船出
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後日談というか、今回のオチ。
港へ戻った俺たちはイオンさんと別れた。
イオンさんは一緒に解放された仲間たちと海外に出て、事業を始めるらしい。
もう少し南に下れば【上流階級ギルド】も手が及ばないだろうし、今度こそは無事に出航して欲しい。
そして俺たちは原付バイクに乗り込み、港を出発しようとしていた。
「……あーあ、異種族の楽園に辿り着けたと思ったんですけど」
キナがため息交じりに言う。
「仕方ないさ。世の中そうそううまくいくもんじゃない。知らぬ間に裏切られ大罪人ってことにされてるパターンもある。くそ、思い出すとムカついて来たなあ……」
「落ち着いてくださいクルシュさん、過去に何かあったのは知ってますから」
「しかし、逆に良かったのではないか? 妾たちの旅はまだまだ続くということだろ?」
え。
このロリ、今なんて?
「フィラちゃん、今、なんと?」
「……え? いやだから、妾たちはまだまだ一緒に旅を……あっ、いや違うからな! 別に妾はお前たちのことなんかなんとも思ってないのだけれど、ほんの数日だけじゃ物足りな―――いやいやいや、お前たちが寂しがるのではないかと思ってな。違うんだぞ! 勘違いしてはいけないのだぞ!」
何かを誤魔化すようにあたふたと両手をバタバタさせるフィラ。
ちょっと涙目になっている。萌え。
と、そのとき、俺たちのすぐ横を見覚えのある人影が横切った。
「……あれ、あんた確か、ビタセンとかいう……」
「そういうあんたはクルシュのアニキじゃねえか! どうしたんだ? 異種族の楽園に行ったんじゃなかったのか?」
「いやそれは……そんなことよりあんたどこへ行くんだ? 船賃はあるのか?」
「念のためと思って貯めておいた金があるのさ。実は南方に30分で金貨5枚もらえる仕事があるって話で、これを機に真面目に働こうと思ってんだよ」
30分で金貨5枚……。
それって明らかに怪しい仕事なんだけど……。
「……そうか。あんたも頑張れよ」
「おう、クルシュのアニキたちもな!」
元気よく手を振り、ビタセンは受付窓口の方へ歩いて行った。
世の中そうそううまくいくもんじゃない。旨い話があれば疑ってかかった方が良い。
頑張れよビタセン。一応応援だけはしておくね。
「ではそろそろ行きましょう、クルシュさん。次の街へ」
「ああ、そうだな」
俺はバイクのエンジンをかけた。
魔石から生じる動力の振動が俺の身体を揺らした。
後部席にフィラを乗せたキナのインテレストが、小気味良いエンジン音を響かせ出発する。
そう言えばそろそろ王都も近いな。
……寄る気はないけど。
そんなことを考えながら、俺もバイクのアクセルを開けた。
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