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Destiny・Wars  作者: 梅院 暁
第一章 ~剣~
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第二話

 調子に乗って書き連ねていたら、5000字を軽く越えてしまいそうだったので、分割しました。

 静寂に包まれた森の中、石で囲んだ()き火で(まき)が弾ける音だけが響く。

 ボルスは荷物からフライパンや包丁といった調理器具と、街で調達してあったパンやベーコン、チーズなどの食材を取り出した。

 まず、ベーコンを一口サイズに丁寧に切り、チーズを薄くスライスする。フライパンを火に掛け、熱を帯びた段階で木製の円筒状の小さな容器を取り出した。(ふた)を開け、中に入っている食用油をフライパンに少量()らす。フライパンを傾けて油を広げると、先ほど切ったベーコンをぶち込んだ。

 ジュー、と油が跳ねる音。

 ()げないようにフライ返しを駆使して炒め、程よいところでスライスしたチーズをベーコンの上に()いた。後はチーズが溶けるまで熱を加え、出来上がったものをパンに乗せるのである。

 ボルスは料理を続けながらも、剣を二本とも手がすぐに届く距離に置き、油断なく周りを眺める。暗闇の中では動き回る獣はおろか足音一つしない。

 あの後、ボルスは男の遺体が肉食獣に喰われたりしないように自分の剣で穴を掘って埋葬した。掘った土を元に戻した時には日没寸前だったので、野宿をすることにした。

 ただし、自分が襲われては話にならない。

 野宿を行うにあたり、手頃な石を拾っては円形に並べ、その中央に細い木の枝を十数本積み上げて火打石で火を付けた。

 問題になったのは、自分が返り討ちにした二頭の狼である。いっそのことこいつらを夕食に……と考えなくもなかったが、狼という奴は素早く獲物に喰らい付くために、動きを(さまた)げるような肉がない。言い換えれば、食べれる部分が極端に少ない。

 食べる以外で何か有効活用出来ないものかと考え――毛皮を()ぎ取ることにした。昔、毛皮で出来た衣服をどこかで見た記憶があるからだ。ひょっとしたら、売れば少しは金になるかもしれない。

 そんなことを思って毛を剥ごうとしたが――結構苦戦した。食用の鳥肉なんかの皮は何度も剥がしたことはあるが、狼なんて初めてである。どうにか苦労して毛皮を剥ぎ取り、残った肉なんかは大した量でもないので骨ごと焚き火の中に放り込んだ。肉の焦げる(にお)いが気になったが仕方がない。むしろ、血の臭いで獣を呼んでしまう方が厄介である。またさっきのような立ち回りをするのは御免(ごめん)だ。

 さて、フライパンに目を戻すと、丁度良い頃合だった。チーズがトロリとしてなんとも美味(うま)そうだ。フライ返しを手にし、フライパンからパンへ盛り付けようとした、その時――


 ――パキッ、という音が背後からした。

 ボルスはすぐそばに置いてある剣に手を伸ばす。音の正体は察しが付く。地面に落ちている枝を踏んだ音だ――問題は何が踏んだのか、だが。

 右手で剣の柄を掴もうとすると、後ろから声がした。

「動くな」

 ピタリと手を止める。

「よし、ゆっくりとこっちに振り向け……おっと、抵抗なんか考えるなよ」

 ボルスは言われたとおりにした。

 振り向くと、そこには黒や茶といった地味な色の革鎧(レザーアーマー)を着た男達がいた。その数はざっと九人ほどか。それぞれが剣や斧といった武器を持っている。

 しまった、血の臭いは獣を引き寄せるが、焦げた肉は山賊を引き寄せるのか……などと考えていると、その内の一人が近づいてきた。

 そいつは(ほお)に大きな傷跡があり、その手に短剣(ダガー)を持っている。切っ先を常にこちらに向け、こちらの動きを牽制(けんせい)する。

「一つ聞くぞ」

 (だんま)りを決め込んでいると、その男はある一点を注視しながら聞いてきた。

「なんだ」

「その剣、どこで手に入れた?」

 ボルスは思わず自身の手元を見てしまった。

 奴が言っているのは、自分の剣(・・・・)のことではない――もう一本の剣(・・・・・・)のことであることは理解できた。

「拾った」

「拾っただ? どこでだ?」

「ここで、だ」

 すると、別の男がこちらに歩み寄ってくる。その男は、他の連中に比べると、かなりの筋肉質で一回りも二回りも巨体だった。体格と同じぐらいの巨大な剣を背負っている。

「近くに男がいなかったか? 特徴は――」

「背中に斬り傷があって、短剣が刺さっていた男か?」

 ボルスは男の問いを途中で遮った。

 男は目を見開く。

「どうやら、こいつ知ってるようですぜ!」

「そのようだな」

 また別の声。声のした方を見ると、やたら貫禄のある男が両腕を組んでこちらを見据えている。

 直感的に、こいつがリーダーだと感じた。

「で、そいつはどんな状態だった?」

 ボルスは肩を(すく)めながら、

「状態も何も、見つけたときには息はなかった。だから埋葬したんだが、何か問題でもあったか?」

 と答える。

 目の前の短剣を持った男が、

「なに、そいつはせっかく俺達が手に入れたそこの剣を勝手に奪ってトンズラこきやがってな。俺達はそれを雇い主に渡さないと困ったことになるってのに……」

 と、説明し始めた。

 なるほど、仲間割れか。

「そういうことでな。その剣、とっととこっちに渡してもらおうか……なに、渡せば命は助けてやる」

 そういうことを言う奴に限って命の保証はしてくれないんだぜ?

