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Destiny・Wars  作者: 梅院 暁
第四章 ~教団~
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第十四話

<これまでのDestiny・Warsは!>


「ようこそ、第十五騎士団へ……パーシヴァル・ライトナイツ君」


 謹慎の身から一転、騎士へと昇格したパーシヴァルは、ついに謎に包まれていた騎士団長の正体を知る!


「この剣を、見てくれないか?」


 一方、ボルスは〝Destiny〟を鍛冶屋に持ち込み、情報を入手しようとするが、そこには驚くべき事実が隠されていた!


「その命、神に返しなさい!」


 そして、その剣を求め暗躍する謎の集団!


 その出会いは果たして〝偶然〟なのか、それとも――

「この村から出て行け!」

 老若男女問わず、集まった全ての人間が次々と石を投げる。

 彼らの矛先は、一人の青年に向けられている。

 青年は自分に向かって投げつけられいる石を、避けようともせずに黙って身体で受け止めている。そのうち、一つが頭に当たった。赤い線が一筋、青年の頬を伝って地面に(したた)り落ちる。

 それでも無言で耐え続ける青年の視線の先には、青年と同じ青い革鎧を身に着けた男がいた。

 その男はまるで異物を見るような無感情な目で青年を睨み付けている。

 そして、その口から放たれた言葉は、周りの罵声よりも遥かに越えるほどの怒りが込められていた。

「お前なんかが、俺達に関わるべきじゃなかったんだ……お前のような――」


 カチッ、という音が空気を震わせた。

 打ち付けられた火打石から火花が飛ぶが、(かまど)にくべられた薪に火が点く様子は無い。

 着ている服から綿埃(わたぼこり)を取り、薪の上に乗せる。本来なら火口(柔らかい布に油やアルコールなどを染み込ませたもの)を使うのだが、どこに置いてあるか分からないので、綿埃を代用としているのだ。

 さらに何度か火打石を打ち付けるものの、まったく変化は見られない。

 少々イラつきながら、もう一度打ち付けようとしたとき、

「〝ファイア〟」

 と、背後からの声と共に、薪に着火した。

 振り向くと、この店の親方が立っていた。今のは、親方が魔術を用いたのだろうか。

「随分と早いなボルス。さすがにあんな部屋じゃ眠れんかったか?」

 ――昨日、ボルスは親方達に剣を見てもらった後、空き部屋があるから泊まったらどうかと親方に勧められた。最初こそ断ろうと思っていたものの、宿を決めていなかったことと、彼の押しの強さもあり、結局その好意に甘えることにしたのだった。

「そんなことはない。ただ、こういう仕事してると、どうしても朝が早くなるんでね」

 などとボルスはとぼけてみるが、実際のところは少し異なる。

 普段野宿してばかりのボルスからすれば、屋根の下で寝られればマシな方なのだ。特に今回は使ってない部屋とはいえ、手入れをされ、寝具を借りれたのだから、条件としては最高であるといえる。

