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特許系エッセイシリーズ

今後20年を考えた時、上場可能なスタートアップを1社も輩出できない大学に未来は無い

スタートアップ。


 つい数年前まではさほど学業の場においても注目されるものではなく、コロナ禍の日本においては経済を含めたあらゆる環境下にて停滞感が漂い、未来を見据える事が全くできない状況であった。


 しかし、本当の意味でのイノベーションを目指した投資の成功により、今まさに注目されている存在こそがスタートアップである。


 ではなぜこのスタートアップが注目されるに至ったか少しふれておこう。


 一言で言えば内閣府や経産省が発表しているように、現時点において経済がある程度安定している世界の先進国においては、その経済成長を大きく支えているのは新興のスタートアップの面々であり、大企業の殆どはあの米国ですら新しい雇用等を殆ど生むことが出来ず、従来までの経済基盤を支える事しかできていないということがわかってきた。


 すなわち、大企業においてはこれまでの母体を維持する事はできても、その成長速度は鈍化してしまうという事である。


 スタートアップの面々はそれらとは別口に新たな雇用を生み、市場を確立させながら経済成長の新しい起爆剤として国家を根底から支える存在であることがわかってきたわけだ。


 そして、日本国においては従来より一部の大企業が「そんなスタートアップ国内にあるわけねえじゃろ」――みたいな話をしていたが、実態は大きく異なっていた。


 テック系で注目の国内スタートアップ企業は国策にすら影響を与え、「なんで彼らを見出すことが出来なかったんだ!」――なる状況が生じており、ここ最近では大企業とスタートアップの立場の変化や逆転現象などがニュースでも触れられるようになった。)


 重要なのはここからだ。


 これらの注目スタートアップは多くにおいて大学が関与しているか、あるいは大学発スタートアップであるという点が見過ごせない。


 それだけの力を持つ研究者や技術者を日本のアカデミーは抱えていたにも関わらず、暗い未来を切り開くための希望として手厚く保護しなかったのが大変悔やまれる。


 だからこそ、本エッセイを通して大学の経営サイドにいる人々は改めていろいろと考えて欲しい。


 まず最初に本題に入る前に触れておきたいことがあるので、その点について触れておこう。

 スタートアップに関係性のある話でもあるので、ここは触れておく必要性があるので是非読んでもらいたい。


 筆者は10年ほど前から、既に偏差値至上主義というのは崩壊していると考えていた。


 いわゆる高学歴の大学というのは、高学歴であっても、偏差値の上で互いに同列視されている大学が果たして本当に同等の環境を大学として保有しているかについて、非常に大きな疑念を抱いていた。


 これらの答えはもう出かけていると言っていい。

 実際には偏差値なんて今はもう殆ど役に立たん。


 指標としては殆ど役に立たない。(多少の参考にはなるかもだが)


 その理由のための論拠として下記のランキングを見て欲しい。

 https://www.meti.go.jp/policy/innovation_corp/start-ups/reiwa4_vb_cyousakekka_houkokusyo.pdf


 スタートアップはどうしても理系が強いため、理系を中心にスタートアップ起業数が増えるのは当然。


 しかし、しかしだ。

 偏差値と露骨に差あるでしょう?


 同じ偏差値ぐらいなはずなのに、起業してるスタートアップに凄く差があるでしょ?

 (補足しとくと、起業数よりも上場しているかどうかや、シリーズBなどの事業化に成功できているかの方が重要であるのだが、スタートアップにおいては起業数と上場や事業化は今のところ一定の推移で比例しているため、起業数が多ければそれなりに優秀なのだ)


 もちろんこれは大学側がスタートアップへの認識が甘いからってのもあるんだけど、それだけじゃない。(後述)


 自分、上記のランキングと大学に対する評価はほぼイコールなんですよ。


 自分だけじゃなくて昨今の大企業の人事関連においても似たような話してましたよ。(最近そういう場がありました)


