ターキの街に その④
「温泉は良いぞ。妾が幼い頃住んでいた妖狐族の里は天然の温泉が湧いておってな。夜な夜な皆で背中を流しあったものだよ」
「そうか……妖狐族ってみんなフィラみたいな見た目なのか?」
「まあ、そうだな。あとは徐々に老化していくだけだ」
「なるほど……」
妖狐族の里はロリがロリの背中を流しあう桃源郷だったというわけか。
俺も交ざりたかったなァ。
―――おっといかんいかん、こんなことを考えていたら謎の勢力から殺されてしまうだろう。
「まさか温泉つきの宿に泊まれる日が来るなんて。これもみんなフィラちゃんがお金を出してくれたおかげです!」
「せいぜい感謝するがいい。でも、お金を払ったらすぐに立ち去らなければな」
「どういうことですか?」
「妖術で出したお金だから、妾の妖力が切れれば消滅してしまうんだ」
「ええ!? ……世の中そんなにうまくいきませんねえ……」
「ま、バレなければ犯罪ではなかろう」
フィラは澄ました顔で言った。
もしここで通貨の偽造がバレれば――――。
名前:クルシュ・ピアストル
職業:元特級錬金術師(無職)
HP:多少
MP:限りなくゼロに近いゼロ
魔法:30過ぎまで童貞だと使えるようになると聞いたことがある……。
スキル:錬金術を少々嗜んでおりまして……。
犯罪歴:
魔石の生産を遅らせた罪(冤罪)
研究費の横領(冤罪)
部下への暴行(冤罪)
魔石製法の他国への漏洩(冤罪)
暴行罪
傷害罪
器物損壊罪
無免許運転
無許可営業
合法ロリ単純所持罪
通貨偽造(←NEW!)
――――的なことになるだろう。
ステータスオープンならぬ罪状オープンだ。
うーん、嬉しくない。
そんなことを考えていると、温泉の暖簾が見えて来た。
「この街も明日には出発するし特に気にすることはないだろ。気楽に行こうぜ、二人とも」
「ああ、そうだな。ところでクルシュよ」
不意にフィラが立ち止まる。
「どうした? いよいよ温泉ってときに」
「お前どうして女湯に入ろうとしているんだ?」
「……ついて行っちゃだめか?」
「ダメだろ」
「そうか……」
ダメか。
流れで女湯に侵入作戦は失敗か。