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変態同士は惹かれあう その⑤


※ 



 翌日。


「いらっしゃいいらっしゃい、上質な魔石が大安売りだよー!」


 ポロシャの町の大通りでにボロボロのマットの上に座り魔石を売る、サングラスとマスクで顔を覆った怪しい男の姿があった。


 ていうか俺だった。


「今なら美少女との握手券もついてきますよー」


 口元にバンダナを巻いたキナが、俺の横でビラのようなものをひらひらさせる。


「……それ、いつの間に用意したんだ?」

「フィラちゃんに妖術で出してもらったんです」

「え、マジか。お前そんなことできたのか」


 隣に座るフィラを見ると、不機嫌そうに頬を膨らませていた。


「嘘じゃないって言っただろ。妾は妖術の使い手なんだよ」

「へー、妖術なんて初めて見た。俺にも使えるかな?」

「人間には無理だ。妖狐族だけが持つ異能なのだからな」

「そうか……ひょっとすると遺伝子レベルで解析すれば何か分かるかもしれないな。フィラ、尻尾の毛を分けてくれないか」

「えっ、素直に渡すと思ったのか」

「いいだろ別にそんなにいっぱい生えてるんだから」

「ば、ばかぁ、やめろぉ……っ! そんな乱暴に触るなぁ……っ」


 俺が尻尾に触れると、フィラは身を震わせながらだらんと横になった。


 はあはあと荒く息をして、頬を上気させている。


「急にどうしたんだ……?」

「尻尾、さわっちゃだめぇ……」

「そうだったのか、すまん」

「…………………」

「なんだその目は。何か不満か?」

「もう終わりなのか?」

「え?」

「いやだから、もう終わりなのか? もっと触らなくていいのか?」

「え……いや、やめろって言われたからやめただけなんだけど」

「お主……」

「ちなみに俺は女の子がいやがることはやらないタイプだ。終電逃しちゃった女の子は地を這ってでもその日のうちに家まで送り届けてやるのが男の矜持だと思っている」

「ああ……そうなのか」


 フィラは拍子抜けしたように座り直した。


 ―――これでいいのだ。


 何かチャンスを逃した気もするのだけれど、逆にこのチャンスを捉えた場合もそれはそれで問題だから、これでよかったのだ。


 青少年保護育成条例は守られたのだ。


「クルシュさん」


 隣でキナが囁く。


 その声には緊張の色があった。


 周囲を確認し、その理由が分かった。


 昨日の黒服と同じ服を着た男たちが数人、向こうから歩いてきていた。


「キナ、フィラを連れて隠れていろ。俺が対応する」

「分かりました。でもおひとりで大丈夫ですか?」

「魔石を持った特級錬金術師に不可能はないよ。任せろ」

「さすがクルシュさん! ではお任せします!」


 俺はキナとフィラに向かって頷いた。



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