 なんでそうなのかって簡単です。


 大学発スタートアップってのは3つの要素が嚙み合わないと生まれたないから。


 1つ、大学内に研究や起業のための施設や枠組みが充実し、予算配分も適切化されている。

 2つ、研究を行う第一人者たる優秀な教授や博士号を取得した研究者を抱えている。

 3つ、ハングリー精神の旺盛な気概ある学生が多数入学している。


 この3つがあって初めて大学発スタートアップというのは成立する。


 この3つのどれかが足りないとスタートアップ起業なんてできない。(授業等がある関係で大学発は教授だけでは成立しえない点は良く見過ごされる。それを支えてるのは多くの場合で学生や研究室の研究者たる院生や博士)


 その3つが揃っている大学は、今や大企業にとっても即戦力となりうる人材が学生として多く入学していると判断される。


 あわよくば所属していた研究室や研究者が保有していたノウハウもってな考えもあるそうだが、そうでなくてもそういった環境で育った学生は、即戦力として十分に評価していけるものなのだそうだ。


 実際、昨今においては偏差値の高い大学に入っただけでは簡単に大手への入社なんて出来ない。(各種ニュースや就職サイトでも触れられている通り)


 大学で何をしたか、何を成したか、それが重要だ。


 そして、何を成したかを満たす大学生においては、そもそもそれこそがスタートアップ起業だったりするわけであり、大企業においてはその人材欲しさに大学発スタートアップを買収して子会社化している実例すらある。(ようはその人が欲しいからライセンス契約ではなく企業自体を買収して子会社化したという事)


 つまり環境なんてもう大きく変わってきているし、いつまで偏差値とかいうよくわからん指標をベースに話をしてんだよって思うわけだ。(少なくとも企業目線では)


 ちなみに余談ながらこの話を知り合いを通して最近知り合った今年大学受験前の子供を抱える親御さんにしたら、親子共々すさまじい衝撃を受けたらしく、第一志望の大学が変わってしまったという事があった。(正直、人生を勝手に決めてしまうようで大変恐縮なのであるが、親御さん曰く将来について何も考えていなかったので衝撃的だったとの事)


 今本当に重要なのは、その大学が何の研究をしていて、どんな事ができて、自分はどういう存在へと成っていくかなわけであるが、大学によっては直接「こういう研究者や学生が欲しいんだ! こういう事を教えてやれる!」――というアピールすらしている状況。


 例えば表向き偏差値がそんなに高くなくても実際にはJAXAと密接に関係していて共同で人工衛星の開発を行っている大学なんかもあるわけだけど、他にも小型無人航空機や自動車など、実は共同研究が盛んな昨今においてはその大学に意外な魅力があったりする。(入学したら大手企業との共同研究の機会すらありえるという事)


 共同研究が盛んとなったのはここ10年ぐらいの話なんだけれども、今や共同研究はそのままスタートアップへと繋がるようになっているわけで、その大学が持つ価値や強みというのは所属する大学教授と、その教授の研究内容の価値、そしてその教授が研究を続けられる環境整備にあるといっていい。


 特にスタートアップ関連においては当初国立大の台頭が目立ったが、今や私立大も勢いが増す状況。


 そこにおいて偏差値の関係性から考えると明らかに顕著な差が生じているよね。

 もちろん、多くにおいては偏差値と乖離しない状態で、高学歴と称される大学は上に来ている。


 でも、同じ高学歴と称され、理系の大学なはずのいくつかの私立大は全く名前が出てこない。

 そしてそういう大学においてはニュースを見ると定員割れなどが叫ばれたりしている……


 もう学生もある程度は勘づいているって事だね。


 なので筆者は偏差値に変わる新たな指標について真面目に考えて欲しいと思ってる。


 第一にその大学に所属する教授の論文の引用率(特許への引用率を含む)や、それに関わる特許出願数、そしてそれらを活用したスタートアップ関連の起業数や上場比率、ライセンスやその他等々……


 以上を合算した数値にしたら多分間違いなくかなりの状況で下剋上が発生すると思う。


 そして、大企業は間違いなくそういう数値の方を重視する事になるだろうと思う。(実際独自にやってるかもしれない。今はAIでそういうのは簡単にそれっぽいデータを作れる時代だし)


