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ものすごいダイジェスト文章になってます。
二人は光の中で元に戻る条件を女神から聞かされた。
それはステラの闇落ちを阻止すること。
姉は虐げられず、姉妹関係を友好にすること。
それらをクリアしたら、元の世界に戻れるということだった。
エリはエリーとしてメイド、ケンはそのままケンとして庭師。
ステラのダメナン家に住み込みで働いている設定だ。
「さあ、頑張ってステラちゃんを救ってちょうだい!」
女神にばんばんと肩をたたかれると二人は意識を失った。
先に目覚めたのはエリことエリーだ。
四人部屋のメイド部屋で目覚める。ダブルベッドが二つ置かれた部屋はテーブルはなく、それぞれの服などを収納するクローゼットしかなかった。クローゼットというよりもロッカーという言い方のほうが正しいかもしれない。
作りは木製であるが、形はそのままロッカーであった。
鍵などはないので盗み放題である。
「エリー!なにぼさっとしているの。朝食食いっぱぐれるわよ」
同僚のメイド、キャロリンに急かされ、エリはメイド服に着替える。
下着は某天空の城のアニメでみたような古い形のブルマーだ。
黒いワンピースに白いエプロンを身につけ、髪を全部覆うような白い帽子を被って、キャロリンに続き部屋をでる。
食事を終えて、メイド長から説明を受け仕事にかかる。
エリはまず、ステラを探してみた。
桃色がかった銀色の髪に緑色の瞳のお人形のような少女だ。
両親は聡明な姉、イネスに期待していて、ステラは放置。
家庭教師もすぐにイネスと比較して、ステラはどんどん自信を失っていく。
エリはこれじゃだめだと、ステラを励まし続ける。
それに庭師のケンも加わり、ステラは自信を取り戻して行った。またエリは勇気をもってステラの父、ダメヤン家当主と話をしてステラの現状を知らせる。
まさか彼女を傷つけているとは知らず、当主とその妻はステラに対して態度を改めた。
「お兄ちゃんと呼んでもいい?」
「もちろんだ」
「ステラ。ケンは私のお、いえいえ、あの恋人なので好きにならないでね」
「大丈夫です。エリー。私の理想は、第二王子殿下、金髪に青い瞳の王子様なのです!こんな筋肉もりもりは好みではありません」
「そ、そう」
「なんかショックだな」
ステラは明るくなり、家の雰囲気も変わっていく。
そんな中、姉のイネスがじっとこちらをみていて、エリは思わず見返してしまった。するとイネスはふいっとどこかにいってしまう。
イネスは黒髪に紫色の美人だ。可愛いより綺麗という言い方が似合う美少女だった。
ステラとイネスの年の差は一歳。
「こんにちは。イネスお嬢様」
「は、話しかけないでちょうだい」
「そうですか……」
「うそ、私も仲間に入れて。本当はステラと一緒に遊びたかったのよ。勉強ばかりで嫌になるわ」
「そうですよね。じゃあ、一緒に遊びましょう」
そうしてイネスはステラを時間があると遊ぶようになった。
「お兄様と呼んでいいかしら?」
「いいけど。好きになったらダメだから。ケンは私の、お、恋人なんだから」
「当然ですわ。私の理想は第一王子殿下、白銀に氷のような瞳、鬼畜眼鏡タイプなのです!お兄様のような筋肉だるまは好みではありません」
「そ、そう」
これ、ものすごいデジャブ。
あ、ケンの反応も。
「そ、そうか。筋肉だるま」
「ケン。私はケンの筋肉で解決しようとするところとか大好きだからね」
「う、うん。ありがとう」
(あれフォローになっていない?)
