変態同士は惹かれあう その⑦
「っていうかお前、なんでまだついて来てるんだよ。面倒を見てやるのは今日の朝までって話だったはずだけど?」
「だから私の自由意志でお前たちに同行している。とやかく言われる筋合いはないな」
「まさか行く当て無いのか?」
「そんなことはない。友達の数はいっぱいだ。右手じゃ足りないくらいだ」
「じゃあ左手まで合わせれば?」
「う……まあ、足りんことはない。しかし、戦いは数かもしれないが友達は数ではない。たった一人の親友がいればそれで良いのだ。違うか?」
「それは――そうかも」
人とのかかわりを避けて研究室に引きこもった挙句部下に裏切られた身からすれば――反論する術はなかった。
「とにかくインテレストを回収しに行きましょう。修理は終わってないでしょうけど、動かないわけでもないでしょうから。インテレストがあればもっと速く移動できるようになりますし」
「だけどキナ、インテレストにはどう頑張っても二人までしか乗らないぞ。どうする?」
「そんなのは簡単なことだ。妾とキナがそのインテレストとやらに乗ればいい」
「俺はどうするんだ」
「【上流階級ギルド】が探しているのはお前だろ? 囮になってくれれば妾たちが逃げやすくなるじゃないか」
「なるほどねその手があったか―――って俺を切り捨てようとするんじゃねえ!」
とまあ華麗なノリツッコミを繰り出しつつ、どうしようかと腕を組む。
一刻も早くこの街から出た方が良い。
だけどそうしたところで金もない。
既に破綻しそうだな、この旅……。
「……クルシュさん!」
キナが俺に小声で囁いた。
周囲を伺うといつのまにか黒服たちに囲まれていた。
「手こずらせやがって。ようやく見つけたぜ」
そう言って俺たちの方に一歩分近づいて来たのは、昨日フィラの腹を踏みつけた黒服だった。
「……仕方ない。ここは俺が」
敵の数は10から15ってところか。魔石で身体強化すれば何とか――と、俺が魔石に手を伸ばしかけた瞬間、破裂音がして俺の足元で何かが跳ねた。
「おっと妙な動きはするなよ。お前が魔石を使って何かをするってことは知ってるんだ」
黒服がこちらに向けていたのは拳銃だった。
見れば、俺たちを取り囲んでいる黒服たちもそれぞれに銃器を構えていた。
俺が魔石を手にした瞬間、こいつらは俺を撃ち殺すだろう。迂闊には動けない。
万事休す、というやつか……。