 少なくてもランキング上位を見たら、筆者がいろいろ言いたくなる事がわかってもらえるよね。

 自分は特定の大学を貶したいわけではないが、一言述べるなら、ある大学とある大学は10年前から同列だと思ってなかった。


 偏差値上の同位は社会での同列ではないぞ。


 これ以上特に言う事はないけど、もし仮に本エッセイを見ている高校生がいるなら、受験をする前に何をしたいか胸に手をあてて一度冷静になってもらいたいと思う。


 特に理系はそう。


 偏差値ではなく、貴方がやりたい研究、学びたい研究・技術、そしてその研究者と関与する企業との兼ね合いをベースに志望校を決めるべき。


 マジで優秀な学生はいきなり1年生から大学生の身で即戦力で共同研究に携わるとかあります。(高校野球でいう夏の甲子園で1年でエース登板みたいなもの)


 冗談抜きでいきなり大企業で数十年研究開発していたチームに18歳という成人年齢に達したばかりの状態で大学サイドの立場から組み込まれることがありうる世界になってきてます。(世界の状況から言えば全然珍しいことではありません)


 高校や高校の先生方は自分の母校や仕事仲間の母校の様子を見る限り、正直言ってまだこの辺りがよくわかってない。


 高校生の子を持つ親御さんに関しては、是非そういう所も考えて欲しいし、調べて欲しい。

 もちろん、全て希望通りにならない事も念頭に入れた上で考えて欲しい。


 それぐらい、スタートアップには力があるし未来がある。


 例えば創薬関連の事例見たら20歳そこそこの学生が起業した創薬系スタートアップが100億円以上の金額で国外企業の大手製薬会社に買収されたりする世界ですよ?


 今年だけで東大発スタートアップとか創薬でいくつそういう話あったかわからない。

 日本円にして700億円オーバーのM&Aもあったよね。


 そんな金額動く世界に剥き出しの才能でもって立ち向かっていけるかもしれないのに、初任給30万ちょいの企業に就職するかどうするかを決めるために適当に4年間大学で過ごす意味なんてあるか?


 無いと思うが。


 自分はハッキリ言ってとっても羨ましいんですよ。

 自分が学生になった頃、世間ではスタートアップではなくベンチャーというくくりで起業だなんだと騒いでいた時期。


 これらは著名な諸先生方が論文等でもって批判している通り、起業数ばかりを指標にしてなんでもかんでも起業させたわけだから、粗製乱造の環境を生んだ。


 元々日本国というのは、粗製乱造が起きやすい国だ。


 例えば歴史的に明治時代には洒落にならない粗製乱造が起きた結果、意匠法の制定などに繋がったりしている。


 よくお宝鑑定とかの番組で専門家が「幕末~明治初頭にかけての美術品は大変贋作が多い」って話をするけども、これはそれまで藩と幕府が各地の工芸品を適切に管理していたところ、明治政府になってそれが崩壊して有田焼など著名な焼き物などを模倣した贋作を作ろうとする最悪の文化が生じたから。


 輸出産業は大変儲かるので、多少質が悪かろうとも金になるってんだから、そういう贋作が大量に発生して何が本物なのかわからなくなって国外での評判が揺らいだことがある。


 当時の時の政府はこれらに関して道府県に工芸品の同業組合の設立をさせながら道府県が管理するよう定めつつ、意匠法などを制定することで粗製乱造を抑えた歴史があるが、スタートアップについても似たような感じである。


 正直、IT系のスタートアップについては「こんなんスタートアップじゃねえよ。ただのITベンチャーだろ。コア技術も新鋭の仕組みもなくありきたりなサービス事業でIT系スタートアップ名乗んな!」――って言いたくなる既存のサービスの焼き直しみたいなスタートアップも目立つが、真面目にこういうのは全部ベンチャーって評価で排除してほしいぐらいだ。


 しかし、テック系を中心に「真新しい技術・技法でもって事業化する。それがスタートアップ」という概念でもってスタートアップとベンチャーを差別化し、スタートアップ中心の支援を行うという姿勢についてはとにかく評価している。


 その上で、大学が今後やるべき事についてこれから触れていきたい。


 まず、大学においてやるべき事は下記の通り。


 1.大学は学ぶための場であるが、そこばかりに注視して将来の大学運営のために資本主義に乗っ取った活動を行う事に対して制約を設け、足枷を嵌める一連の行為をやめる。(もうそんな事言ってられる時代じゃありません。大学も生徒たる次の現役世代は生きていけません)

 2.事業化の未来が無い安易な特許出願はやめる。(オープンクローズ戦略の考えから)

