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第五話:一家団欒は痴漢電車のあとに

 去年の夢を見た。


 多分先輩と海に行く途中の出来事だ。

 ああ、そういえば高藤 美咲と僕が出会ったのはあのときだったな。あの電車の中…… いま現在から振り返ってもわかり辛そうなので、


 はい、回想スタート。



 真夏日だった。朝早くから僕と先輩は荷物を引っ提げて海に行く蒸し暑い電車の中に居た。


 そのうち「あ」 と、混雑する電車の中で先輩が小さく声を挙げた。

「どうした?」 僕が訊ねると先輩は「あれ」 僕らから4、5人を隔てたドア近くに居る女の子を指さした。その後ろにピッタリとくっついて中年ぐらいの男がいる。


 どうやら、痴漢らしい。


「許せないね……」 先輩が呟く。

「そうですね」 相槌を打ったときには僕はもう人混みを掻き分け始めていた。


「次、降りるんで ちょっとすいません」


 僕は無理矢理そいつと女の子のあいだに割って入った。次に開くのは向かいのドアなのは知ってるけど、こういうのは相手の気持ちを崩すのが重要なのであり文句の中身などなんでもいいのだ。案の定、その男は僕から離れて人混みに消えた。


「大丈夫、もういないよ」 とだけ言って僕は先輩のほうへ戻った。これで痴漢プレイとかなら僕はとんだ道化者だなぁとなんとなく考えて、あの瞳に浮かんだ薄い水幕は演技ではないと思った。


 「惚れ直したぜっ!」


 先輩は上機嫌だった。



 高藤はそのとき僕の顔を見ていないと思ってたんだけど、2年のクラス替えで同じクラスになったときハッとした表情になった、……らしい。それを目撃したのは僕じゃなく北川だからな。

 そのあと散々「お前ら知り合いか?!」と北川に問い詰められ僕は苦い笑みを浮かべるしかなかった。


 詳細を語って気持ちいいことでは、決してないからね。


 男子の後ろのほうである僕と女子の中間である高藤はあいうえお順に並べられた最初の席が隣で、彼女が教科書を忘れて僕に見せてくれと机を引っ付けたのがまともに話した一番初めだったかな。


「誰かに……話した?」 小声で彼女は言った。


「なんのこと?」 僕は全力で惚 (とぼ) けて見せた。

 そういえばこういうとき完全に忘れた振る舞いが出来ることが僕の長所だと以前に先輩が言ってたな。人の汚点を視界に入れない。例えば先輩が病的なアニメオタクであることとか (汚点と取るかは人それぞれだけど)


「……なんでもない」 高藤は伏し目がちに言った。その授業が終わってから「高藤さんって三島くんと友達だったの!?」とクラス替え直後で話題を模索中の女子の数人に包囲された。高藤はどうしていいのかわからないといった表情なので、僕は高藤に「話し、合わせて」と囁いて「そうなんだ 小学校が同じでね」、堂々とウソをついた。





「……なつかしい、ってほど昔のことじゃないよな」


 回想を終了した僕は今日が日曜日であったことを思い出して時計を見た。


「……ああ もうこんな時間か」


 1階に降りて和室に向かう。丁度四人分の飲み物を持った夜月がリビングから出てきたところだった。


「遅いよ、太陽 とーさん待ちくたびれてるよー」


「ごめんごめん 始めようか」







「三暗刻、対々、發、南、立直、一発、裏は…… 乗らずか」


 直撃を受けた白夜が目を白黒させてる。6000差で白夜がトップだったからな。さっきまでは。


「ツモだったら四暗刻だったんだけどな」


 僕は不敵っぽい笑みを浮かべて点棒を受け取る。18000を渡されて「親だよ」と簡潔にあと6000を請求した。

 ちなみにロン牌は南だ。既に一枚切られてるし僕の捨て牌はパッと見てタンヤオに見えないこともないのでリータンピンドラ1あたりに見えたのだろう。

 南はもう場に一枚切れてるし白夜のミスとは言い難い。単純に僕にツキがあった。



 ……これが三島家の主な一家団欒の光景である。ちなみに薫はルールを覚えてないので僕の後ろでソラと遊んでいる。


 いまのがオーラスだったのでトップは僕、2位は日和、夜月が3位で白夜がビリで半荘が終わった。


「太陽、もう半荘まわさないか?」


 このところ負けが続いてる白夜が言う。何故か僕、オーラスに強いんだよな。こないだは4巡目ぐらいに混一色、白、一盃口で北単騎の頭待ちで立直をかけて日和が溢した。

 そのときも白夜がトップでそれで逆転したんだっけ?


「……夕御飯が焼き肉で白夜が払うならいいよ」


 白夜は唸った。僕は席を発つ。夜月と日和がクスクス笑ってる。


「……わかった やろう、その代わり俺がトップを取ったらなしだ」


 意を決したように白夜が言って、一時間と少ししたぐらいに


「七対子、混老頭、立直、ツモ、ドラ2」


 僕は牌を倒した。


 白夜はついに悲鳴を挙げた。



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