!!】


勢いよく立つはずの軌道が机に塞がれ、瞬時に椅子に不時着したが、またしても悪目立ちしてしまった。

「ぶっ帰る」と心の中で思った時、すでに行動は終わっているんだッッ!!……っていうか「はるせ」…ってことは……まさかッッ!!!


「あ、春瀬しょうりでーす!よろしく!」


……私の後ろの席だった。


———————————————————————


そのあとはあまり覚えていない。

気づけば茜色の空に変わっていた。

高校生とはこうも一瞬なのか…

わたしゃこの3年間、何やってたんだ?

心の中の私が心の外の私に問い詰める。


高校生活1日目にして早くも自問自答を繰り返す少女、原結香はそっと目を閉じる。


(まあ、まだ1日目だし、なんとかなるっしょ)


彼女も年頃の少女、先ほどの自戒もおやつを食べれば何事もなかったように消え去った。


(さ、あと一巻読んだらかーえろ)


教室の中1人、金管楽器の拙い音が廊下に響く。外は夕暮れの下、運動部の人たちの必死な声が聞こえてくる。

そんななか、1人の少年が結香の横顔に釘付けになっていたのだが、結香は知る由もなかった。


(くくく、やっぱズゲダンって、おもしろ。)


-


高校生になって1ヶ月が経った——。


なんともならなかった——。


おかしい、これは何かの陰謀か?私は今まで以上に頑張ったぞ!(3日だけ)いろんな女子に何のアニメが好きかも聞いたし、男子にも好きなゲームはなんなのかと問い詰めたぞ!

なのになんだ!この体たらくは!

このままでは中学の二の舞になってしまう…


なんて心の中で惨めに一人芝居をする。いかん、雨が降ってきたな。


「なぁ、しょう」

「なにー」

「軽音部の姫川先輩めちゃくちゃかわいいよな?」

「そうなの?」

「は?お前軽音部なのにしらねぇのかよ?」

「おん」

「おんって…」


む。

また男子のくだらない会話が聞こえてきた。

可愛い子だの可愛い子だの…2次元にいっぱいいるだろ…。

そんな悪態をつく自分に嫌気がさす。


「あ、そうだ!」

「なに?」

「姫川先輩のルイン聞いてきてくれよ!春瀬、お前も軽音部だろ?」

「あーええよ、断られたらすまん」

「おっ、さんきゅー、じゃ、また明日なー」

「おう」


「しょうりくんそんなの断っちゃいなよー」

「まあええんよ、それに、頼られるのは嫌いじゃないんでね」

「何よそれ〜笑」


春瀬くんって軽音部だったんだ。ちょっと演奏聴いてみたいかも。


「それよりさーみんなレドブルって知ってる?」


レドブル?あの美少女ソードアクションゲームのあのレドブル?まさかあんたらの口からそのワードが飛び出すとは。


「レドブル?知らないわね?」

「やんなー知らんよなー」

「流行ってるのー?」

「流行ってはおる、界隈では笑」

「…」


ほう。今日はなかなか有益な情報が手に入りましたな。宴もたけなわではございますが朕はこれにておトイレに行かせていただきます。

騒がしくなってきたので。


-


そういえば、この辺が軽音部なんだっけ?

まあ、たまたま通りかかっただけだし?少しだけでも演奏を聴いてやってもかまわんぞ?


いつもより少し胸を張り(胸は無いが)辺りを偵察する。


(思っていたより知らない曲が多いな…)


少し軽音部を侮っていたのだろう。まさかうちの軽音部、結構すごいのでは?

かなりの腕前といえる3年生。

負けじと喰らいつく2年生。

飲み込みの早い1年生。

軽音部の前を通り過ぎるだけで少し胸が高鳴るのを感じた。


(ん?)


そこに突如、聴き馴染みのあるフレーズが飛んでくる。


(♪〜)


拙くはあるが何の曲を弾いているかはわかる。これは……!!!


(アンラッキーハウスだ!!!)


レドブルでお馴染みのあの曲だ!


私はこの学校に来て初めて心の底からアツくなるのを感じた。


私の同志がこの角を曲がった先にいる!