 3.安易な共同研究はリスクばかり生じるのでやらない。

 4.共同研究をやる場合は、特許出願を行うにあたって契約を結び、予め誓約書等を書かせる。大企業等に主導権は渡さない。(ただし、研究時において産学連携等で大企業が主導で行っている場合は別)

 5.研究施設への投資、研究費等については大学が出願した特許のライセンス等も活用して大学が大学独自に環境を構築できるようにしていく。

 6.大学側はスタートアップ起業のための支援体制を早急に構築し、予算を立てる。また、スタートアップはその性質から外部での活動は情報流出の危険性が伴うので大学キャンパス内に活動拠点を置かねばならないが、そのための各種施設等も用意する。

 7.大学側は諸所の研究や求める学生像を明確化し、母校の創設者の理念などに沿う形で入学する学生がその大学を選びやすい環境を構築する

 8.他大学において優秀な教授がいた時、その者が研究費等がなく困窮している場合においては、事業化の可能性のある研究であるならばヘッドハンティングも厭わない。(一部国立大が既にその動きを加速化させている)

 9.知財関連や経営関連においては、自らの大学内で完結できるようになることが好ましい。つまり研究室ばかりに着目するのではなく、自らを支える法務や知財の人材を自ら育てる事も視野に入れる。

10.大学というブランドそのものを構築し、それらを優秀なスタートアップに活用してもらうことで大学の周知著名性の向上を目指す。

11.事業化のためには各研究ごとに群点数法みたいなものを設け、短期間で事業化できるもの、長期研究が必要なもの、社会的意義などから事業化の目途は立たないが研究は必要不可欠であるものなどを仕分け、"それぞれの体制が維持できる"ように事業化できるもので収益性を担保し、支える。

12.前述の部分と類似するが、大学自体が収益化によって基金を設立し、優秀ながら学費を払う体力のない困窮状態にある学生を学費免除して入学させたり、学業に集中できるよう経済サポートを行う。


 大体こんな感じだろうか。


 それぞれ大まかに触れていくが、まず重要なのが未だに大学は学ぶ場で、学問は商売じゃないとか言ってる人らを排除してください。


 マジでね、未だにいるんだよ。


「アカデミアというのはこうだ!」――とかいう人。(最近肩身が狭いらしいけど)


 これはこれまでの大学教授達がどういう形で立場や利益を得てきたかに起因しているわけなんだけど、これまでは研究した内容などについて企業の人間や共同研究者が自由利用可能で、その代わりに確固たる地位や栄誉を与えて、その人となりを評価してきたという過去があって、それが原因。


 なんたら賞だのなんたら会議の所属会員だのは従来までは肩書になったし、それで立場を得て公演なりなんりさせてもらって収益化してなんとか研究費や生活費に充ててた。


 だけどさ、結果どうなったかって一部の組織は腐敗に腐敗してて大して論文も書かないしなんら特許出願もしてない奴らが実権握って、しかもそいつらが研究費とかの配分とか学会での立場決められちまうからカイジの漫画に出てきた、"一条が帝愛の会長から受けた仕打ち"みたいな……


 とても言葉では表せないパワハラとかが横行していて話にならんのよ。


 上に上がるためには雑用なりなんなりして相手の話に全てYESの意味でワンワン応答しながら既に現役としての立場をなんら持っていない人らに尻尾振らないといけなかったわけだ。


 もちろん、なんちゃら会議においては筆者と顔見知りな諸先生方も所属していて、この人たちは立派な現役世代(70超えてるが第一線での研究者)。


 全てが全てこうじゃないと言っておくけども、自分はカイジの一条が受けた仕打ちのシーン見るとマジで涙出てくるんですよ。


 自分が重なるから。


 一条は大卒じゃないけど、帝愛の会長が突然「最近スタートアップ投資が盛んだし、一条とかいうクソガキに任せてみるか」――みたいなことを言い出してスタートアップ投資関連で大成功するスピンオフとか原作という立場で書いてやりたいぐらいですよ。(書かせてもらえるならね。天変地異でも起きなければ無理だけど)


