第2話 謁見
ラースガルドの大地の四大国の一つ、西の国ダダン。そこが灯馬の召喚された国だった。
ダダンでは西の海の海産物や広い草原での畜産物に、レア鉱脈から採掘できる魔石が名産品らしく、他の三国とはそれらを貿易しそこそこ繁栄しているようだ。
勇者とソティス一行は王宮へと向かうべく、アストレア城下町を通り抜けていた。
「ねぇねぇ、本でも見たことない動物の肉や野菜がいっぱい。僕、美味しい料理を食べる事が夢なんだ」
灯馬は市場の食材から目が離せない。
「勇者殿、王様に謁見した後には、我が王が勇者召喚の宴を開いてくれるでしょう。もちろんそこでは、我が国のあらゆるご馳走が提供される事になるでしょう。しかし使命の事は努々お忘れ無きよう」
ソティスは市場をくまなく眺める灯馬に急ぎますよと促した。
一行は王宮へと到着した。
「そなたが勇者か、名は何と申す」
アストレア城王の間でダダン国王ダルト·ダダンが灯馬に問いかけた。
「えーと、外国では下の名前が先にくるんだっけ。トウマ·サクライと申します、王様」
「では勇者トーマよ、異世界からよくぞダダンへ参ってくれた。感謝する。他の三国には遅れをとったが、我が国では本日ついに召喚することができた。皆の者、今宵は勇者召喚の宴を行なう。存分に楽しむがよいぞ」
「お待ち下さい、王よ。いくら大臣ソティス殿が召喚した者とはいえど、この者の力を私はまだ信用しておりません。勇者よ、そなたが神託の勇者である証拠を我々に見せてもらえまいか」
王の話を遮ったのはダダン三大貴族の当主の中の一人、シャマシュ·トアラーである。
「トアラー卿、それならば私と勇者殿で御前試合を提案致します。私も彼の力を知りたいですし、よい機会だと思います。我が王よ、よろしいですかな」
同じく三大貴族ガーランド家当主であり西の騎士団団長でもあるハーウィンが進言する。
「あいわかった、三刻後に勇者トーマとハーウィンとの御前試合をとり行おう。勇者よ、剣聖ハーウィンは強いぞ。心してかかるようにな」
ダダン王の取り決めに灯馬は困惑が隠せない。かくして灯馬の初めての戦いの場は設けられた。
「おい聞いたか、ソティス様が召喚した勇者様が剣聖ハーウィン様と御前試合をするらしいぞ」
「聞けば、勇者様はまだ少年だっていうぜ。いきなり剣聖と戦うのは無謀すぎやしないか?」
「まあ何にせよ、目が離せないな。皆、俺たちも観に行こうぜ」
城下町では御前試合の話題で持ち切りだった。