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変態同士は惹かれあう その③


「隙を見て颯爽と助けに行こうと思ってたんだけど、気づかれていたのなら仕方ない」


 路地の隅に隠れ様子を伺っていた俺だったが、渋々姿を現した。


 男たちが俺を見て警戒する素振りを見せた。


「なんだてめー、いつからそこに居やがった?」

「その子が『お前たちの穢れた手で触るな』――とか言ってた辺りから」

「……おい、そいつを押さえてろ。こいつは俺がやる」

「お、おう」


 端末で連絡を取ろうとしていた方の黒服が、俺の方へ歩み出る。


「てめえ、俺たちが何者か分かって言ってるんだろうな?」

「そう熱くなるなよ。まあ、俺が同じ質問をしても良いんだけど」

「……どういう意味だ?」

「ケンカを買う相手も選んだ方が良いってこと」

「!?」


 俺は目を瞑った―――瞬間、裏路地を眩い閃光が包んだ。


 路地を囲む建物の屋上に仕掛けておいた魔石が作動したからだ。


 黒服たちが目を押さえ戸惑っている間に、俺は少女を拾い上げ路地から飛び出した。


「……いやごめんごめん、準備が整うのに時間がかかって」


 少女の身体は俺が片手で抱えられるくらい華奢で軽かった。


 その少女は大きな耳を揺らしながら俺の方を見上げると、噛みつくように言った。


「ふんっ、助けられなくても妾一人でどうにかなったんだからな!」

「おいおい、羽交い絞めにされてたのはどこのどいつだよ。あの状況からどうやって逃げ出すつもりだったんだ?」

「妾を誰だと思ってる。数百年の時を生きる妖狐族の末裔だぞ。あんな輩どもなど、妾の妖術でひとひねりしてやるところだったんだ」

「ああ、そう……。その割には随分痛めつけられてたみたいだったけど」

「そ、それは――妖力不足だっただけだっ! もう少し時間があれば妖術も使えたんだ!」

「あーそう。ふーん。俺は別にこのまま引き返して、お前をあいつらに返してやっても良いんだが」

「な――なんだその目は! 妾を疑ってるのか? 嘘じゃないぞ! 妾は妖術の使い手なんだ! う……嘘じゃないもんっ! 本当だもんっ!」


 少女の潤んだ瞳から大粒の涙が流れ出す。


 泣いちゃった……ってコト!?


「うまくいきましたねクルシュさん!」キナが建物の外階段から降りてくる。「あれ、なんで泣かせてるんですか?」

「俺が泣かせたんじゃなくて勝手に泣き出したの。まったく、子供っていうのは扱いづらいぜ」

「まあ――現実の子供というのはそういうものです。犯罪に手を染める前に妄想から覚めて良かったんじゃないですか?」

「それどういう意味だよ。俺がどんな犯罪に手を染めるっていうんだ?」

「児童ポルノの単純所持の罪とか……」

「何の話だ。そんな法律がこの国にあるなんて聞いたことないぞ」

「あれ、そうですね。一体私どうしちゃったんでしょう……ちなみにエルフは18歳を超えても見た目は幼女ですから児童ポルノの対象にはなりませんね。いわゆる合法ロリというやつです。ねらい目ですよ」

「何のねらい目なんだよ。俺に法律の穴を突かせようとするな」

「そうですか、突きたい穴が違いましたか」

「そういう話でもない」

「おっと、話が逸れすぎて四回転サルコウです」

「フィギュアスケートの話を出すな……中々本筋に入らないな、この掛け合いは」

「すみません、ここは雪国ジョークということでひとつ」

「おあとがよろしいようで。で、何の話だっけ」

「児童ポルノの……」

「違うだろ。こいつだよこいつ。この幼女、助けたけどどうしてやろうか」

「ちなみに妾も200歳近いぞ。児童ポルノの対象にはならない」

「そうかそうかつまり今の俺は合法ロリの単純所持というわけだな」

「それはそれで犯罪チックな気もしますが。で、どうしましょうかこの子。宿に連れて帰るしかなさそうですが」

「だよな。おいお前、名前は?」


 ごほんと咳払いをし、幼女は尊大な態度で答える(俺に抱えられたまま)。


「妾の名はフィラ。誇りある妖狐族の末裔にして現代最後の妖術使いだ!」



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