 一条じゃねえと出来ねえもんその話。

 一条だけが、スタートアップ関連の20年30年耐えてきた企業の技術者の話に共感できる。


 言い切れる。


 そんな事が万が一起きたら史実に基づいた話を聞きながら毎回涙いて共感する一条が描かれると思うけど、その後で冷静になって知財戦略とか冷静に定めてく話になると思う。


 ま、そこはどうでもいい。


 そういう環境が冗談抜きであった中で、スタートアップはそれらに対する明確な回答だ。


 なぜなら――


 「――お前らの話は聞かん!」

 「研究についてはこちらでどうにでもできる」

 「学会なんて後からどうにでもなるよな? 予算欲しいでしょ? うちらが学会支えてあげるよ――」


 こうなりうるからだ。


 もう、お前らの自由にはさせねえって、組織が解体しないなら形骸化しろって言える時代になってきたわけ。


 というか、なってきてんだよね。

 あまりにも酷いからそうならざるを得ないんだわ。


 今年の夏ぐらいから大学も「スタートアップ!」「スタートアップ!」「スタートアップ!」って叫んでるもの。


 わかってるんだよ自分達も。

 今の経営状況考えたらスタートアップに投資しない限り運営体制を維持できないという事を。


 そもそも従来まで与えられてきた栄誉も肩書も、世界でどれだけ役に立つのかという話にもなってきている。


 無論すべての研究が事業化できるわけじゃない。

 事業化できなくても継続せねばならない研究もある。


 だが、それらの研究を支えるための予算や人材確保のためには資本がいるでしょう?

 そのために事業化できる研究を活用するんです。


 その時においての注意点が2~4の部分だ。


 余り存じていない先生方が多いのでこの場で言わせてもらうが、特許ってのは本来「機密」あるいは「秘密」なんです。


 国家が国力でもって守るから、秘密をみんなに公開しようね?っていう制度なんです。

 だから国家が滅んだら「それは前の国の話で新しい国家は関係ねえから」ってできる。


 歴史上、ガチでやった国がお隣の大陸にあってね。(別作品で触れてます)

 つまり、公開にはリスクがあるという事を覚えて欲しい。


 巷ではオープンクローズ戦略なんて言われるが、そもそもオープンにする上でも吟味してほしい。


 その特許だけじゃ該当の技術は守れないのに、その技術について洗いざらい公開してしまう特許が少なくない。(登録されるのは請求項(クレーム)の部分なのに明細に詳細書きすぎ問題)


 特許の出願は事業化できる形で出願してください。

 特許法にもあると思いますが、特許法の第1条には「産業の発達のため」って書いてありますよね。


 ようは本来の特許とは資本主義たる国家が業のために、国力でもって一定期間技術を守り、第三者に悪用されないための制度です。(正確には公開・登録された出願なども後願に影響するので永久です)


 業のためにならない発明は本来登録しちゃいけないんだけど、特許庁はその発明が本当に事業化できるかできないかまでの判断はできません。(実際は違います。昨今の特許庁の支援事業を見る限りできてます。あまりも酷い状況なのか特許庁自体が支援に乗り出してる状況です。ただ、登録においてはそこまで吟味しませんし、公開の制度から考えたら登録せざるを得ないというジレンマに陥っているのではないかと推察しています)


 この辺りの戦略を立てるためには知財の専門家が必要です。

 それも、スタートアップ等に関与できうる、知財の専門家の中でもエースの中のエースの力が必要です。


 自分の仲間内では、知財専門家が1000人いたら10人いるかいないかって話が出るぐらい限られた人だけがそういう能力を持っています。


 今後は重視されるかもなので比率は変わるかもしれませんが、基本的に1/100ぐらいの確率ででしか出会えないぐらい知財戦略構築は難しい分野です。(そもそも弁理士に限って言えば意匠や商標専門家などもいるので少なくなってしまう)


 でもやっていかないと大企業に骨抜きにされて利用されるだけされてしまいます。


 これまでの共同研究って形で自由利用されて、企業関係者だけが高級車に乗って高級腕時計を身に着けての状況な中、大学側の研究者がズタボロの軽自動車で大学に通うなんてことがありましたが、こういうのをいつまでも許していたら日本が保ちません。


 彼ら大企業は新たな雇用を殆ど生みません。


 よって共同研究についても冷静にならないといけません。


 最近やたら増えた共同研究については、大学側が多数特許出願する体制を構築した結果生じたものです。


 大企業としては殆ど関与が無くても共同ってことにして、研究予算だけちょっと出して共同出願を画策しようとする事例も多数確認してます。(自分自身の目で現場を見てます)


