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ターキの街に その⑤


「またあとで合流しましょうね、クルシュさん」

「ああ、またな」


 俺はキナたちと別れ、一人さみしく男湯へ向かった。


 ため息とともに脱衣所で服を脱ぐ。


 タオルを握って向かった湯気の向こうには源泉かけ流しの温泉があった。


 入浴客は他にいないらしい。貸し切りだ。


 ある程度身体を流して汚れを落とし、いよいよ入浴。


「熱ィぜ……ッ!」


 長旅で冷え切った身体に、熱すぎるくらいのお湯が染みわたる。


 当然だがタオルをお湯につけてはいけない。これは万国共通のマナーだ(知らんけど)。


「ゔゔゔ……」


 肩までお湯につかると、呻くような声が出た。


 思えば特級錬金術師になって以来、こんな風にゆっくりしたことは無かった。


 今頃王都はどうなっているだろう。


 ゴートはうまくやっているだろうか。


 魔石の劣化を抑えられないあの製法を広めちゃうと、王国は多分数年もしないうちに崩壊すると思うけど……まあ、今の俺には関係ないか。


 そういえばマガイはどうなったかな。


 あの採掘場の機械も相当古かったし、恐らくそう長くは持たないと思うけど……まあ、それも今の俺には関係ないか。


 そういえば、キナを受け取りに来ていたあの黒服たちも【上流階級ギルド】の仲間だったんだろうか。


 まあ――――気にするだけムダか。


 温泉を囲う板張りの壁の向こうにはターキの街の夜景が見えた。


 俺はぼんやりとその景色を眺めたあとで目を瞑り、反対側の壁の向こう―――すなわち女湯に思いを馳せた。





「いやあ、良いお湯でしたねえ!」


 女湯の前で待っていると、薄い布切れのような衣服に身を包んだキナとフィラが出て来た。


「お―――お前、なんだその服は」


 特にキナの方は、布と布の緩い狭間からビックバン的な白い胸元が―――いやちょっとどうにかすれば胸元どころかポロリもありそうな感じだった。


 それだけじゃない。


 布の隙間からはキナの程よい肉づきの太ももがかなり際どいところまで見えていて、少年誌なら間違いなくアウトだった。


「浴衣というのだ。妖狐族の里では珍しくもない衣服だ」

「よ、妖狐族って露出狂が集まっているのか?」

「は? 何を言ってるんだお前は」


 フィラが呆れたように眉を顰める。


 見れば確かに、フィラの身体に浴衣とかいう衣装はぴったりサイズで別にエロくもなんともなかった―――いや。


 湯上りだからなのかフィラは豊かな金髪を髪留めで結んでいて、普段は見えない首すじが露わになっていた。


 ロリの華奢で折れそうな、芸術的な繊細さを持った首すじ―――。


 っ……………。


 ………。


 ……。


 ……………………いいね!!


 と、フィラが身を震わせる。 


「なんだか悪寒がするんだが」

「大丈夫ですかフィラちゃん? 湯冷めしちゃいましたか?」

「いや、もっと生理的に受け付けない感じの悪寒だ。うなじの辺りに妙な視線を感じる」

「え? 気のせいじゃないかなあ?」


 俺は口笛を吹きながら誤魔化した。


 危ない危ない、勘のいいガキは嫌いだよ。



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