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路地裏で その③


「【上流階級ギルド】の連中から逃げてこの街まで来たが、そこで金が尽きちまってよ。スリに手を出したのが終わりの始まり、いつの間にかこの街に居ついてスリ稼業にのめりこんじまったってわけさ。最初は異種族の楽園に行くために少しだけ他人様から金を拝借しようって心づもりだったんだがなぁ」

「え? 今なんて?」

「いや、少しだけ金を拝借……」

「違う違う、その前だよ」

「スリ稼業にのめりこんじまって……」

「ちょっと行き過ぎたな。その少し後だ」

「異種族の楽園?」

「そう、それだ! 異種族の楽園は実在するのか?」


 俺が訊くと、男は頷いた。


「実在するさ。ロシュマクの港から船が出てるんだ」

「な、なんだってー!?」


 ロシュマクの港といえば、このターキの街から北西へ進んだところにある港だ。そう遠くはない。


「だけどその船は運賃が高くてよ。一人当たり金貨3枚だ……まあ、それで【上流階級ギルド】から逃れられると思えば安いかもしれねえが」


 俺はキナとフィラの方を見た。


「……異種族の楽園、本当にあったんですね!」


 キナが目を輝かせる。


「一人金貨3枚ということは3人で9枚。まあ、明日になれば妾の妖術で用意できなくもないが……どうする、クルシュ?」


 フィラの質問に対する答えは決まっていた。


「もちろん行くさ。良かったなキナ、エルフの仲間に会えるかもしれないぞ」

「は――はい、ありがとうございます、クルシュさん!」

「さっそく出発しよう。有意義な情報をありがとうな、おじさん」


 手を放してやると、齧歯類の男は肩を回しながら、


「俺の名はビタセンだ。盗んだ荷物は返すよ。無事に異種族の楽園へ行けると良いな」

「あんたもスリなんかやめて真面目に働いた方が良いよ」


 まあ、俺が言えた立場じゃないだろうけど。


「では行きましょう、クルシュさん。途中で野宿して、明日にはロシュマクの港に着くように」


 キナが力強い声音で言った。


 まさかこんなに早く異種族の楽園に辿り着けるとは思わなかったが、すべては結果オーライ。


 王都を追放された俺にもそれなりの運が回って来たということかもしれない。


 俺たちはビタセンと別れ、原付を預けた宿屋へ向かった。






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