 これもね、共同出願したら共同権利者たる大企業の同意や合意を得ないと他社にライセンス契約できないんですよ。(別途契約などを結んでなければ基本そうなるし、そういう契約に基づいて共同出願しているはずだ)


 なぜこうしているのかって基本大企業優位な立場をなんとしてでも構築したいから。


 上記の4~5の話ですが、自分は安易な共同研究はやめるか、その場合は予め出願するにあたっての条件を決めておいて欲しいと思ってます。


 仮に共同出願になっても「ライセンス契約についての主導権は大学側にある」ことを明確にする内容を盛り込んでください。


 内閣府とかが契約書のモデルケースを公表していますが、例えば「他社との実施許諾契約を行う場合、甲(大企業)はその件について乙(大学または大学発スタートアップ)が契約を行った場合に全てにおいて同意したとみなす」――なんて一文入れるとかね……


 実際にはこんな直接的表現はまず拒絶されてできないんですが、弁護士とかが作成を得意とする一休さん並の知恵働かせた文体として、大企業側を有利な立場にさせない方法などがあります。(弁護士はそういうのを得意としてます)


 あ、ちなみにこういう契約の話についてはすべて議事録残してください。

 録音とかはしといてください。

 契約文章の内容を意訳したり拡大解釈させないために合意時に口頭合意の内容を残してください。(訴訟対策)


 ともかく、共同研究時において相手側の立場が大きくない場合は主導権は渡さないでください。


 ここは互いにどれぐらいの立場を得ているかで話は変わるんですが、稀に大学側が殆ど関与してないのに大企業側が1%ぐらいライセンス料が支払われたら研究者の生活費の足しになるだろって共同出願したら、そこに第三社が目を付けて教授を懐柔して訴訟事案なんて事もあります。


 重要なのは見定める事、安易な共同研究はしないことです。

 共同研究自体は悪い事ではないので、そこは強く強調しておきます。


 あとついでにいえば事業化するあたりでその特許で得られる収益についても概算でいいので出しといて、安易に安価で買い取られないようにもしてほしい。


 実は自分が上記で書いたような形できちんとやってたら、特許化の後で大企業が悪知恵働かせて買い叩かれたなんて事案が結構出てる。(ガチで絶対に許さんぞ天の助の気分になりました)


 公正取引委員会からも警鐘が鳴らされてましたが、スタートアップのライセンス契約において買い叩こうとする事案がめっちゃ多い。


 創薬関連とか洒落にならない。


 ある事案は最終的に国外が500億以上で購入したんだけど、交渉時に国内製薬メーカーが提示した金額はその1/20だったなんて事があった。


 その時にその創薬スタートアップの経営者及び技術者に向けて大手企業の人間が話してた話をここに抜粋しとこうか。


「昨今、新たに誕生した製剤はその価格が大きく跳ね上がっているんですよ? 契約金額が当社の提示額であれば、患者の皆様に手が届くような価格で供給することができるんです。社会保険料も上がってきているのに現役世代を苦しませていいんですか?」――だってさ。


 いかにもな正論振りかざして懐柔しようとしやがって。

 企業名出してやろうかマジで。 


 あのさ、社会保険料が上がってる主原因は2つだよな。


 1つは抗体薬などで出遅れて日本は薬剤関連で輸入超過に陥ってる事。(つまり国外の薬ばかりになってる)

 もう1つが、湿布だのなんだの何でもかんでも保険適用して費用負担を下げているから、高齢化の進む環境下でそれらが大きな負担となっている事。(ここは見直しが図られてるが、いい加減にしろって言われ始めてる)


 これら2つをどうにかするだけで10兆円規模で削減できるんだよ。


 たかが薬の値段がライセンス契約に伴って数百円上がろうが、大した額じゃない。

 それらに保険適用された場合に負担となってのしかかるのは事実だが、論理のすり替えも甚だしい。


 これXで言おうか迷ったけど、この場で言わせてもらおう。


 そんな姑息な真似するより、貴方方が500億で購入して、その創薬に関わったスタートアップが新しく研究所でもこさえて雇用を新たに確保した方が結果的に現役世代は助かる。(絶対に若い人たちが集まってくるから。というか、かつてはそうやって今の大手製薬メーカーへとなっていった過去があるはずだ)


