変態同士は惹かれあう その⑨
魔石を見ると、フィラの反応は一定のポイントで止まっていた。
恐らくはここがあの黒服たちの拠点なのだろう。
「……すごい音がしたと思ったら、お前さんたちだったかー」
聞き覚えのある声に、俺たちは同時に背後を振り返った。
そこに立っていたのはバイク屋の親父だった。
「どうしてこんなところに?」
「いや、店の近くですごい音がしたからさー、ちょっと見に来たんだー」
「そうなんですね。……そう言えば、俺たちが預けたバイクはどうなりましたか?」
「うんー? ああ、順調だよー。基本的な整備は終わってるけど、あとは基盤がねー、部品が無いからねー」
「動くんですか?」
「え? まあねー、動きはするけど、長旅はできないよー?」
「いや、それで十分です。キナ、行こう」
「ど、どこにですか?」
首を傾げるキナに、俺は言う。
「インテレストで突っ込むんだよ、あいつらのアジトに」
※
「ほ、本当に大丈夫なんですか?」
キナがアクセルを全開にしながら言う。
バイクはどんどん速度を上げていった。
「大丈夫だ。特級錬金術師を信じろ!」
「元、でしょおーっ!?」
「資格を剥奪されたのは俺にコミュ力が足りなかったからだ! 錬金術師の能力とは関係ない! とにかく今は俺の信じる俺を信じろ!」
「あーもうめちゃくちゃですよ……!」
【上流階級ギルド】のアジトがみるみるうちに近づいてくる。
俺は手にした魔石の出力を上げた。
「魔石でインテレストの周囲の力場を制御している。つまり、俺たちの周囲には見えない強固な盾があると考えてくれればいい」
「ど、どういうことですか?」
「このままあいつらのアジトに突っ込んでも大丈夫ってことだ。フィラの反応も近づいて来たぞ。よーしキナ、もっと速度を上げろ」
「どうなっても知りませんよ!?」
「大丈夫だって安心しろよ。へーきへーき、へーきだから」
「インテレスト、壊れちゃったらごめん!」
バイクの速度がさらに上がる。
敵のアジトはもう目の前だった。
「つっこむぞつかまれッ!」
「運転してるのは私ですっ!」
バイクは凄まじい速度のまま敵のアジトの壁を突き破った。
俺にはすべてがスローモーションに見えた。
崩壊していく壁。
俺たちの周囲に飛び散る瓦礫。
空中に浮かぶバイク。
中にいた黒服たちが俺たちの方を見る。
そしてその奥に、椅子に縛り付けられたフィラがいた。
「死んじゃいますうううううううっっっ‼」
キナの叫び声と同時に俺たちの乗ったバイクは地面に衝突し、大きくバウンドして横向きに着地した。