第1話 召喚の儀
「光の神より神託あり。これよりラーニャ神殿にて召喚の儀を行なう。騎士団長、護衛を頼む。これより参る」
ラースガルドの大地の西の国のダダン国大臣でもある召喚士ソティス·リンドバーグはダダン王国の守護、西の騎士団団長ハーウィン·ガーランドに命を下した。
ハーウィンは急ぎ騎士団の精鋭を招集し、ソティスの共としてラーニャ神殿へと出立した。
「降臨の台座が輝いている。急いで儀式に取り掛からなければ…」
ソティスは神殿の最奥の台座の前に魔法陣を描き、詠唱を始めた。
「くっ、なんだこの重圧は…私だけではマナが足りない。お前達、マナを私に送り込んでくれないか」
ソティスが護衛に力を貸すよう促すと、西の騎士団の精鋭達は皆それぞれのマナをソティスに受け渡した。
最初は弱弱しかった台座の光が輝きを増していく。そして激しく瞬いた光の中から少年が姿を現した。
「う、うーん、ここはどこだ?確か僕は病院で家族に看取られて、それからやけに明るい場所で偉そうな人達に加護とかスキルとかいうなんだかよくわからない物をたくさんもらって…」
「…って貴方達はどちら様ですか?」
灯馬は困惑した様子でソティスに訊ねた。
「この日をお待ちしておりました勇者様。私は召喚士ソティスと申します。この者達は我が国の騎士団の団員達でございます。ラースガルドに来て間もない貴方様は、混乱しているのも無理はありません。しかし貴方様は神様より使命を受けている筈です。まずは王宮へ共に参って王に謁見なさって頂けませんか」
ソティスは横たわる灯馬に手を差し伸べた。
「王様に会ってほしいといわれても僕は病弱だから起き上がることすらままならないんだ…ましてや外を出歩くなんて…」
「って、えー?起き上がれるし、歩ける。宙返りもできそうだし、空も飛べそうな気さえする。一体どうなったんだ、僕の体は」
灯馬が跳ね回ると騎士団の皆の顔が晴れやかになった。
「まだ何がなんだかよくわからないけど…ソティスさん。王様に会いに行こう」
灯馬はとにかく目の前にいる召喚士を信じる事にした。
「改めまして、ようこそダダン王国へ。では王宮まで我々が先導致します」
騎士団長ハーウィンはにこやかに灯馬に挨拶をした。