再会 その①
「どうかしたんですか、クルシュさん」
「いや……北の大地から逃げ出すときも、キナのバイクが無かったら無理だったよな」
「え? いきなり何を言ってるんですか?」
「そうだ、キナがバイクに乗せてくれなければここまで辿り着かなかったし、フィラがいなかったら鍵も手に入らなかった――」
「本当にどうしちゃったんですかクルシュさん!? まだ毒が残ってるんじゃないですか!?」
キナが俺の肩を掴んで前後に揺さぶる。
頭の中でまとまりかけていたアイデアがシェイクされて、そして――纏まった。
「……劣化版の魔石をどうにかする方法を考えついたぞ、キナ」
「ええ!?」
大声を上げながらキナは手を止めた。
「キナやフィラがいなきゃ出来ないことがあったように、協力しなきゃ解決できない問題ってのがあるんだよ。そう、キーワードは『協力』だ」
「きょ、協力……」
「なんだよ、そんな意外そうな顔して」
「いや……クルシュさんの口からそんな言葉が出てきたことにびっくりして」
「あのなあ、俺だって協力って言葉くらいは知ってるんだよ。協力、そして友情と努力と勝利だろ。男の子の必修科目だよ。ほら、くだらないこと言ってないで先を急ぐぞ。誰かに見つかると厄介だからな」
「それさっきも言ってましたよね」
「大事なことだから二回言ったんだよ。決してフラグとかじゃないからな」
と、俺が階段の方へ体を向けたとき、ちょうど上から降りて来た女性と目が合った。
「…………………」
「…………………」
奇妙な沈黙が場を包んだ。
ええっと、どうしよう。相手は女だ。魔石が無くても力づくでなんとかなるかもしれない。幸いこっちは3人、相手は一人。よし、何とかなりそうな気がしてきた。倫理的にはあまり良くない気もするけど緊急時だから仕方ない。
俺が袖をまくった瞬間、相手の女性が声を上げた。
「もしかしてクルシュ?」
「………まさか、コルナか?」
「え、知り合いなんですかクルシュさん」
「ああ、一応。こいつも錬金術師だよ」
あ――危ねえーっ!
知り合いを多対一でボコろうとしてた。
事前に気づいて良かった。
「一応って何よ一応って! っていうかクルシュ無事だったの!?」
コルナが俺に駆け寄って来る。
声が大きいのは相変わらずだ。
「まあ何とかな。北の大地は寒かったぜ」
「ふーん。事情はよく分からないけど、とにかく元気そうでよかった」
安心したようにため息をつくコルナ。