 同じ理解があるから、創薬系でのM&Aで勢いづいてるのが新興の創薬スタートアップ上がりの企業達なわけだ。


 彼らは成長の途上にあるから、金に糸目をつけずにバンバン買い占めてく。

 正直言ってバブルになってんじゃないのって言いたくなるぐらいおかしな金額なのは認める。


 が、結果権利奪われて特定の分野の薬作るのにライセンス料を払わざるを得なくなってさらにバカ高い金額で提供するようになったりすることがあるから、正直意味ないし考え直してほしいよ。


 こういう話は創薬系に限らない。


 適正金額を出せ。

 出せないなら素直に別の方法を考えるか、どうにかしろ。


 日本の新たな雇用の芽を潰すな。


 やるんだったら、AIとかで簡単に算出できるそれらのスタートアップが生み出す雇用需要を自社で担保してからにしてくれ。


 出来ないから立場逆転してきてんだろ?


 新たな新規開発も継続して行える優秀な大企業の背後に、売り上げと収益だけで新しいものを何も生み出せなくて、新しいものを生み出す奴らから将来も名誉も資本も、雇用の可能性も奪って買い叩こうとしてんだろ?


 筆者は公正取引委員会がそれら一連の企業の公開を迫っているが、まー噂じゃいくつも聞いてますよ。


「あの企業が!?」――って反転アンチになった企業すらある。


 やめろそれ。

 未だにアカデミーはどうたらこうたら言ってる奴ら共に黙っててくれ。


 あんたらは法人として日本をどうにかできない。

 現状維持しかできない。

 現状維持じゃ日本はどうにもならない。


 わかったら、黙って現状維持だけしてろ。


 大学や大学発スタートアップはそれに飲まれるな。

 立場は、発明者が上だ。


 そして大学がやるべきは6~12にまたがってまとめて書いた。

 これ以上書くことも無いかなと思う。


 最後に、大学はもう独立した立場でもって、研究者と研究を抱えて、自らでもって自らを支える時代に入ってきていると思った方がいい。


 定員割れしたからって簡単に自治体を頼るな。

 自治体は銀行じゃない。


 むしろ逆だよ。

 貴方方がスタートアップで雇用を生んで自治体を助けるんだよ。

 逆なんだよ立場が。


 自治体は自治体でサポートはできるが、自治体におんぶ抱っこでは自治体ごと潰れるだけ。


 ランキングの様子を見てみて欲しい。

 国立大において意外な地域でかなりの数のスタートアップ起業数の大学があると思う。


 これらの中では冗談抜きで地元地域で雇用を生んで、上場にまで成功して凄い事になってたりするところもある。(基本的にスタートアップは地元で起業します)


 自分は二輪でとある地域に向かった時、とんでもない辺境なのにマンションと大きな保育園と学校があるのを目にしたことがあるのだが、その場所はスタートアップ企業が上場したことで一気に移住者が増えてそのような事になっていた。(ちょっと諸事情から公開できないが、調べればすぐ見つかると思う)


 村おこしや町おこしは地域ブランドだけが担うわけじゃない。

 地方創生は温泉などの観光地や工芸品だけで成立するわけじゃない。


 一次産業の農業などでもスタートアップは起こりうる。


 そういうのも総合的に考慮して、地方の大学も地方だからとか言って諦めないで欲しい。

 一例を出せば高知や徳島が割と上位に位置しているのとか、ちゃんと見て欲しい。


 上京することだけが全てじゃない。


 大学は大学で地元の若者だけじゃなく、俺たちが地方から生徒を呼び込むんだぐらいの勢いを持ってほしい。


 それを可能とするのは、スタートアップ。


 スタートアップには知財とビジネスの専門家が必要不可欠だけど、必要に応じて外部から専門家を呼んだりしながらやってほしい。


 ただし、注意点として、金融関連のコンサル(またはコンサル上がりのキャピタリスト)とかは全く役に立たないので、スタートアップで実績を出しているビジネスの専門家をきちんと見つけて欲しい。


