第3話 御前試合①
「勇者様、この中から好きな装備を選んだら、私に声を掛けて下さいね。これでも我が国よりすぐりの装備品ですし、ハーウィン団長も勇者様が初めての戦いだってわかってらっしゃいますから、おそらく魔剣は抜かないでしょうね。あの人が本気を出したらいくら勇者様といえど、無事では済まないでしょうし。だから安心して戦いに臨んで下さいね」
騎士団の一人が勇者の案内をしていた。
「どうだろう、ハーウィンはいつも真剣勝負だから手を抜くなんて、あたしゃ思わないけどねぇ。魔剣でズタボロになって再起不能にならなきゃ良いけどねぇ」
騎士団複団長ソレイユ·ベガスが口を挟んだ。彼女はハーウィンとは長い付き合いで彼の戦いにおける気構えについてはよく心得ている。脅しでも何でもなく勇者に忠告したつもりだった。
「装備かぁ、うわぁ、剣に槍に鎧なんかがたくさんあるね。本で読んだ中世の騎士みたいだけど僕はどうすればいいのかな。それに、魔剣なんて名前からしておっかないし、うーん」
灯馬がなやんでいると心の中でシャイナが語りかけてきた。
「トーマよ、自身のスキルを確認なさい。視界の端のほうに矢印が見えるでしょう。そこからステータス画面を開き、スキルを確認するのです。といっても貴方にはほぼ全てのスキルが備わっていますから、そこから自身に合ったスキルを模索するのです。では、健闘を祈っていますよ」
心の中の声はそこで途絶えた。
「スキル?矢印?えーっとこれか」
「何だこれ、すごい数。こんなのわからないよ」
「まずは剣と、あと守りもないと怖いから盾も装備したいな」
ースキル剣神、シールドマスター発動ー
「何だ、いきなりスキルにマークが付いたぞ。それに剣と盾が欲しいと思っただけで、剣神とシールドマスターなんてスキルが発動するなんて、僕はチート野郎ですか?」
「何、剣神だと!?」
灯馬の発言には副団長ソレイユは驚きが隠せない様子だが、何もわかっていないであろう灯馬かにソレイユは解説をした。
「いいかい、剣神とは剣の道において剣聖と同格のスキルだね。前者は生まれ持った才能において習得するけども、後者は類稀なる努力の末開花するものなんだよねぇ。つまり何が言いたいかって言うと、剣神スキルはハーウィンが最も嫌っているスキルだということさね。尤も、剣神なんてこの国ではアンタ以外居ないけどね」
ソレイユは苦笑いを浮かべている。
「アンタが剣神だってハーウィンが理解したら、容赦なくかかってくるだろうね。注意しなよ、ハーウィンの厄介なスキルは剣聖だけじゃないからね」
ソレイユは含みのある言い回しをした。
「これは驚きました勇者様、剣神にシールドマスターなんてさすが勇者様です。それでは鎧なんかも選んでもらって、闘技場へ向かいましょう」
騎士団員に促され、灯馬は装備を整えて控え室を後にした。なんだか以外とやれそうな気がする、と思った。