変態同士は惹かれあう その②
隣でインテレストの魅力を延々と語り始めたキナはそのままに、俺は宿のある方へと歩き出した。
辺りはもう薄暗くなっていた。
街灯が点いていて、帰宅途中だろうか、行き来する人が増えたような気がする。
この街灯も道路を走るバスも、恐らくは俺が特級錬金術師だった頃に出来たものだろう。
もしゴートがあの劣化版魔石の量産を始めたら――この街灯がこんな風に輝くことは無くなるだろう。
「どうしたんですかクルシュさん、そんなに深刻な顔をして」
駆け寄って来たキナが、俺の顔を覗き込みながら言った。
「いや……大したことじゃない。それより、俺はロリコンじゃないからな」
「まだ引きずってたんですかその話……。気にするあたりが余計に怪しいですよ」
「…………」
墓穴を掘ったか。
と、そのとき、俺の横を凄い速度で小さな人影が通り過ぎて行った。
それを追いかけるように、黒服の男たちがその後ろを駆けていく。
「あの黒服、この間私を引き取りに来た人たちと同じ服を着ていますね」
「ってことは人身売買ネットワークの構成員か。俺たちは採掘場から逃げて出してきた身。こんなところで【上流階級ギルド】とやらと小競り合いを起こすわけにはいかない。可哀そうだが見なかったことにさせてもらおう」
「追われていた子、まだ小さかったです」
「そうかそれは大変だ助けに行かなければ。全く、幼子にまで手を出すとは許せん奴らだな。元特級錬金術師として見逃すわけにはいかん」
「クルシュさん、てのひらがくるくるしすぎてねじ切れそうですよ」
「じゃあ逆に訊くけど、キナは少女を見殺しにする俺と助けに行く俺、どっちが良いんだ?」
「……それはもちろん、助けに行くクルシュさんです!」
「だよな。じゃ、行くか」
「はい!」
俺たちは互いに頷きあうと、少女が逃げて行った方めがけて走り出した。
※
「くっ、は、離せ! お前たちの穢れた手で妾を触るな!」
路地裏で屈強な男ふたりに取り押さえられる少女。
両手両足を押さえられてなお暴れ続けるその少女には――獣のような耳と、尻尾があった。
「アニキに連絡しろ、獣人族の娘を確保したとな」
「分かった。おい、暴れるなこのガキ!」
男が少女の腹を踏みつける。
柔らかな腹部に男の革靴がめり込んだ。
少女は目を見開くと咳き込み、身体をくの字に折り曲げた。
「バカ、大事な商品だ。傷物にすれば罰を受けるのは俺達だろうが!」
「少しは静かにさせなきゃ連絡も出来やしねえだろ。おい、押さえてろ」
「……あ、ああ」
少女を足蹴にした男は、小型の通信端末を取り出し耳に当てた。
アニキと呼ばれた人物に連絡をしようとしているのだろう。
「……げんに、しろ」
「あ? なんだ、ガキ?」
少女の呟きに男が不機嫌そうな声を上げる。
それを無視するように、少女は声を張り上げた。
「いい加減にしろ! 貴様、見ているだろっ!」
……しまった、バレた。