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変態同士は惹かれあう その①



「……え? お金が足りない?」


 北部最大の街、シャポル――の路地裏の寂れたバイク店――の店主らしき、中年の若干禿げかけた男。


「そうだなー、エンジン基盤の問題だからなー。中々手に入らない部品なんだよなー」

「なんとかなりませんか? 今、俺たち手持ちがこれだけなんです」


 金貨が5枚。それが俺たちの全財産だった。


「うーん、まあできるだけやってみるけどー、あと金貨2枚は必要かなー。部品代がねー高いんだよねー」

「……そうですか」

「まー、この原付は出来るだけメンテナンスしておくからー。3日後引き取りに来てよー。メンテナンスだけなら金貨3枚でやってあげるよー。バイク本体に対してかなり高性能な魔石を使っちゃってたみたいだから、負荷がかかりすぎたみたいだねー」

「3日もかかるんですか?」


 俺が言うと、店主は少しだけ顔を曇らせた。


「そうなんだよー。本当なら優秀な店員が居て、このくらいなら1日でやってくれたんだけどねー」

「優秀な店員?」

「ああ。あの子のお陰でウチの店は繁盛してたんだけどねー、あいつ、ドワーフ族の血を引いていてねー」

「どういうことです?」

「【上流階級ギルド】の奴らに目をつけられて、ついこの間拉致されちゃったんだよ。それから二度と戻ってきていないんだー。あーあ、いいやつだったのになあ」


 【上流階級ギルド】。


 なんてやつらだ。


「分かりました。では3日後また伺います」


 俺はそう言い残し、バイク店を後にした。


 背後からキナが着いてくる。


「インテレスト、直らないんですか?」

「金が足りないらしい。こんなことならマガイのところからいくらか持ってくるんだった」

「それは立派な泥棒さんですよ、クルシュさん……」

「とにかく金が必要だ。一度宿に戻ってから考えよう」

「魔石、買いすぎちゃいましたか?」


 バイク屋に寄る前、俺たちは加工前の魔石動力用や魔術用に用途が限定される前の魔石をいくつか購入していたのだった。


「かもしれないけど、俺は元特級錬金術師だぜ? 魔石があればどんな不可能も可能にできる。未来への投資だと思えば安いものだろ」

「そのせいでこの街から出るのも難しくなりそうなんですけど……」

「未来を見すぎて目の前が見えてなかったってことか。灯台下暗しでお先も真っ暗か」

「ああ、可哀そうなインテレスト。クルシュさんが容量の大きな魔石をインテレストの小さな穴に無理やり挿入したから壊れちゃったんですね……」

「人聞きの悪いことを言うなよ。俺はただ魔石をちょっと改造しただけだろ。……まあ確かに、バイク本体の負荷のことはあんまり考えてなかったけど……」

「小さな穴に無理やり……そういうのに興奮しちゃうんですか?」

「え、これバイクの話だよね? 俺の話聞いてた? っていうかまるでその言い方、俺がロリコンみたいじゃないか」

「いや……私はインテレストの話をしているんであって別にクルシュさんのフェチズムについては何も言及していませんけど」

「そうかそうか。ところであのバイク、ハンドルから座席部にかけての曲線が素晴らしいよな」


 キナの目が輝いた。


「ですよねですよね! クルシュさんなら分かってくれると思いました私あの曲線美を見て一発で惚れこんじゃったんですよね何度見てもゾクゾクしますよあの曲線、清楚さの中に妖艶さを見せるあの究極の魅力! やっと分かってくださったんですねクルシュさん!」


 急に早口だな……。


 しかしこれではどちらが変態だか分からないな。


 フッ、変態同士は惹かれあうということか……。


 いや待て、それだと俺も変態ってことにならないか?


 そこだけは否定しておきたい。



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