過労の錬金術師 その②
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王の間に着くと、国王を始め側近の貴族たちが数名集まっていた。
一体何が始まるんだろう。
少なくとも、俺の功績を褒め称えてくれるようなことは無さそうだ。
「……特級錬金術師、クルシュ・ピアストルよ」
威厳ある声で言う王だったが、その酒臭さは俺の近くまで漂っていた。パーティの酒がまだ残っているに違いない。
「はい、何でしょう国王陛下」
返事をした俺に放たれた言葉は、俺が予想もしていない内容だった。
「お前はクビだ」
「……え?」
「お前のような役立たずは必要ない! いや、役立たずと言うのではまだ足らん。お前のような裏切り者は、本来ならば死刑にしても余りある」
状況が呑み込めなかった。
裏切り者? 死刑?
確かに王や貴族に対して不満はあった。だけど、俺なりに王国のためにと魔石の増産に励んできたつもりだった。
「お、お待ちください国王陛下。死刑とはどういうことですか?」
「この期に及んでまだ知らぬふりをするつもりか? まあ良い。とにかくお前はクビだ。お前の代わりはこの者が務める。ゴートよ、ここへ」
「はい、国王陛下」
俺の背後から声がした。
振り返ると、ローブを羽織った痩身の男――ゴート・カナフィットが王の間の扉を潜り、こちらへ歩いて来るところだった。
一級錬金術師のゴート。本来であれば俺の補佐役であるはずの男だ。
だけどこいつは毎日のように貴族たちのパーティに出席するばかりで、何の仕事もしていなかった。
そんな奴がどうしてこんなところに?
そして、どうして俺の後任を?
「ゴートは我らの王国のために、魔石を現在の10倍の速度で生産する方法を考案してくれたのだ。お前のような研究所に籠りきりの無能とは違ってな。これがその方法とやらだ」
王の手元には一枚の紙があった。
僅かに見えたその紙の表側には、魔石の製法が書かれていた。
俺は目を疑った。
その製法は――見間違いでなければ――俺が研究し続けて来た、あの新製法だった。
だけど、もしそうなら……。
「国王陛下、このクルシュ一生のお願いです。その紙をお見せください」
「ふん、良かろう。とは言ってもお前には理解できないだろうがな」
王が紙をこちらに向ける。
間違いない。俺が研究して来た製法と同じ手順だ。
ということは――。
「国王陛下、失礼ながらご意見させていただきます。その製法では魔石の性能は現在の10分の1に落ち込みます。もう一度考え直してください」
俺が言うと、王の間は奇妙な空気に包まれた。
な、なんだ、この空気。
すごく嫌な予感がする。
「……やはりお前の言う通りになったな、ゴートよ」
国王が俺の隣に立つゴートの顔を見る。
え?
どういうことだ?
隣を見ると、ゴートは勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
「ですから申し上げたでしょう、国王陛下。この男は自分の地位を失いたくないがために、私が考案した新製法のあらぬ欠点を述べると。ご安心ください陛下。この製法に、クルシュのようなペテン師のいうデメリットなどございません」