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王国凋落編 その①

※※※


 クルシュが姿を消してから数日が経過した王宮――そこにある、かつて彼が滞在していた研究室の扉が勢いよく開かれた。


 それと同時に元気な赤髪の少女の声が室内に響く。


「おはよー、いやぁ久しぶりだね。私に呼び出しがかかるなんて余程人手が足りないとみた。でもね、だからって仕事ばっかしてないでクルシュもちゃんと外に出なきゃダメだよ…………って、あれ? クルシュは?」


 と、そこまで言ってようやく彼女は、言及している相手が室内にいないことに気付いた。


 代わりにゴートの迷惑そうな視線が彼女に送られる。


「ようやく来たかコルナ。まったく、騒々しい奴だ」

「へ? なんでゴートがここにいるの? 私、クルシュから呼び出しを受けて来たんだけど……あ、もしかして久しぶり過ぎて部屋間違った?」

「いいや合ってる。ここは特級錬金術に与えられる研究室だ」

「んん? じゃあなんでゴートがいるの?」

「簡単な話だな。ここはもう僕の工房で、お前を呼んだのも僕だからだ」

「ウソ!? ゴートも特級錬金術師になったの!? おめでとー! いやね? 特級錬金術師からの呼び出しっていうから普通はクルシュだと思うじゃん?」

「お前の連絡用魔石に送られた文には俺の名前が記述されてるはずだ」

「そんなのいちいち確認しないって。【特級錬金術師】って書いてあったらクルシュしかいないわけだし。……まあいいや、それで今日は何の用?」

「単刀直入に言う。これからお前には僕の助手として働いてもらう」

「えー、いいの? 特級錬金術師のサポートができるなんて光栄かも」


 ゴートの言葉を聞き、コルナは嬉しそうな表情を見せる。


 国の中枢である王宮で仕事ができるというのは、彼女にとっての憧れだったからだ。


「でも私なんかでいいの? 助手にするなら同じ【一級錬金術師】でも、王宮で働いてる人の方が優秀なんじゃない?」

「お前は元々、僕と同じようにここで働く予定だっただろう。礼節がなっていないから不適切――ということで他に回されたらしいが、まあ、ちょうど席も一つ空いたことだしな」

「それで私を推薦してくれたんだ。同期のよしみってやつ?」

「そんなところだ。さぁ、状況が飲み込めたのなら付いてこい。これから試作品の最終確認に行く」

「え? え? ちょっと待って、今のでまた分からなくなったんだけどー」


 足早に部屋を出ていくゴートに置いて行かれないよう、コルナは彼の後を追う。


 豪奢な装飾が施された廊下を抜けた先でゴートがノックした部屋は、大臣の執務室だった。



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