序章
奇怪な玄室だった。
床にも、壁にも、樹の根のような――あるいは血管を彷彿とさせるような、ぬめりのある筋が縦横に網目を描いている。静寂に包まれていながら、地鳴りの如き胎動を錯覚させる異様な空間。感覚の鋭敏な者なら、即座に逃げ出すであろう禍々しさをはらんだ場所であった。
その、あからさまに不吉な玄室の中央には、金属製の箱が安置されていた。部屋を覆う血管状の筋も、全てはこの箱に収束しているようにも見える。
その箱の前に立つ男――サムベルトは、箱の蓋にゆっくりと手をかけた。
やがてその呪われた棺は抵抗を止め、重々しい金属製の蓋が外れる。
人間の歴史を遥かに越える永き封印を解かれ、澱のように濁った空気が噴出した刹那、箱の中の暗がりで何かが飢えた獣の眼ように光ったものの、幸か不幸かサムベルトは気付かなかった。
いや、仮に気付いたとしても、彼には人生を激変させる、幸運の合図としか感じられなかっただろう。
確かに、サムベルトの人生はこの時を境に一変する。
――金属の墓所に収められていた、一本の杖によって。
どうも、お初にお目にかかります、梅院暁です。
この小説について、ちょっとした説明を。
この小説は、元々はRPGツ○ールというゲームで作っていたものを、自分なりに文章化して載せたものです。
まだまだ至らない点も多くありますが、温かい目で見守りながら、時には意見をくださると嬉しいです。