表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/93

異種族の楽園へ? その②


「これがチケットです。船はもう少ししたら出発しますから、遅れないようにご乗船ください」


 事務的な口調で受付嬢が言う。


 チケットは最低限の必要事項しか書かれていない、簡素なものだった。


「ああ、ありがとう……そうだ、その船ってバイクとか載せられませんか?」

「残念ながら無理です。よろしければこちらの港でお預かりしますが?」

「ああ……じゃあお願いします。これ、チケット代です」


 俺が金貨を差し出すと、令嬢は愛想よく、


「港に泊まっている『エスポワール号』という船です。では、よい旅を」


 と言った。


 チケットを手に、俺たちは一度受付ロビーを出た。


 キナとフィラにそれぞれチケットを手渡す。


「で、どうする? もうすぐ出港らしいけど」

「本当に後から来られるんですか、クルシュさん」

「いや……今のところ何の考えも浮かんでないんだけど、何とかなるだろ」

「でしたら、ここでクルシュさんとはお別れかもしれないってことですか?」

「まあ――キナたちが異種族の楽園に住みついちゃって、俺がそっちに行く方法を考えつかなければそうなるよな」

「そんなのイヤです……! やっぱり行くのやめます」

「え?」

「クルシュさんと一緒じゃなきゃ、私イヤです……」


 キナの両目から大粒の涙が零れだす。


「お、落ち着けよ。少し考えよう。もっといい方法があるかもしれないだろ」

「でも、でも、クルシュさんを置いてなんて行けません!」

「そう言われてもなあ……」


 人間はチケット売ってもらえないし、密航もできなさそうだし。


 何か上手い手はないものだろうか。


「盛り上がってるところ悪いが、妾に良いアイデアがあるぞ」

「本当か、フィラ?」

「当たり前だ。クルシュの分として用意しておいた金貨が不要になっただろう? そのおかげでまだ妖力に余裕がある」

「ほほう、つまり?」

「ここにチケットがあるだろ? これをこうして、こうだ」


 気付けば、キナの手元にあったチケットが2枚になっていた。


「お―――お前!」

「これがあればクルシュも異種族の楽園とやらに行けるのだろう?」

「さ、さすがですフィラさん! お礼に尻尾揉ませてもらっていいですか!?」

「しっ、尻尾はやめろ、バカ!」

「ありがとうございますフィラちゃん。これでクルシュさんも一緒に行けますね!」


 キナがフィラを抱きかかえる。


 フィラはわざとらしく迷惑そうに、


「ふん、妾の力をもってすれば造作もないことよ。そうだ、念のためお前に耳を付けて置いてやろう」


 フィラが手を一振りすると、俺の側頭部に獣のような耳が生えた。


「……あの、俺これ今耳が4つあるんだけど不自然じゃないかな?」

「船に乗り込むまではそうしていろ。受付の女が何かをメモしていただろう? 乗船時に身体的な特徴のチェックがあるのかもしれん」


 なるほど、そういうことか。


「では行きましょうクルシュさん! 異種族の楽園へ!」

「あ……ああ!」


 俺たちは船着き場の入口へ向かって歩き出した。


 しかし、こんな簡単に異種族の楽園へ到着して良いんだろうか。


 もっと南の方だと思ってたけど……まあ、今は気にしないでおこう。





読んでいただきありがとうございます!


「続きが気になる!」と思っていただけたら、後書き下部の評価欄の☆を☆☆☆☆☆から★★★★★にしていただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