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再び南へ その①

 周囲の黒服たちを見て、俺は口を開いた。


「フィラを解放しないなら何人でも相手になってやる。死にたい奴はいるか?」

「……!」


 黒服たちの間に動揺が走った。


 お互いに誰が最初に動くか探っている状態―――おそらく戦意は失っているだろう。


 俺は横たわったままのフィラの身体から縄を解き、そのまま抱え上げた。


「キナ、悪いけど運転頼む。インテレストはまだ動くかな?」

「う―――動くと思います。クルシュさんは大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ。早く次の町に行こう。俺は――疲れたよ」


 キナがバイクを抱え起こしエンジンを入れる。


「行けます、クルシュさん」

「分かった。……あとこれは、俺からお前たちへのおみやげだ」


 上着のポケットに入れていた魔石を数個、床の上にばらまく。


 鈍く輝く球体は無秩序に転がっていった。


 俺がバイクの後ろに跨るのを待って、キナがブレーキを放した。


 バイクはゆっくりと【上流階級ギルド】のアジトを離れていく。


 一体何だったんだ、ドブラって男は……。


 俺は胸から魔石を外した。


 それを合図に、俺の背後で大きな爆発が起こった。


 さっき敵のアジトに置いて来た魔石が爆発したからだ。


 あのアジトをひとつ壊したからって何かが変わるわけじゃないだろうけど―――何もしないよりはマシだろう。そう信じたい。


 俺の肩の辺りで、フィラが顔を動かした。


「……目が覚めたのか、フィラ」

「…………りだ」

「え、何? なんて?」


 フィラは掠れた声で、しかし自信に満ちた声で言った。


「絶対助けに来てくれると思ってたよ。ほらな、妾の計画通りだ」





「……それで、ですよ」


 朝。


 人の行き交う路地の隅。


 俺たちは三人並んで、地面に座り込んでいた。


 キナが言葉を続ける。


「フィラちゃんは取り戻した。【上流階級ギルド】のアジトも破壊した。それはいいんです。フィラちゃんが帰って来て私も嬉しいです。でも―――私たちの問題は何も解決してませんよね?」

「いやいや、世の中に蔓延る悪をひとつ成敗したじゃないか」

「でもインテレストは壊れたままだしお金もないですよね?」

「うん、それはそう」

「どうしましょうか、クルシュさん」

「そうだな……あの厄介な黒服たちもいなくなったことだし、俺が改造した魔石を密売するっていうのはどうだろう」

「その魔石もアジトを破壊するのに使っちゃいましたよ……」


 あっ。


 そうだった。


 忘れてた。


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