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失われる光 その②


「放っておいていいんですか、クルシュさん」

「俺のせいってわけじゃないからな。それに、魔石が壊れたのならまた新しい魔石に交換すれば良いだけの話だ。まあ、莫大な手間と費用が掛かるだろうけど……。とにかく、そう心配する必要はないさ。今の特級錬金術師様が良いアイデアを出してくれることを期待しよう」

「本当にそれで良いんですか?」

「今の俺はただの一国民――というか、左遷先から逃亡中の犯罪者みたいなもんだ。出来ることは何もない」

「そうですか……」

「俺たちの目標は異種族の楽園へたどり着くことだろ。王国がどうなろうと関係ない。……そういうことにしておこうぜ、キナ」

「分かりました。確かに、クルシュさんの仰る通りかもしれないですね」

「ああ。だから今日はもう休もう。フィラの体調が良くなればすぐにでも出発できるように、バイクも修理しておかなきゃな」


 席を立ち、伸びをする。


 全身あちこちが痛む。今まで研究室に引きこもっていたのに、いきなりツーリングの旅を始め

ちゃったのだから当然だろう。


 と、ふと俺の視界に身体を起こすフィラの姿が映った。


「どうしたんですか、フィラちゃん?」


 キナがフィラの方へ近寄ると、フィラは気だるそうに声を上げた。


「何か妙な気配がするぞ」

「妙な気配? どういう意味だ?」


 俺の質問にフィラが怪訝な顔をする。


「妙な気配は妙な気配だ。妾たちの敵かもしれん」

「敵? ……まさか『上流階級ギルド』の連中か?」

「いや、違うな。どちらかといえばキナに近い――」


 フィラの言葉を遮るようにドアが外側から蹴り開けられた。


 同時に、武装した兵士が数名、俺たちを取り囲むように室内へ侵入してくる。


「っ……!? 俺が王都にいることがバレたのか?」


 王都へ入る時は、フィラが妖術で造った偽造の身分証明書を使った。


 それ以降も偽名を使い続けている。万が一にも俺の存在が王都側にバレるはずはない――が、今はその理由を考えている場合じゃない。とにかくここから脱出しなければ。


「クルシュさん!」

「分かってる。キナ、フィラ、目を塞いでろ!」


 予備として持っていた魔石をポケットから取り出し、発光量の設定を書き換える。


 刹那、魔石から眩い閃光が迸った。


 俺はフィラを抱え、そのまま窓から外へ飛び出した。


 すぐ後ろからキナもついてくる。


 幸いにも一階の部屋だったから地面はすぐそこだった。


 全速力で路地裏へと駆ける。



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