表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

ルナ画伯

 ラシーとルナの独房ライフもあと後数時間で終わる。

 なんだかんだでラシーとの独房生活も楽しかったな、とルナ・コートリアムは横でベッドから半身ズリ落ちそうな体勢で寝ているラシーを見ながらクスリと笑う。

 徒然なる思いを革製のカバーを掛けた日記帳にルナは絵付きで書き記している。

 普段からラシーと同室で生活しているルナは彼女が寝た後にこっそり日々の記録を取るのが日課だった。

「ラシーちゃんはS●GAの佐野厄除大師……と」

「……フガッ……んんっ…ルナ? 何書いてるんだし…?」

 一度ビクッと痙攣したように動いてから目を覚ましたラシーが瞼を擦りながらゆっくりと起き上がり、日記帳をマジマジと見ながら問い掛けてくる。

「おはようラシーちゃん、とうとう見られちゃったみたいだね。これは子供の頃からの習慣にしてる記録なの。イメージも後で読んで思い出せるように絵も描いてるの」

「この石板の上にいる黒白と黄白赤の縞模様のカラスみたいな絵はなんだし?」

「バー●ャファイターのアキラとジャッキーだよ?」

「おい! 前衛的な絵じゃねぇか! アキラとジャッキーがアポロチョコみてえだし‼︎ ピカソみたいだ!」

「フフフ…ラシーちゃん、私はルナ・コートリアムよ」

「おめえがルナなのは明白だバカチンが‼︎ じゃあこっちの濃い緑の蜘蛛みたいのはなんだし⁉︎」

「ラシーちゃんって実は目が悪いの? これはどう見ても沙耶お嬢様じゃない」

「おかしいのはお前の画力だ‼︎ これのどこが沙耶なんだし⁉︎」

「これはね、濃い緑色をしてるのが沙耶お嬢様の艶やかな黒髪を表しているの。自信作なんだから」

「形を重視しろこの画伯が‼︎ じゃあこっちは……あー…これはなんとなくわかるし…」

 ラシーが指差す絵は赤いペンで描かれたマッチ棒に枝毛が生えたような棒人間。

「ほら見ればわかるんじゃない、誰だと思う?」

「赤いから艦長だし…」

「正解、艦長の凛々しい姿を如実に描いたの。じゃあこっちはわかる?」

 少し楽しくなってきたルナが上の方が茶色で下の方が肌色のどんぐりのような絵を指でトントンと叩く。

「どこからどう見てもイナイナだし…」

「ねっ? イナクスくんてわかるよね。とっても上手に描けたと思うの。そうそう料理とかの絵も描いててね」

 ペラペラとページを捲り、ルナが調理した料理の記録らしきところを開く。

「これはなんだと思う?」

「なんだし? この緑と赤と黄色の花火?」

「もう‼︎ ほんとにわからんチンなんだから‼︎ これはサラダよ、赤と黄色はパプリカで緑はレタスじゃない」

「はい」

「隣にあるのはなんだかわかる?」

 と、薄黄色の円盤を示す。

「うーん……溶き卵?」

「コンポタージュにしか見えないでしょ? ラシーちゃんたらもしかして老眼だったりするの?」

「お前色だけ合ってりゃ描けてるとか勘違いすんなよ‼︎ 釣りたてのカツオのようにピチピチのミニナイスバディのウチが老眼なわけないだろが‼︎」

 ルナはそんなラシーをものともせずに平然と、

「そういえばそのピチピチのラシーちゃんも描いたの‼︎ どこだったかしら?」

 バラバラバラと日記帳を操り開いたページには、

「待て待て待て‼︎ この黒い竜巻に襲われてる棒人間がウチじゃないだろうな⁉︎」

「とっても可愛く描けたと思うの‼︎ ほら、この竜巻の中の縦線なんてラシーちゃんの長いまつ毛に見えるでしょ‼︎」

「さっきからお前の描く絵はサイコホラーの荒れ果てた精神科病棟の壁に描いてある絵なんだよ‼︎ いい加減にしろ‼︎ マジでビビるぞ⁉︎」

「ラシーちゃん‼︎ これでも10年以上絵を描いている人にそんなこと言っちゃダメでしょ‼︎ もうこの前描いたエグゼクティブナポリタンと呪術の刃を見たらそんなことは言えないわよ?」

「エグゼクティブナポリタンと呪術の刃ってなんだよ⁉︎」



 そして、晴れて独房から解放されたラシーとルナ。

 艦長室に改めて篤国沙耶に謝罪をするようにアルバに呼ばれた次第である。

「この三日間でしっかり反省しただろうな?」

「お姉ちゃん‼︎ 釣られる時スルメが歯に当たって痛かったんですからね‼︎」

「沙耶…艦長…コイツの方が危険人物だし…」

 と、静かに隣のルナを指し示す。

「ラシーちゃん⁉︎」

「被害者振るな…アホ画伯…呪術の刃書いてろ…」

 


 挿絵(By みてみん)

 

第一独房シーズン終了です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