ファイナルコペンハーゲン大流行
「シュコー…シュコー…節子…これがワイの…シュコー…ナポリタンや!」
近頃の清太は興奮するとすぐ倒れてしまうので、節子にナポリタンを与える時は酸素ボンベを背中に背負い酸素マスクを顔に装着し呼吸をしていた。
「兄ちゃん、ガス室の人みたいや」
「うっ…シュコー…ぐっ…シュコー…でもナポリタンは作れるで!シュコー…」
「ナポリタンより兄ちゃんが心配や!」
ナポリタンを蔑ろにする節子に清太は怒りを覚える。
「シュコー……シュコー…節子!ナポリタンを食べるんや!シュコー…」
「うちそんな状態の兄ちゃんを放ってナポリタン食べたくない!」
そう言って節子は清太の腰に抱きつく。
「節子!シュコー…!」
清太は拳を振り上げそうになって気付く。
ワイは…節子に…ナポリタンを強制している…?
「…節子…シュコー…ごめんな…シュコー…兄ちゃん節子がナポリタン食べてる…シュコー…姿が…シュコー……めちゃくちゃ…シュコー…興…シュコー…奮…シュコー…するんや…おかげで…シュコーシュコー…が捗る…シュコー…」
「兄ちゃん何言っとるかわからん」
「シュコー…わから…ん…くて…シュコー…いい…シュコー…兄ちゃん…ペペロンチーノ派に…シュコー…昔…手に…シュコー…取ろうとした…シュコー…ジャンプ…シュコー…横取りされて…シュコー…シュコー…シュコー…オペペスナマムンガ…シュコー…してまったんや…シュコー…そんなの…シュコー…最初のプレステで…シュコー…クロノ…シュコー…クロス…シュコー…が…流行った時…シュコー…以来や…シュコー…」
「兄ちゃんがペペロンチーノ派を許せんのは知ってる!でも、うちジャンプ買えなかったことなんてどうでもいいから兄ちゃんに悩まんで欲しい!あと最初のプレステのク●ノ・クロスって兄ちゃん何歳や!」
「アホ…シュコー…兄ちゃんは…シュコー…クロノ…トリガー…シュコー…世代や…シュコー…シュコー…シュコー…兄ちゃん…シュコー…もう…シュコー…限界や…シュコー…ガボガボガボ…」
酸素ボンベを使っても清太にはまだ酸素が足りないと言うのか…。
直立した体勢のまま、横に倒れる清太…酸素ボンベに衝撃を与えて大丈夫なのだろうか?
「兄ちゃん!またか!」
「清太…清太…」
極最近に聞いた気がする声に呼び起こされ清太は目を開けた。
二つの惑星が向かい合う宇宙に再び清太は漂っていた。
「誰や?オバハン?」
「あなたの感覚だとつい一昨日会ったばかりなのですが、覚えていないのですか?そういえばまだ名乗っていませんでしたよね。私はナポリ・ユウコ。この世界の女神です」
白い外套を羽織った美しい女性は穏やかな口調で続ける。
「ナポロポリタンはあなたの代わりの人が先日救ってくださいました。ですが、再び悪の根が蔓延ろうとしているのです。あなたにはペペロチーの流れが見える眼を与えます。その眼を使い新たな魔王ミトソスを撃ち倒して欲しいのです」
「なんでワイが知らん奴助けにゃならん!理由を言え!」
「嗚呼、ク●ノ・トリガープレイせし彼の者へ神力を…」
ナポリ・ユウコが手を翳すと、清太の両眼が金色に光る。
「なんや?この温かい眼は?」
「これがペペロチーの流れが見える魔眼ペペロアイズです」
「ペ…ぺロ…?」
次の瞬間、清太の身体が脈打つように痙攣し始める。
「ペ…ペ…ロ……ペロ…ペロ…ぺぺペペロ…ペロ…ペロ…!」
「どうしたのですか!!」
「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「あ、ダメそうですね」
「シュコー…!」
一昨日と同じように清太はベッドで目を覚ました。
どうやらまた気絶していたらしい。
但し、ベッドと背中の間に酸素ボンベを挟んでだが、
「節子!シュコー…!」
横に転がると節子が椅子の背もたれにもたれかかって眠っている。
