第四話:メイドの土産ってカタカナで書いてみた
高藤は次の月曜日と火曜日を休みLHR (ロングホームルーム) のある水曜にやっと学校に来た。
そして無言で僕の横っ面に一撃を加え (こう書くと平手のように聴こえるがしっかり拳を握っていた) 颯爽と自分の席へ去って行った。一体なんだって言うんだ……?
昼休みが終わって6限目までは特に何事もなく、僕は始業のチャイムがなったころには僕は眠り転けていた。しばらくして薫に肩を叩かれた。
ああ、そうか 僕は重い瞼を抉じ開けて席を立った。教壇に向かい、欠伸を1つしてから言う。
「文化祭なにやるかだけど──「はいはーい メイド喫茶とかどう?」
「……高藤がやると冥土喫茶になりそうだけどな」
僕は黒板に『冥土』という字を書いた。この小説がバトルモノなら背後に黒いオーラが立ち上ってるであろう視線で高藤に睨み付けられた。
こっから→ ドM (向井 守) なら悦に浸りそうなモノだけどあいにく僕にはその気はないので気付かないフリをしといた。
というかなんだろう。こーいう言葉遊びって小説とかの中ではよく見るけど登場人物達は発音の違いだけでちゃんと気付けるのかな? あいつらエスパーじゃね?
あと黒板の隅に『エスパー (スペシャルパーマ) 』って書いたやつ出てこい。 (推定時刻は昨日の放課後)
どうでもいいけど推定時刻だけだとスゴく違和感があるなぁ。前に付くのは“死亡”なのに。
……ダメだ。際限がない。脳内トリップのスイッチをOFFにしよう。←ここまで約3秒
ちなみに僕は学級委員である。なぜか推薦で満場一致で可決された。“物怖じしないから”というのがその理由だったが虐めの一環ではないだろうか?、と最初に僕を推薦したのが高藤だから邪推する。
左隣の今井 薫はやる気0で生徒会に提出する紙の裏に何かを描き描きしてる。
こいつも学級委員なのだが、僕が虐めにあった直後にスッ…… と立候補した。一番後ろの席とはいえ教師と僕以外誰も彼女が手を挙げたことに気付かなかったのはどういうことだろう?
あとそのあとに高藤に殴られたのはなんでだ?
……スイッチがOFFに成りきらない。なんとか現実に焦点を戻す。
「他に何か意見はありますか?」
挙手はない。ことなかれ主義者だらけの我がクラスは冥土 (あえてこの漢字) 喫茶は遠慮したくても堂々と自分の意見を言い張る猛者は居ないらしい。というかそうでない女子数名が冥土喫茶に同調してはしゃいでやがる……
さて、どうしたモノか。
「アイスクリーム屋かなんかどうかな?」
学級委員の権限で勝手に無難なモノを書き加えてみた。冥土喫茶一択なんて紛れもない死亡フラグだ。自分で提案したくせに過半数で可決したら「あんなの着れるか!」と、僕が高藤に消されるパターンだ。間違いない。
そして投票が始まって、
アイスクリーム屋 10票
冥土喫茶 26票
…………冥土喫茶、圧勝
男子19名の中で僕以外の全員が冥土喫茶、女子17名中で悪乗りした8名が冥土喫茶に入れた。
ていうか提案者の高藤はアイスクリームの方に入れてる。そして男子、お前ら絶対女子のメイド服姿を見たいだけだろ?!
「というわけでうちのクラスの出し物は冥土 (←大事) 喫茶に決まりました……」
無駄に盛大な拍手が主に男子から巻き起こった。
「とはいえ」
だけど僕はそういった雰囲気に水を注すのが得意中の得意なのであった。
「レンタルの冥土服 (葬式みたいだ) ですらお金がかかります その他にも飲食物も用意する必要があるので文化祭の予算額では足りない可能性が高いです
会計とよく相談した上で不可能であればその場合は繰り上げで「あ うちのバイト先で多分メイド服、借してくれるよ」
……おい、空気嫁。
「カラオケ屋なんだけど滅多に出ないし店長の趣味で4、5着あって使ってないんだよね 文化祭の1〜2日程度なら多分借りれると思う」
……えーっと、誰か僕を助けてくれる人?
教室を見渡すが誰も僕の視線には答えてくれない。教師さえ日和見である。というか微妙にニヤニヤしている。まさかこのバカオヤジ、「女子高生のメイド服もえー」とか考えてんじゃないだろうな……? おい、どうなんだ? 神代 葉月
冗談じゃない。客を高藤が皆殺しにしてほんとに冥土喫茶に早変わりするのが目に見えている。
救援を求めて薫を見るが何故かご満悦そうな表情で、
「…………」
メイド服姿の、僕らしき生き物が紙の裏側に描かれていた。
……何の拷問だ? この状況。
何か打開策を打ち出すために舌を回そうとした僕を無情にも終業のチャイムが遮った。
……………はぁ
放課後、僕は高藤に呼び止められた。ほとんど全員が帰ってから高藤が握り締めた僕の制服の袖を放す。ちなみに残ってるのは今井と芦川っていう特に特徴のない女子。
僕はキラーT (たかとう) 細胞の存在を確信している。彼女はおそらく突然変異種なのだ。そうでなければただのクラスメイトに対してここまで理不尽かつ凶暴な存在になれるはずがない。
「なんでメイド喫茶が可決するのよ?!」
と、予期した通り彼女は僕を蹴って来た。当然予測していたのだから僕はそれを華麗に避け、られなかった。鞭の如くしなる腰の入った蹴りが僕の尻に鮮やかなまでに直撃しました。あまりのことにわたしはとてもおどろきました、まる
……まあ冗談じゃなく3mほど身体がその場で飛び上がった気がした。自分で提案したんだろ、諸々の文句はその一閃で綺麗に僕の語彙能力から消し飛んで心の底で1バウンドして砕けた。心とか骨とかいろんなモノが折れて僕はその場にへたれこんだ。
いや 僕だしね、彼みたいに強くないのだよ。僕は。
……“彼”ならどうしただろうか。
「暴力反対……」
とりあえず僕は涙目でそう訴えてみることにした。しかしキラーT細胞 (そういえば某漫画でグ〇メ細胞とかあったな) を有する“暴君 (タイラントとルビを打ってみる) ”高藤には 効果がないようだ
……ゴーストタイプなのは今井のほうだった気がするんだけど。
キラーT細胞 (もしかしたら捕食して進化したりするのかな? こわっ) の力を存分に発揮する高藤は細菌扱いである僕に2撃目を加えようと踵を振り上げて、
……高藤さん、パンツ丸見えです。
急激に顔を真っ赤に染めてスカートごと足をはたき落とした。踵は僕の顔の数cm横に落ちた。地面が陥没してる。恐るべし、キラーT細胞……
とりあえず攻撃は止ん「めごっぽ」頬骨に拳が降り下ろされた。
僕の奇声についてはスルーを推奨する。
高藤はそのまま紅潮した頬を維持しながら教室の外へと逃げて行った。
僕らの様子に芦川さんが目を丸くして、薫が本から目線を上げて小さく笑っていた。
文化祭、どうなるのかねぇ……?




