再び南へ その③
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というわけで。
「インテレスト完全復活ですーっ!」
「良かったな、キナ」
「このエンジン音がたまんねぇーッ!」
「急におっさんみたいなこと言うなよ、キナ」
「では気を取り直して、早速次の町に向かいましょう!」
「おう!」
俺はバイクに跨った。
「……いやまてお前たち、この構図はおかしい」
「え、何がおかしいんだ」
「おかしいだろ! なんで妾が運転席なんだ!?」
バイクの配置はインテレストにキナ。そしてバイク屋の店主からもらった原付の運転席にフィラ、その後ろに俺。
「……何か問題が?」
「なんでお前が後部座席なんだ!? 妾、足が地面に届いてないんですけど!?」
「フッ、俺は教習中にオートマ車をエンストさせた男だぜ? そんな奴に運転を任せられるとでも?」
「ダメな方にすごい自信だな……。っていうかさっきから妾のおなかをさわさわするのやめてほしいんだが」
「……何か問題が?」
「当たり前だろっ!? ふつーにセクハラだっ! とにかく妾はキナの方に乗る! お前は一人でこれを運転しろ!」
「えー? もっとおなか触らせてよぉー!」
俺が言うと、フィラは道端に捨てられて腐敗した生ゴミを見るような目をこちらに向け、その小さく可愛らしい口をゆっくりと開け、言った。
「死ね(直球)」
ぐはっ……!?
心の臓に効きやがったぜ……!!
だが、それがいい!!!
「仕方ないですねクルシュさん。改めて私が原付の乗り方を教えてあげましょう」
「ああ、助かる」
「まずはニュートラルランプを確認します」
「ほうほう」
「キックします」
「え、どこを?」
「右後ろの……何か踏むところあるでしょ?」
「あー、あるわ」
踏んだ。
エンジンがかかった。
「左足でギアを一速に入れて右手のアクセルを上げつつ発進してください」
「……え、何て?」
「いやだから、左足でギアを一速に入れて右手のアクセルを上げつつ発進してください」
―――こいつ何を言っているんだ!?
「ごめんキナ、それ無理」
「む、無理ですか」
「こんなもん、制御系統の魔石を増設して俺の思考と同調させれば簡単に動くんだよ!」
「な、何言ってるんですかクルシュさん」
「いいか見てろ、これが特級錬金術師の原付の乗り方だ!」
ひとつ余っていた魔石の組成を制御用に書き換え俺の思考とリンクさせる。
原付の動力用魔石の制御系統を原付から制御用魔石に移行。俺の思考がそのまま原付の挙動に反映されるようにしておく。
後は俺が念じるだけだ。
――――行け、原付!
エンジンの音も高らかに、原付は明後日の方向へ進み始めた。
「うおおおおおおどこに行くんだあああああ!!?」
「次の目的地はそっちなんですね、クルシュさん!」
「いやそういうわけじゃ―――どうやって止まるんだこれ!?」
原付は加速しながら直進していく。
―――それがエルフの楽園がある方向であることを、俺は祈ることしかできなかった。
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