「シュコー…節子…シュコー…兄ちゃんペペロンチーノに…シュコー…またやられて…シュコー…もうた…シュコー…」
悔しくて仕方がないが不思議とその感情はすぐに消える。
「節子…シュコー…酸素ボンベと…シュコー…マスクくらい…シュコー…外せ…シュコー…」
「なんで酸素ボンベが出て来るの!?ルナさんすごい!ギャグ小説のセンスあったんだ!」
「ペペロンチーノに恨みがあり過ぎてペペロアイズに拒絶反応出るって俺読んでて吹き出しちゃったよ!こんなエッジの効いた小説読んだことないよ!これはみんな読みたいかも!ちょっと広報活動してくるよ!」
男女のクルーが原稿を持って宣伝に行ってしまった。
アルバにファイナルコペンハーゲンを読ませて以来、どこから情報が漏れたのか読みたいというクルーが多数現れ、ルナは感激して読んでもらうようになったのだが、
「……」
メイルストローム号のレクリエーションルームの席に座ってルナはう〜っと唸る。
誰も純愛をテーマにした小説だとは思ってくれなかったからだ。
そんな中で篤国沙耶だけはルナの嗜好がわかるようだった。沙耶はルナの傍で気遣っている。
「ルナさん?恐らくこれは恋愛小説のつもりで書いてますよね?かなり変わっていますが…」
「沙耶お嬢様…」
「んな心配しなくていいし。貴様のファイコペは中々いい作品だ。もういっそギャグの方でなろうに書けばいいし」
二人の後ろでラシーは壁に背中を預けて立っている。
「だって私の中ではすごく素敵な胸キュンシチュを書いてるだけなのよ?書くなら好きなジャンルしか書きたくないものじゃない?」
「ならこのまま恋愛小説書いてるつもりで投稿はウチがギャグってことでしてやる。報酬は8:2でいいし」
「どっちがお姉ちゃんの持分です?」
「8だし!」
「たっかいわよ!スムーズにぼったくろうとしないで!」
「ルナ?この小説を読んだ人はお前とウチならどっちが作者っぽいと思うかし?」
「絶対お姉ちゃんが書いてそうですね」
「沙耶お嬢様!?それは私がラシーちゃんみたいなヘンテコリンって言ってるように聞こえるんですが!?」
「てめえ!ウチのどこがヘンテコリンだ!?」
「「ほぼ全部」」
沙耶とルナがハモる。
「お前らいつからウチをヘンテコリンだと思ってたんだし!?」
「「割と最初から」」
「おいおい冗談はよせし、ホントお前らなぁ…ぶっ殺す!」
ラシーが二人に襲い掛かろうとした時、レクリエーションルームのドアが開きリュカレット・三浦・タナトスが入って来た。
「ラシーちゃん!ルナちゃんの小説をここに来れば読めるって聞いて来たんだけどまだあるかな?」
リュカの入室を確認するとラシーは戦闘体制を解き、
「印刷したやつがここにあるし、取りに来い。ウチはストレッチしてるから気にするな」
と、言いながら左脚を振り上げ右拳を握り身体を思い切り捩る。
「なんでもギャグが凄いって聞いてねー!そんなにいいんなら俺も目を通しておかないとさー」
そして、リュカがラシーの横の机までファイコペを取りに近寄ると、
「そぉぉぉぉぉぉいっ!!!!!!!!!!」
放たれたラシーの右拳がリュカの横っ面を捉え殴り飛ばした。
リュカは無言で床に倒れ伏す。
そこに、
「もういっちょぉぉぉぉぅ!!!!!!!!」
一瞬で同じモーションで溜めを作るともう一度倒れたリュカの顔を殴り付ける。
「何もかもお前のせいなんだよ…トルネードナックルは怒りと共に強くなる…これがトルネードナックル・サイレント・ダブルだ!そしてこれが…」
ラシーは倒れたリュカの上空に跳び上がると、錐揉み回転しながら落下する。
「トドメのトルネード・エンドだぁぁぁぁぁぁ…!!!!!」
回転する事で威力を増した肘打ちがリュカの腹部に突き立った。
ファイコペとトルネードナックルのコラボです。




