プロローグ
何だ、眩しい。確か僕は病気で死んだはずだ…
桜井灯馬の魂は神々がおわす神界の庭を漂っていた。
「この魂の色、この子で間違いないわ。皆集まって下さい」
光の神シャイナ·ルーは他の神達に念を送った。
「どうしたかねシャイナ。ん?おお、この魂の輝き。現れたのだな、漸く」
真っ先に神殿に瞬間移動してきた大地の神アーサー·イスガルドは目を瞬かせながら呟いた。
「ウェンティ、勝負の最中に逃げ出すとはな。はははっ、軟弱者め」
「仕方ないでしょ、お呼びがかかったんだから」
火の神アガサ·リョナと水の神ウェンティ·イースもやって来た。
最後に風の神プリシラ·ウインストンが姿を現した。
「今しがたダダンの召喚士に啓示を出しました。間もなくこの子の魂はダダンの地へ召喚されるでしょう。勇者として召喚されるこの子には私の光の加護を付与します。皆よいですね」
シャイナが他の神達に宣言した。
「勇者って事なんだから、私の水の加護もあげてもいいよね、シャイナ?」
ウェンティがシャイナに訊いた。
「普通は一つの魂に一つの加護、というのが決まりなのですが、或いはこの子の魂なら複数の加護を許容するに耐えうるでしょうね。そういう事ならいっそ全ての加護を与える事にしましょう。皆よいですね?」
シャイナの問いかけに、一同首を縦に振った。シャイナは続けた。
「そこにいるんでしょうシュタール。出てきなさい。あなたの加護はどうしますか?」
「ちっ、相変わらず鋭いねぇ、シャイナ。闇の神は滅多矢鱈に加護を授けないのだがねぇ…まあ一応くれてやるよ」
シュタール·ゲインズは不敵に笑った。
「さあ、あなたには最強の勇者にふさわしい加護とスキルを与えます。先に召喚された勇者達と共に魔王を討伐することが貴方の使命なのです。一度無くした命、今度は助けてもらう側ではなく、人々を救う為に使って下さいね」
そう言ってシャイナは神々の力を灯馬に吹き込んだ。
灯馬の魂は、よくわからないまま神々の会話を聞き、ラースガルドの地上へと吸い寄せられて行った。