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格の違いってやつを その①




「慣性範囲内及び触媒配列を再設定……は無理か。なら疑似モノポールに制御モジュール直結、シナプス配線の再構築、メタ運動野のパラメータ修正、伝達信号とアリアドネ・ネットを運動ルーチンに接続、全システムをオンライン状態に移行……」


 ランプの僅かな灯りを頼りに、俺は紙に魔石の組成式を書き続けた。


 制御用の魔石を一つ精製し、この採掘場にあるすべての機械をその制御用魔石でコントロールできるようにするためだ。


 バカ正直に機械の見回り点検なんて続けていたら、また死にかけてしまう。キナに余計な心配をかけるわけにもいかないし。


「基本は自動制御、異常事態が発生した場合のみ制御魔石が反応するようにすればいいか。となると、機械の魔石の組成をもう少し書き換える必要があるな……。魔石の容量が持ってくれると良いんだけど」


 これが上手くいけば、俺はこの部屋から出なくてもすべての機械を点検できるようになる。


 相変わらず部屋は凍えてしまいそうに寒いけれど、なんとか暖房器具さえ手に入れば、どんな風にでも改造できる。どんな安物の暖房だろうと俺の手にかかればあっという間に高性能品に早変わりだ。


 顔を上げると、窓から朝日が差し込んでいた。


 いつもより長い時間研究に没頭していた気がする。


 どうしてだろう……ああ、そうか。キナがまだ来ていないんだ。


 本当ならもうとっくにキナが朝食を届けに来てくれている時間だった。いつもはそのタイミングで休憩に入っていたんだけど。


 俺はボロ雑巾のようなコートを身に纏い、研究室の外に出た。


 なんだか嫌な予感がしたからだ。


 外は晴れていて、雪が降り積もった銀世界が辺り一面に広がっていた。


 この刺すような寒さが無ければいつまでも見ていられるくらい綺麗な景色だけど、今はそれどころじゃない。


 俺は周囲を見渡した――そして、見つけた。キナの乗っていたバイクが雪の中に転がっているのを。


 雪に足を取られながらバイクに駆け寄る。


 動力部の魔石はまだ温かかった。つまり、ついさっきまでキナがこれに載っていたということだ。


 不意に、キナの長い耳が俺の脳裏をよぎった。


 【第一級絶滅危惧種:エルフ】―――裏社会の人身売買マーケットでは、エルフは高値で取引されている、王宮にいた頃そんな話を聞いた気がする。


 本来ならエルフは魔法を使えるから簡単には捕まらない。だけどキナは――魔法が、使えない。


 バイクの周囲には数人の足跡があった。


 そしてその足跡は「第一管理室」の方へと続いていた。


 ……落ち着け、俺。状況を整理しろ。


 キナも誘って朝のお茶会……ってわけじゃないよな。だったらこの乱雑な足跡と倒れたバイクの説明がつかない。


 何らかの原因でキナがエルフだということが明るみに出て、マガイたちに攫われた――ってことだよな、これは。


 相手は複数人。対するこっちは一人。


 殴りこみに行って勝てるかどうか……いや。


 勝機はある。


 俺はキナのバイクから魔石を取り外し、一番近くにある採掘の機械へ向かった。





読んでいただきありがとうございます!


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