 だが、それだけの好条件にもかかわらず、熟睡することは出来なかった。

 その原因は自分にも分かっていた。昨夜見た夢の内容――それは未だに脳裏にチラついている。

「いけねぇ、寝坊しちまった!」

「ドジが! 今度こそ親父にクビにされるぞ!」

 慌しい足音と共に厨房に駆け込む者がいた。

「よぉ、今朝は随分と賑やかじゃねぇか」

「ひぇっ!」

 そこに親方がいるとは思わなかったのか、レドが悲鳴を上げた。

「お、親父、いやこれには訳が……」

 その隣では、フォラーズがあれこれと言い訳を考えている。

 親方は嘆息し、

「まぁいい。今日は勘弁してやっから、とっとと客人と替われ」

「「へ?」」

 二人は間の抜けた声を上げた。そしてようやく鍋を煮込んでいるボルスに気付いたようだ。

「きゃ、客人! いってぇ何を……」

「ん? カラス豆とレンズ豆があったからスープにしたんだが……ひょっとして、豆嫌いだった?」

「い、いやそんなんじゃ……と、とにかく替わりますから、客人はゆっくりしててくだせぇ!」

 そう言ってレドがボルスからお玉をひったくる。

「あぁ、あんま慌ててかき混ぜたりすんなよ。豆ってのはゆっくりじっくり煮詰めないと味がスープに溶けないんだ」

「分かりやした!」

 ボルスは一息つくと、

「さて、パンとか無いけど、どうすりゃいいんだ?」

「あぁ、パンは毎日行きつけの店で一日分買ってくるんスよ……じゃなくて! あんた朝っぱらから何してんスか!」

 フォラーズの問いに対し、ボルスは胸を張って堂々と答える。

「料理」

「見たら分かるっス! 問題なのは客人のあんたが何で料理してんのかってことっス!」

「あぁ、そっち? やっぱり、他人の俺が台所を(いじ)くるのはよくなかったか……すまない」

「いやいやそうじゃなくて!」

 フォラーズがあれこれと叫んでいると親方が、

「まぁ、いいじゃねぇかフォラーズ。本人がやりたくてやってることなんだしよぉ」

「そういう問題でもないだろ親父! 俺達がやらなきゃならんことを客人に押し付けてんのが問題って言ってんだ俺は!」

「おいおい、俺は別に押し付けられた覚えは――」

「客人は黙っててくれ! 話がややこしくなるから!」

 あまりにも多く喋り過ぎたせいか、フォラーズがゼェゼェと肩で息をし始める。

「まぁ、落ち着けってフォラーズ。ただ単に客人が義理堅いってだけだろ?」

「義理堅い?」

「おうよ。昨日だって手当ての礼だって昼食作ってくれたじゃねぇか。今朝のはさしずめ『一宿一飯の恩義』ってところか?」

 親方はそんなことを言いながらボルスの方を見た。

「いや、そんなつもりは……」

「ま、聞かれて『はい、そうです』なんて答えを期待しちゃあいねぇよ。ただ、働きてぇってんならやらせてやらぁ。とりあえず、服用意するから着替えてもらうぜ。あと、パン以外にも買わなきゃならんもんもあっから、荷車を使ってくれ」

「本気かよ親父!」

「どうせお(めぇ)は腕ぇ怪我してんだ。人手があった方が助かるだろ?」

「そ、そりゃあそうだが……」

「それとも、お前がお目当てのパン屋のマリーちゃんに会うのに、別の男がいると邪魔か?」

「げぇっ! お、親父何でそれを……」

「知らねぇと思ってたのか? お前のことはお見通しだ」

 さらに、スープを混ぜていたレドが、

「あぁ、ちなみにマリーちゃんは恋人が出来たみたいだぜ」

 と、フォラーズに追い討ちを掛ける。

「何ぃ!」

「ほぉ、初耳だな。相手は?」

「大通りの宿屋の一人息子だってさ。なんでも、そいつが腹ぁ決めて告白したら、マリーちゃんの方も実は想いを寄せてたとかで。ま、俗に言う相思相愛って奴だな」

「嘘だぁぁぁぁぁ!」

 フォラーズは、まるでこの世の終わり、とでも言いたげな絶望し切った表情で断末魔を上げた。声が止むと、そのまま横倒しに床へ突っ伏した。

「お、おい大丈夫か?」

 ボルスは思わず声を掛けたが、当のフォラーズの方は、

「お、終わりだ……は、ハハハ……」

 などと呟いている。その目も、どこか虚ろだ。

 ボルスは親方の方を向いて指示を仰ぐが、親方は黙って首を横に振った。

「そんな……」

「悲しいけどこれ、失恋なのよね」

 レドがぼそりと言うが、フォラーズの耳に届いているが、正直怪しい。

「まぁ、しばらくすりゃ元に戻るだろ。さて、服貸すから付いて来い」

「あ、あぁ……」

 親方とボルスが出て行き、厨房に残ったのはスープを煮込み続けるレドと、倒れたままのフォラーズだけだ。

「二人とも行っちまいましたよ。いつまでそのままいる気ですかい?」

 レドが顔も向けずに声を掛ける。

 フォラーズはむくりと起き上がると、

「慰めてくれたっていいじゃねぇかよぉ!」

 と叫んだ。店中にその声は響くものの、誰も応えようとはしなかった。

<D・W第十三話制作秘話および裏話>


 ――更新した後、友人と行った会話――


私「ちなみに、胸を貫かれたのが、第二話でボルスに鳩尾を突かれた盗賊で、首を刎ねられたのが焚き火に頭から突っ込んだ奴で、最後に燃やされたのが第三話でボルスに助けられた盗賊ね」


友「へぇ……って、分かるかぁ!」

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