格の違いってやつを その②
※
「第一管理室」の隣にはマガイ専用の部屋がある。
この採掘場に来たときに一度だけ入ったことがあるが、豪奢な机椅子と分厚い絨毯、そして最新式の暖房設備があって、すごく快適そうな部屋だった。
とにかくあれだけの暖房があれば凍えて死にそうになるなんてことはないだろう。いいなあ。
……なんか俺、さっきから暖房のことばかり考えてるよな。将来は暖房屋さんになろうかな。いつかは「クルシュのぽかぽか暖房屋さん」なんて看板を――――いや何やねん暖房屋さんて。シバくぞこの。
寒さでちょっと頭がアレになっているらしい。集中しろ、俺。今から大仕事が待ってるぞ。
閑話休題。
話を戻すと、とにかくマガイ専用の部屋があって、その前には「第一管理室」のスタッフが数人と、普段見かけない黒服の屈強な男が二人立っていた。
さて、仕掛けが作動するまであと少し。
俺は廊下の角に身を潜/屈めながら様子を伺う。
一つ深呼吸をして、数字を数えた。
3、2,1……。
突如として異常事態を知らせるサイレンが採掘場全体に鳴り響いた。
ドアの前に集まっていたスタッフたちに動揺が走るのが見えた。
今しかない。
俺は廊下の角から飛び出すと、マガイの部屋の前へと駆け、叫んだ。
「た、大変だ! 機械が壊れたぞ! 誰か手伝ってくれ!」
スタッフたちが一斉に俺の方を見た。
「点検はお前の仕事だろ! 何をやってるんだ!?」
「老朽化が進みすぎてたんだ! とにかく人手が必要だから先に行っててくれ! このままじゃこの採掘場ごと爆発してしまう!」
「ば、爆発!? わ、分かった、どこに行けばいい?」
「Aの1から3番までの機械だ! ほら、あんたたちも手伝ってくれ! 力仕事なんだ!」
黒服の背中を押すと、彼らは戸惑った様子を見せながらスタッフたちの後に続いて走り始めた。
……よし。すべては計画通り。
本当は機械が壊れてなんかいない。
異常を知らせる信号を送るよう、魔石に少し細工をしただけだ。
これで邪魔者はいなくなった。
あとは―――。
俺は勢いよくドアを開けた。
「マガイ、大変だ! 機械が暴走して、もうすぐ爆発してしまうぞ!」
「………!」
室内にはマガイと、両手両足を縛られた状態で床に転がされたキナの姿があった。
キナの長い耳が髪の間から見えている。
「………おっとこれは一体どういう状況なんだ俺には全然分からない(棒)」
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