8.皇帝陛下との謁見(2)
「帝国までよく来た!アシュリー・クローネ嬢!」
開口一番に出てきた皇帝陛下のセリフがこれ。
現在アシュリーは、謁見の間にて皇帝陛下と面会している。
この場には、アシュリーと皇帝陛下の他には、皇妃とレオノーラしかいない。
皇妃は皇帝陛下の隣に座しており、レオノーラはアシュリーの隣にいる。
「陛下。彼女は我が国の客人ですよ。もう少し言葉遣いに気を付けてください」
と皇妃にたしなめられている皇帝陛下。
「まぁまぁ。我らしかいないんじゃ。構わんだろう?」
「そういう問題ではありません」
「母上は厳しすぎるのじゃ。父上の言う通り……」
「何か言ったかしら?レオノーラ?」
「いえ、何でもありません」
レオノーラは皇妃陛下に頭が全く上がらない様子。
皇帝陛下はレオノーラに似て、豪快そうだ。
アシュリーからは皇帝陛下たちの様子はそう見えた。
それよりもまず……
「(家族仲がすごくいいのね……)」
このやり取りを見ていたアシュリーが真っ先に思ったことはそれだった。
常に王妃と王女としてしか接したことがなく、優しくしてくれたことのなかった母。
自分に対し無関心な父。
何かにつけて平民だ、汚らわしいと貶してくる側妃。
自分の方が優秀だと、上から目線で馬鹿にしてくる妹。
目の前の光景は、今までアシュリーに縁のなかったもの。
そんなアシュリーの様子を気づいていたかのように、突然皇帝陛下が。
「アシュリー嬢。帝国までよくぞ参った。帝国はお主を心から歓迎しよう」
「歓迎?私をですか……」
アシュリーは突然の皇帝陛下の言葉に驚きを隠せないでいる。
今まで、王国と帝国との交易の条件。つまりは人質同然の扱いであると考えていたから。
今陛下がおっしゃったのは、それとはまさに正反対のものだったから。
「お主の王国での扱いは、セシルから既に伺っている」
「実はセシルと私たちは、昔からの友人なの」
「お母様が……」
そこから皇帝陛下は、自分たちとセシルとの間柄を話し出した。
そのすべてが、アシュリーにとって衝撃的過ぎた。