 そんなことを思いながらも仕方なしに左手で剣を取ろうとして――あることを思い付いた。

「なぁ、あの背中に刺さってた短剣って、ひょっとしてあんたのか?」

「おっ、よく気付いたな」

 そいつはニタリと嫌らしい笑みを浮かべ、

「あいつも馬鹿な奴だぜ。俺達から逃げれると思ってやがったのか……あ、別の傷はあそこの……」

 と、饒舌(じょうぜつ)()くし立てながら、視線を大男の方へ少し向ける。

 それが、その男の致命的なミスだった。

 ボルスは、自分に短剣を突きつけている方の手首を右手で掴み、さらに左手で男の肘を掴む。筋肉の薄い部分に触れる指に力を込め、曲がる方へ下に引くようにして無理矢理曲げた。肘の間接を男の意思と関係なく曲げると、右手で男の喉下目掛け、男の握る短剣(・・・・・・)を突き刺す。

 自分の功績を高らかに(うた)い上げていた男は、自分に何が起こったのすら認識できず、「ひゅ、ひゅっ」と声にならぬ声を出した。やがて、呼吸も止まる。

 突然の事態に、他の連中も一瞬何が起きたか理解できない。

 ただ一人、あの巨漢だけは、

「よくもジーンを!」

 と叫んで、剣を抜き放つ。

 ボルスはその大男に、ジーンと呼ばれていたであろう亡骸(なきがら)を投げつけた。そいつが(ひる)んだ隙に、剣のある場所まで後退する。焚き火の熱が、背中に伝わる。


「殺せぇ!」


 衝撃から立ち直ったか、リーダー格の男が叫んだ。その命令を受け、ボルスから見て左側にいた男二人が武器を構えて突っ込んでくる。

 先頭の男が斧を右手で大上段に振り上げて殴りかかってきたが、はっきり言って、あまりにも大振りで緩慢(かんまん)な動きだった。

 爪先で剣を蹴り上げると、鞘から抜かないまま、そいつの鳩尾(みぞおち)を鞘尻(鞘の先端)で突く。その男は身体を()の字に曲げて吹っ飛んだ。

 さらに、後ろから続いていた男が剣を横()ぎにしてきた――が、そいつも大振りな上に、振る位置が高すぎる。ボルスが姿勢を低くすると、刃が髪の毛の先端を巻き込んで頭上を通り過ぎた。ボルスはそいつの両足を鞘で払う。

 すると、その男は勢い誤ってボルスの背後の焚き火に頭から突っ込んだ。焚き火から火の粉が宙に舞う。

「う、うぎゃあああああああああああ!!」

 絶叫が響き、男は顔を両手で抑えてのた打ち回った。

 この一瞬で起きたことに驚き、他の男達は足を止める。

 ここでボルスは剣を抜き、状況を確認する。見る限り、リーダーとあの巨漢以外の奴らは特に問題ないと思った。態度や武器の構え方を見れば、大まかな経験や力量というものが分かる。

「どけ、お前らぁ!」

 あの大男だ。他の連中が止まったと見るや、そいつは剣を振りかぶりながら突進してくる。

 さすがにぶつかったら確実に力負けするので避けるのだが、ここで予期せぬことが起こった。

 避けた方向では、未だに顔を火傷した男がのた打ち回っていて、その男の足が偶然にもボルスの足を払う。

 いきなりのことにバランスを崩したボルスは尻餅を着いてしまい、そこに巨漢の剛剣が迫った。

「ちぃっ!」

 柄を両手で握り締め、ボルスは剣でその斬撃を受け止める。が、あまりの衝撃に少し手が(しび)れた。

 力を込めて押してくる大男。負けじと渾身(こんしん)の力で押し返すボルス。一時的に互いの力が拮抗(きっこう)し、剣を挟んで(にら)み合う。

 しばらく続くかと思われたそれは、ある男の一言に終わらさせられる。

「下がれ! こいつを試す」

 ボルスは自分と熾烈(しれつ)鍔迫(つばぜ)()いを繰り広げる巨漢の身体越しにそれを見た。

 ずっと命令して見ていただけだった男が、組んだ両腕を解き、右手をこちらに向けて突き出す。

 男の手首には、銀で出来た腕輪(ブレスレット)が装着されていた。それには、火の粉を反射して光る宝石が埋め込まれている。

 ボルスはギョッとした。彼は知っている――それが、ただの装飾品などではないことを。

 咄嗟(とっさ)に大男の腹を蹴り飛ばし、近くに置いていた鞘に納まったままの剣を拾い――その間に男は詠唱(・・)を終えようとしていた。

「炎よ、我が意志に応えよ!」

 向けられた右手に炎が生まれ、球を形成する。まるで、周りに飛び交う火の粉を吸収し、固めるかのように。

 ボルスは必死にその場を離れようとするが、間に合わない――


「〝ファイアボール〟!」


 ついに、コマンドワードが発せられ、完成した炎の球が、勢いよくこちらに放たれた――

 特に書くことが思いつかないので、後書きには前の話の制作秘話や反響や意見といった裏話でも書いて見ることにしました。



<D・W第一話作成秘話および裏話>


 序章から二週間もかかってやっと書きあがった第一話。

 一応、私の友人にも読んでくれているのが数名いるので、その方々の意見を載せてみる。


「あらすじ文で爆笑したのは、絶対僕だけじゃない」


「あらすじが無駄にロマンチック」


「なんか、普段の梅院のイメージにかみ合わない」


「君の見た目から、あのあらすじは想像付かないよ」


「知らない人が読んだらともかく、普段の梅院を知ってる身としては笑うしかない」


 ちょっ、あらすじについてばっかかよ! しかも、私の見た目と合わせて判断してるし!

 で、改めてストーリーについて聞いて見た。


「グロい(即答)」


 …………


 まぁ、こんな小説ですが、末永い御付き合いをよろしくお願いいたします……

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