変態同士は惹かれあう その④
「じゃあ、フィラ。お前を俺たちの宿に連れて帰る。さっきの黒服が追ってくるかもしれないし、一晩は身を隠しておいた方がいいだろうからな。明日になればお前を解放してやる。それでいいな?」
「いいだろう。ところでお主ら、名前は?」
「俺はクルシュ。こっちは……」
「キナ・フリブニャンです。よろしく、フィラちゃん」
「ふん。さっきも言ったが妾は200年近く生きているんだ。『ちゃん』づけされて呼ばれる覚えは――と思ったが、お主さては人間ではないだろ?」
フィラが目を細め、キナは髪を触る。
「ん……耳も出してないのによく分かりましたね?」
「気配だよ。それも希少な種族の気配がする。そういえばさっきエルフがどうのこうのと言っていたな? お主、エルフか?」
「はい、その通りです。妖狐族の末裔というのは嘘ではなさそうですね」
「当たり前だ。しかしまあ、エルフ族なら『ちゃん』呼びでも許してやろう」
「じゃあよろしくな、フィラちゃん」
俺が言うと、フィラは俺に抱えられたまま俺の太ももを蹴った。
つうこんのいちげき!
俺は痛みのあまり蹲った……。
「お前には許してない。お前たち人間は友好的に接してやった我らを騙し、乱獲したのだからな」
「だけど助けてやったのは俺だろ!」
「む……そうか。じゃあ仕方ない、お前にも名前を呼ぶ権利をやろう。好きに呼ぶと良い」「分かったよ、クソガキ」
「誰がクソガキだっ!」
フィラの膝が俺の脇腹に直撃した。
クリティカルヒット!
俺は再び蹲った……。
「とにかく宿に戻りましょう、二人とも。こんなところにいては見つかるのを待っているようなものです」
「……だな」
ここは北部の中心街。つまり【上流階級ギルド】の庭みたいなものだ。
いくら元特級錬金術師でもひとつの組織全体を相手にしては勝ち目が薄い。
俺たちは急いで宿へと向かった。
※