 スタートアップに関して厳しい事言いますが、銀行関連のコンサル(またはコンサル上がりのキャピタリスト)はマジで役に立たんぞ。

 多分銀行関連のVCもジレンマ抱えてるからそういう経産省とか内閣府とかの補助事業とかに参入してどうにかしようとしてるけど、ビジネスの専門家は方角を見定める立場なんで、貴方方が誤った方角示したら取り返しがつかない事になる。


 悪いけど、きちんとした目標立てられない人は要らない。

 今まさに挽回している途上だとは思うけど、金の話ばっかしてスタートアップの動きを阻害するならVCなんてやらんでいい。


 そういうのばっかでゲンナリする。(自分、現場みてます)


 この金額どうなんですかじゃないんだよ。

 貴方方が将来の収益化の状況を予測して出資金額を決めるの。

 限られた情報から将来性見出して貴方方が導くの。


 相手が求める金額の適正化について難癖付けるのは仕事じゃねーの。

 なんでいちいち謎に出し渋って経営に難癖出してくんだよ。

 VCとしてやってんのは銀行融資じゃねえっつーの。


 本物のビジネスの専門家は「あーこの事業モデルなら、3年後にはマネタイズできて年間の売り上げ規模はこの金額いけそうですね。現在の状況どうなってます? モノは出来上がってますか? あと何社ぐらいと契約持ち上がってます? 契約内容大丈夫ですか? それと、うちいくつか大手の仲介できますよ。なんなら自分営業やりましょうか。例えば〇〇社との契約とったら貴社が目指す調達金額ぐらいは余裕で出資できますんで。あそこのシェア〇〇%ですからね。もちろん共同出願みたいな形に安易にさせません。顧問弁理士にしっかりやってもらいますから」――みたいな話するのに、全然違うもんな。(一例だが、本物は話の出だしから内容が違う)


 この辺りも大学及び大学発スタートアップには見極めて欲しいところ。


 というか、VC関連は多くのVCの構成員が凄くまともでしっかりしてるんだけど、一部おかしなコンサルもどきがVCやってる所あるよね?


 ここちょっと法規制できないか。


 もちろん将来は変わってくかもしれんけど、儲かるって話だけ先行してやってんのか一部変なのが混じってるのが凄く気になる。


 スタートアップの魅力は地に足のついた新鋭技術と、それに対する未来への天望が魅力であって、それをどう事業化するかが重要なわけだろう。


 大企業も一部の変なコンサル集団がやってるVCも、そこちゃんと理解してくれないか。

 今がよければとか、自分の儲けとかさ……スタートアップというのは、そういう低次元のものじゃないんだ。


 スタートアップなんだよ。

 ベンチャーじゃない。


 だから政府が10兆円規模に予算規模を拡大しようなんて賭けに出てるんでしょうが。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 書いた後に気づいたため、10.における大学のブランド化っていう部分について補足。


 ライセンス契約の考え方においては必ずしも有償とする必要性はない。


 例えば医療分野の特許においては米国などで施術を特許化する事が可能であるが(日本では不可能)、こういう特許を取得していた時、ライセンスは無償だけど所定の研修を受講した者にライセンスを与えるというような方法があり、そういう時に大学自体のブランド力の構築を実現化できる。


 国外で登録して国外から優秀な医者を国内に引っ張ってくるみたいな事も出来るようになるという事。


 その時に〇〇という治療法は〇〇大学の認定を受けた者が施術可能ですとすれば、施術関係でジレンマに陥りやすい質の維持が可能となるだけでなく、多方面においてブランド力のアピールとなる。


 一般論から考えて、患者においても「当院では△△の医療器具を導入した〇〇の施術が可能です」よりも「当院は〇〇医科大学での研修を受けて医師が認定を受けており、〇〇の施術が可能です」の方が、よりその病院を信用するよね?


 同時にその話を見た、あるいは施術してもらった人はその大学に注目する事になるよね?


 医療分野での研究者はこういう出会いによって医学の道に進むケースが多々あることはその道の専門家ならご存じであるはず。


 自分は大阪大学や順天堂大学なんかはそういう方向性にもっと挑戦していいんじゃないかと思っている。(個人的に今のところそういう話を聞いていないので。もしそういう事にも挑戦されているなら失礼致しました)

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