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変態同士は惹かれあう その②


 隣でインテレストの魅力を延々と語り始めたキナはそのままに、俺は宿のある方へと歩き出した。


 辺りはもう薄暗くなっていた。


 街灯が点いていて、帰宅途中だろうか、行き来する人が増えたような気がする。


 この街灯も道路を走るバスも、恐らくは俺が特級錬金術師だった頃に出来たものだろう。


 もしゴートがあの劣化版魔石の量産を始めたら――この街灯がこんな風に輝くことは無くなるだろう。


「どうしたんですかクルシュさん、そんなに深刻な顔をして」


 駆け寄って来たキナが、俺の顔を覗き込みながら言った。


「いや……大したことじゃない。それより、俺はロリコンじゃないからな」

「まだ引きずってたんですかその話……。気にするあたりが余計に怪しいですよ」

「…………」


 墓穴を掘ったか。


 と、そのとき、俺の横を凄い速度で小さな人影が通り過ぎて行った。


 それを追いかけるように、黒服の男たちがその後ろを駆けていく。


「あの黒服、この間私を引き取りに来た人たちと同じ服を着ていますね」

「ってことは人身売買ネットワークの構成員か。俺たちは採掘場から逃げて出してきた身。こんなところで【上流階級ギルド】とやらと小競り合いを起こすわけにはいかない。可哀そうだが見なかったことにさせてもらおう」

「追われていた子、まだ小さかったです」

「そうかそれは大変だ助けに行かなければ。全く、幼子にまで手を出すとは許せん奴らだな。元特級錬金術師として見逃すわけにはいかん」

「クルシュさん、てのひらがくるくるしすぎてねじ切れそうですよ」

「じゃあ逆に訊くけど、キナは少女を見殺しにする俺と助けに行く俺、どっちが良いんだ?」

「……それはもちろん、助けに行くクルシュさんです!」

「だよな。じゃ、行くか」

「はい!」


 俺たちは互いに頷きあうと、少女が逃げて行った方めがけて走り出した。





「くっ、は、離せ! お前たちの穢れた手で妾を触るな!」


 路地裏で屈強な男ふたりに取り押さえられる少女。


 両手両足を押さえられてなお暴れ続けるその少女には――獣のような耳と、尻尾があった。


「アニキに連絡しろ、獣人族の娘を確保したとな」

「分かった。おい、暴れるなこのガキ!」


 男が少女の腹を踏みつける。


 柔らかな腹部に男の革靴がめり込んだ。


 少女は目を見開くと咳き込み、身体をくの字に折り曲げた。


「バカ、大事な商品だ。傷物にすれば罰を受けるのは俺達だろうが!」

「少しは静かにさせなきゃ連絡も出来やしねえだろ。おい、押さえてろ」

「……あ、ああ」


 少女を足蹴にした男は、小型の通信端末を取り出し耳に当てた。


 アニキと呼ばれた人物に連絡をしようとしているのだろう。


「……げんに、しろ」

「あ? なんだ、ガキ?」


 少女の呟きに男が不機嫌そうな声を上げる。


 それを無視するように、少女は声を張り上げた。


「いい加減にしろ! 貴様、見ているだろっ!」


 ……しまった、バレた。


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