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第一話:望んだ普遍は影として



 時々僕は夢を見る。それは『平凡に生きれなかったボク』の夢。

 6限目を寝て過ごした僕は半ば呆れながら目を覚ました。最近3度に1回は僕は『彼』の夢を見てる気がする。


 少しだけ“彼”の話をすると“彼”は殺人犯だ。自分の両親を殺した。そしてそのことを忘れていた。



 僕と夢の中の“彼”の共通点は『三島 太陽』という名前、高校2年であること。実は学力テストでいっつも学年一位なのを隠してること、大まかに言ってそれぐらいだ。


 他の人にしても夢の中ではちょっと危ない人の高藤 美咲はいろんな意味で明るい子だし、幽霊の今井 薫は美術部所属で絵と写真と本が好きな落ち着いた感じの普通の女の子。影が薄い、ってよく言われてるから印象的にはたしかに幽霊かもしれないけど。

 ……北川だけ夢の中と外で特に変化がないのはなんでだろう。不思議だ。


 と言うわけでこのお話がごく普通の学園物であり「空から美少女が降ってきた!」の類いのファンタジー類ではないことをここに表明する。


「おーい、ミッシー」と高藤が自分の席から僕を呼ぶ。


「僕は髭のおじさんを背中に乗せて徘徊する趣味はないんだけど」


 遠回しにアダ名を拒否したみたが高藤は面倒臭そうに手を振っただけだった。ふむ、待遇の改善を要求したい。


「このあたしに勉強を教えさせてあげよう!」


 自称美少女は数学の教科書を僕の前に突き出す。そういえばもうすぐテストだ。僕はまあ普段通りやるだけだけど。


「……、緑の恐竜扱いしてる人間に勉強を教わるなんて屈辱だと思わない?」


「全然」


 ……だいたいみっしーってなんだろ。某緑の恐竜じゃなかったとすれば……密使? なんかのスパイか? 僕は。残念ながら日本に秘密諜報部はないぞ? 外国人だって毎日テロのことばっかり考えて生活するほどひまではないのだ。


「ほれほれ、さっさと行くわよー」

「ぐぇっ」


 首根っこをひっつかまれズルズルと引き摺られる。屈辱感は向井 守という『ドM』がアダ名の男子生徒から羨ましそうな視線を向けられたのでそちらにお裾分けしとこう。

 ちなみにアダ名の由来はイニシャルがM・Mだから。昨年にDM (ダブルエル)を経てめでたくドMに昇華したらしい。閑話休題。


 脳内電波の放送を終了して現実に目を向けてみる。


 廊下を無気力にズルズルする僕と、

 廊下を活力的にテキパキ歩く高藤。


 つーか冷静に考えるといくら僕が痩せ型な小柄なほうだからって男1人引き摺れるってすごいなぁ、あ うちの学校の廊下がキレイだから摩擦が少ないのかな。自己完結。


 ……あれ? そういえばこの方向って。僕は高藤を見た。具体的には首を上に向けて高藤を目線の真上にする形で。これを描写しないと単に振り返っただけと勘違いして尻を直視する形になると思い込む読者が居るだろう。間違いない。


「高藤さん高藤さん、これはどちらに向かってらっしゃるんですか?」


「ん? 図書室だけど」


 あからさまに僕は顔を青くした。だって図書室には、 ガすンッ 抵抗する時間もなく室内に投げ込まれる。高藤、ほんとに力強いよなぁ じゃなくて、だ。


 古い本独特の匂いが鼻を突くそこには


「タイヨー?」


 ……今井 薫がいた。思いがけない僕の登場に首を傾げている。


「こんにちは」 首の傾げ方が (チン) パンジーみたいで素敵だね。とか、とち狂ったことを吐こうかと思ったけど流石に辞めておく。電波を脳内で止まらせることが出来ないやつが世間一般から異常者と呼ばれることになるのだから。


「あれ? 薫ちゃんってミッシーのこと下の名前で呼ぶほど親しかったんだ」 と、もう1人。なぜか肩をいからせながら首を傾げる暴君、高藤が図書室に踏み込む。『入る』、じゃなくて『踏み込む』が正しい。


「いや、そんなにだよ」と言う僕にあからさまに「お前に訊いてねーよ」的な視線を突き刺してくる。


「どこで仲良くなったの?」 むしろなんでお前は僕のことを妙なアダ名で呼ぶんだ。


 つーかなんでお前は怒ってるんだ……? 怒る権利があるのはむしろ僕じゃないのか? 背中が髭のおじさんに乗られた跡みたいに汚れまくってるんだけど。


 今井は一度本に目を落としたあと不思議そうに僕を見て、それから高藤を見てポツリと一言。


「彼女さん……?」


「違うよ」←即答。


 ……あれ、高藤さん? どうして僕の後ろに回って、あの僕の関節はそれ以上そっちには曲がらな「ぎゃあっ?!」


「ええ、彼女じゃなくてただの友達ですわスワスワ」

「ただの友達はふつう関節キメなギャっ」


 殺伐とした僕らを横目になぜか安堵っぽい息を吐く今井。そのリアクション、致命的に間違ってると思うんだけど……


「それで、あなたたちってどういう関係?」


 改めて高藤が言う。


 僕は頑張って痛みを堪えながら「余計なことは言うなよ」的なニュアンスを込めて今井に目配せする。


 今井は軽く頷いて、


「ドーセイしてるだけだよ」


 …………………


 あの、高藤さん。その凶悪な笑みはなんでしょうか?


「不純異性交友は校則違反よねェー」


 あっ、案外落ち着いた一言で「ぎぃぁぁぁあああっ?!?!」


 折れた。ぜぇったい折れた。


「ちょっと待て順を追って話そう! 話せばわかるっっ」


 僕の必死の叫び声に高藤は少し手を緩めて、


「言い訳するの……? 『あんなこと』したのに」


 待て待て待て、今井。なぜそんな大幅な語弊を含んだ言い方をする!? お前が言ってるのは昨日お前が猫の遊び相手をしていて夕飯食べに降りて来ないから僕が猫を取り上げたことだろ。


「ヘェ、『どんなこと』したのかしらぁ? タイヨーくんはっ」


 メキョっていった。いま関節がメキョ!っていった。


「あのね、タイヨーはひどいんだよ 嫌がる私に無理矢理ね」


 だからお前の言い方には語弊「がぁぁっ!!?」


 コツコツと足音が響いてきた。薫が近づいてきたのかと思ったけど既に全泣きの僕には顔を上げる余裕はない。

 そしたら高藤がグィッ、っと僕の身体を引っ張りあげてそのせいでほぼ耳元で。



「静かにしろォッ!」


 音の爆弾が耳元で破裂した。すっかり存在を忘れていたは司書の先生の怒鳴り声。いまので鼓膜が昇天なさったんじゃないだろうか。


 そのまま僕らは図書室を閉め出されたのだった。

 ……微妙な三角形を保ったまま。


 まだイベントの選択肢も出てない初回なのになんで僕はフルボッコにされてるんだろうか? 設定を考えた筆者を呪ってみた。




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