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第八十三話

 重いまぶたをこすり、開ける。


 サンサンと日が照っていてすっかり昼だ。寝過ごしてしまった。


「うーん……むにゃむにゃ」


 いつもの寝起きのように、女の子の胸元から顔を上げる。


 最近はお嫁さんがガンガン増えてきて、毎日のように代わる代わる夜伽をしているのだ。嫁さん300人くらいいる。えーっと? 昨日の夜の相手は誰だったっけ……?


 この産毛(うぶげ)の色は白人っ娘か。スウェーデンのヴァルキュリャ隊の誰かかな。


 かなり大きいサイズの胸元。メートル超えだ。


「ふむふむ」


 スタイルがいい子ばかりだけれど、その中でも飛び抜けている。味も見ておこう。


「んぐ……っ」


 と、可愛らしい声をあげている。新人さんかな? まだ慣れていない感じが可愛いネ。


 それにしても大きな体。かなり筋肉質だけど柔らかさもある。背が高くて非常に好みだ。こんな子、ウチにいたっけ?


 ぎゅーーーーっ♥


 と抱きしめて、愛情表現完了っと。まんじりともせず愛情受け止められて偉い。最近の子はマナーが出来ているなあ。


「はぁー……おはよー……気持ちいいー朝だなぁー」

「っ、ふ……ぐっ……♥ くぅ、いつまで抱きしめて……っ」

「よしよし、いい子いい子」


 とってもいい子だね。相性も抜群である。


「ごめんねー、なんか寝ちゃっててさ。えーっと? お名前はなんて――……お?」


 長めの抱擁の後。


 恥ずかしいのか背けている横顔を、クイッと顎からこちらに向けると。


 そこに居たのはゼタ・ミーゼスその人であった。


 アメリカ最強。世界最強。


 一度拳を振るえば俺の胴体ごと消し飛ばせる女(実績二回あり)。


「や、や、やっべぇ……!」


 そんな女相手に、寝ている隙にやることやっちまった。


 なんでコイツ脱いで、俺と折り重なるように……あ、思い出してきた。そうだ、ここ家じゃないわ。


 『鏡の竜』を討ち取った俺たちは、そのまま吹き飛ばされた。そんで、ここは無人島か何かか? 砂浜だ。どこぞの島に漂流したってわけか。


 ボス撃破の衝撃波で服や装備は全てちぎれ飛んでいる。そんで意識が朦朧としたまま、二人で折り重なって……。


「ちょうやべえ。んー、これ誤魔化せるかな……?」


 いや、無理か。子作りオールOKのお嫁さんだと思って、ウトウトしながらやること済ませちまったし。


 どうしたもんかとゼタの寝顔を眺めていると。


 長い、黄金のまつ毛がキラキラと日光で輝いている。つまり動いている。


 まぶたは微かに開き、こちらをうかがっている。次に何をされるか、不安と期待の入り混じった瞳。


 起きてんじゃねえかねぇかこのアマ(笑)


 ではいつから起きていたのかと、色々と察しながら俺は()()の観察を続ける。


「綺麗だなー。いい女だなー」

「……っ」

「けどうっかり寝ぼけながら抱いちゃって、起きたら怒られるかなー」

「……」

「そうだ! 今のうちに徹底的にマーキングして、俺の女にしちゃおう!」

「な……っ!」

「脳や腹がぶっ飛ぶくらいに愛して、ゼタちゃん起きても怒られないようにしよーっと。もう少しスヤスヤしてろよー」

「は……っ♥ は……♥ っ」

「まずは色んなとこに魔力ぶち流してみよっか」

「まッ待て貴様――……あ゛!♥」


……

…………

………………


「おーい、ゼタちゃん。そんなに拗ねるなよー。こっちで一緒に座ろう。海を見よう。人類は海から来たんだぞ」

「だ、黙れッ!♥ なんだこの刻印っ♥ 貴様! 私の腹に何をした!」

「ただの胎の中身完全服従刻印だろ」


 何怒ってんのコイツ。


「怒るわバカ! クズ!」


 内股でフルフルと震えてるゼタ。


 全然迫力がなくて可愛い。最初からそういう態度で居てくれればいいのに。


 砂浜でギャーギャー言ってくるゼタの抗議を眺めていたら、その背後に……


「お! あれ、アメリカ艦じゃねー?」


 見覚えのあるタイコンデロガ級が水平線の向こうに浮かんでいるのが、かすかに見えた。ざっと見、5~6キロってところか。


 呼べばすぐ来る距離だ。俺達は、というかゼタというVVIPが遭難中なわけで、捜索中なのだろう。


「呼んでみよっか? 無線もさっき直したし」

「バ、バカを言うな……っ こんな姿を兵に見せられるわけないだろ!」

「えー?」

「今! 貴様の刻印を抵抗(レジスト)している……! クズ猿の魔力を胎から全て追い出すから……っ」

「そーなんだ。頑張ってねー」


 ギリギリと歯を食いしばって。


 中腰状態で両ひざに手をのせて。


 踏んばって腹に魔力を込めるゼタ。さすがに世界最強。莫大な魔力をもって、なんとか刻印の定着に対抗している。一進一退と言ったところか。


 それ定着しちゃったら一生剥がれないから頑張って欲しいものだ。


 俺は面白がって「コンコン」とヘソのあたりを拳でノック。耳を当てて「空いてますかー?」と聞いたら、


『入ってまーす♥』


 と言いたげに「こぽこぽ♥」っと鳴って返って来たので、満足満足。刻印の定着は順調そうだ。


「馬鹿なっ! ありえない♥ こんな属州の男に!♥ 私が?! ミーゼス家の、世界の象徴が負けるなんて!?」

「お、無線繋がったわ。やっほー、ヴィンセント聞こえるー? こちら扶桑」


「こんな猿の子なんて産んでたまるか! 私は、私はゼタ・ミーゼスだぞ!♥」

「ああ、無事だよ。心配かけたね。無線ぶっ壊れてさー。ああ、ゼタ嬢も無事だ」


「負けっ♥ 負けるなんて……ありえない♥」

「無事なことをアメリカ側にも伝えて……ちょっと! うるさいなー。今電話してるでしょーが。お座り!」


 パチン!


 と、指を鳴らして刻印に魔力をぶち流す。


 ゼタの精いっぱいの抵抗(レジスト)は一瞬で塗りつぶされ、


「ぎぃ~~~~~~~~っ!♥♥♥」


 とヒキガエルみたいな声をあげ、白目剥いてひっくり返った。


 お座りっつってんのに。芸が違うぞ。


 こりゃもうちょっと救助は待ってやったほうがいいな。躾の時間が要る。


 無線の向こうのヴィンセントに「一週間したら迎えに来て」と伝え、俺は仰向けカエルの舌を優しくひっぱってやった。


――

[購入済み]

ゼタ・ミーゼス(20)

193cm 71kg 102-61-94

権能:『建国と支配の』 A+ランク

備考:ミーゼス家当主

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