ケンはなぜかショックをうけたままだ。
ステラとイネス姉妹の関係は良好。両親も片方に偏ることなく対応するようになった。
「お姉さま!大好き」
「私もよ。ステラ」
抱きしめあう二人の美しい姉妹。
エリとケンは空に向かって問う。
さあ、女神様。
二人は仲良し、ステラを救いました。
早く元の世界へ戻してください。
こっちの世界にきて三ヶ月ほど、二人はこの世界にも慣れ居心地よくは思っていた。けれども文明が恋しい。
水洗トイレ、食事も和食や和風洋食が恋しくなってきていた。
周りが白で満たされ、女神は告げる。
第二王子と第一王子のことをクリアしてから。
「は?」
二人は同時に聞き返す。
「拗らせ第二王子と第一王子の仲を取り持って」
しかし女神は淡々とそう告げる。
「エリー、ケン。まかせて、二人をお城へ連れて行ってあげるわ」
その場にいたイネスがまず声を上げた。
二人が異世界から来たことは伝えており、女神を見たイネスは冷静だった。
「あ、お茶会?」
「そうよ。ステラ」
ステラも冷静なイネスに触発され、パニックを起こすことなく落ち着いていた。
王子たちに会うべく、王主催の茶会に参加する姉妹にエリとケンはついていくことになった。侍女と侍従という設定で、ケンの大柄な体にあう服はなく、特注することになってしまった。
騎士のようなガタイがいい侍従は少し引かれてしまったが茶会は順調。
しかし、そこでハプニング。
いや、起こるべくイベントなのか。
第二王子がイネスを気に入ってしまった。
第二王子的に、実は兄である第一王子が気に入ってしまった相手と仲良くなれば、兄の関心を引けると思っただけ。
それに気がついたエリは第二王子の誤解を解き、二人の仲を取り持つ。
「僕の勘違いだったんですね。兄上は僕のことを好きなんですね」
「えっと、兄として弟の君のことは好きだな」
「よかった!」
これで解決。
あと、姉妹もそれぞれ好きな人と婚約を結び直してハッピーエンド。
「随分、早足ですけど、解決できたので元の世界に戻しましょう」
女神が現れ、エリとケンは一緒に元の世界へ帰る。女神は実は自身の世界で起きたことを小説として投稿していて、この物語も早速投稿されるようだ。
「うーん。作品タイトル、旦那と一緒だけど。旦那の意味はなかったわね」
「そう思うんだったら、ケンを異世界に飛ばすのはやめてくれたらよかったのに」
「そうだ。なんかはしょりまくりで、物語としては全然面白くないと思うぞ」
「そうね。今回は失敗だったわ。次の物語に期待しましょう」
「期待って。また婚約破棄させる気ですか?」
「そうよ。流行りでしょう?」
「妹を犠牲にするのはやめてください」
「……考えてみるわ。それじゃあ、ご協力ありがとう」
女神はすうっとパソコンの中に消えていく。
異世界転移の旅は、現実世界ではわずか一分ほどだった。
「……夢?」
「確かめて見ようぜ」
ケンはそう言って、パソコンに向かう。
『異世界転移』『旦那』『一緒』で検索すると「悪役の妹令嬢を救うため、旦那と一緒に異世界転移する。」のタイトルが引っかかる。
クリックすると、異世界転移した登場人物の名前だけが異なるが、後はすべて一緒。物語の終わりは二人が日本へ戻り、ステラたちが幸せに暮らすで終わっていた。
「ステラは第二王子と、イネスは第一王子と。よかったわね」
「そうだな」
夢のような話だが、投稿時間をみれば五分前。この物語を二人が事前に読んで、夢をみていたことはあり得ない。しかも二人が同じ夢を見るなんてこと、現実に起きるはずがない。
「異世界転移楽しかったね」
「うん。まあ、筋肉うけはよくなかったけど」
「ケン。気にしないで。私はケンのこと大好きだから」
「わかってる」
エリとケンは異世界転移前と変わらず、いつも通り仲良くキスをし合う。
これ以降、妹がざまあされる小説が減ったかと思えば、そうでもなく、エリはそこだけが少し残念だった。
(おしまい)
お読みいただきありがとうございます。
ちょっとしたショックなことがあり、やけくそで投稿してしまいました。
お目汚しになってしまいましたら、すみません。