どんなオタクなんやろ

どんなレドブルのキャラが好きなんやろ

そして今、角を曲がる——。


「…え?」


曲がった先にいたのは、あぐらをかいてギターを弾いている春瀬だった。


「♪〜♪〜」


私は反射的に来た道を戻り隠れた。いや、春瀬の演奏を聴いてみたいと言ったがまさか春瀬がレドブルのファンだったとは。

彼と話したい。オタトークをしたい。結香は切実にそう思った。

そして、彼、春瀬勝利の気持ちもまた結香と同じなのであった。


———————————————————————

<春瀬視点>


僕の名前は春瀬勝利はるせしょうり

16歳。

趣味はゲーム、アニメ、漫画、ラノベ、

ギター、etc。

要するにオタクや。

友達はそれなりにおるが、休日は家で過ごすことが多く、バキバキのインドアやな。

友達と遊ぶのも好きやけど、やはり1人こそが至高である。趣味の合う友人がおればこの結論にはならんやろうけど、僕にはおらんので異論は認めん。

自分で言うのもなんやが、顔は整っている方や。顔が整ってるだけで友ができるし女子も寄ってくる。非常にありがたいんやけど、やはり僕の趣味と合うものはおらへん。

何度も何度も掛け合ってみるも相手にされん。なんでも、やつらは”そんなもの”より友たちと遊んでいる方が楽しいそうや。

そういう考え方もあるというのは尊重する。

だが、僕の趣味を貶すとは、言語道断!

“そんなもの”やと?ふざけんな。

貴様らはこの高尚なものに一つも勝てんやろ!地位も!名誉も!顔面も!身体も!

何一つ2次元に勝てんやろが!

…まあこの話はまた今度にしよか。

長ったらしく話したけどつまるところ、

僕は高校生活で趣味の合う”友人”を作りたいんや。


-



高校生活1日目、今日から僕の青春が始まる。

目標はそう、友人と推し活や。

ソシャゲやったら何でもええけど、強いて言うならレドブルがアツイかな。


なんて考えていると二度寝してもうた。


(最悪や!朝から厳選したかったのに!)


しかし、彼の心はいまだ2次元に留まっていた。


-


「バーン!!!」


「!?」


「遅刻ですよ、春瀬くん」

「すんません、ひがし先生ぇ」

「はぁ…あずまです。着席しなさい。」


このひとが先生か、ええ人そうやん。

何で僕がこの人のことを知ってるかって?この人、ジャージの中に”東”って書いてあるTシャツ着てんねん。

さーて、僕の席は…っと。


「…」


お?


あんま僕に媚びやん女子やん!ええやん!

オタクやったらなおよし!てか、オタクやろ!


「春瀬しょうりでーす!よろしく!」


「よ…よろしく…」


———————————————————————


(にしてもこの子(原さん?)いっつも小難しい本読んどるなー。本好きやったら漫画とかラノベとかも詳しいんかな?めっちゃ気になる。)


「なぁしょうりー」

「んーなんや?」


僕は今、原さんの解析に忙しいんやあっちいけ。


「お前何部入るんだ?」

「あー…。」


そういえばまだ決めてなかったな、軽音部あったらアツいけどな…ってあるやん!アツっ!


「軽音部!」

「おおー、軽音部かー、いいね」

「あたし春瀬くんの演奏聴きた〜い」

「あはは…」


やかましいねん女子、お前らは僕の顔にしか興味ないんやろ。演奏を聴いてほしいねん演奏を。あっ…原さん行ってもうた…。


「ほな、部活申請届け出してくるわー」

「あっ、俺も行くー」

「俺も」

「あたしもー」


-


(はぁ…今日もあんま原さんと喋れやんだ…何でやろ…他の女子とは気楽に話せるのに、原さんだけはどうしても色々と考えてしまう…)


「ッ!?」


え?原さん?1人?教室で?てか、何で僕の胸高鳴ってるんや?あぁ、これはあれか。なんのアニメの話をするか考えてワクワクしてるんやな。うん、きっとそう。


夕暮れ。今日は少し風が強かった。

春風がふと結香の黒髪を靡かせる。


(あれ?)


そして、勝利は思い知る。


(原さんって、こんなに…)


生まれて初めて1人の女性に


「クスッ…」


(あぁ、僕って)


恋をしているのだと。


第一話 終

改めてご拝読ありがとうございました。

ありそうでなかったラブコメを書けたらいいなと思います。今後も応援よろしくお願いします。

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