7.皇帝陛下との謁見(1)
アシュリーは、レオノーラの案内で王宮の中を進んでいく。
アリア達アシュリーのお付きの人間は、別室に案内されている。
アシュリー達が向かっているのは、謁見の間。
そこには、レオノーラの父でもある皇帝陛下がいらっしゃる。
「ここまでの道中何事もなく、無事に来れて何よりじゃ」
「あの、レオノーラ皇女殿下」
「そんなに堅苦しく呼ばんでよい。わらわのことは呼び捨てで構わん。同い年なのじゃから」
会って間もないアシュリーにも気さくに接してくるレオノーラ。
更に自身のことを呼び捨てで構わないとさえ言ってくる。
レオノーラにそう言われたからといって、気軽に呼び捨てなどできるわけない、とアシュリーは思いつつ。
「では、レオノーラ様」
「様も要らぬが……まあ良い。好きにせい。それで、なんじゃ?」
「何故レオノーラ様があんなところに?」
「ん? 国境の検問所にいるのに、検問する以外に何か理由はあるのか?」
「ですから、何故レオノーラ様自ら国境に赴き検問を?」
「なんじゃそんなことか。勉強の息抜きじゃ。息抜き」
「息抜き……? 息抜きで普通は行かないかと……」
普通は息抜きで検問なんて、王族は絶対しない。
少なくともアシュリーはそう思った。
「なんじゃ? 行かないのか? 面白いのにのう……そうじゃ! 今度勉強サボって一緒に行くか!」
「いえ、私は……」
アシュリーはレオノーラの誘いを断ると……
「へぇ。勉強をサボってねぇ……私も一緒に行こうかしら?」
「母上と一緒なんて嫌じゃ。どんな地獄じゃ……」
レオノーラの背後から声がして、その声に返事をしたレオノーラ。
それと同時に、その足取りを止める。
それから、恐る恐る背後を振り返る。
彼女たちの背後にいたのは、レオノーラの母親である皇妃陛下。
皇妃陛下は、それはそれはいい笑顔でレオノーラを見ている。
「母上? どうしてこちらに……?」
「王国からの客人が到着したと知らせを聞いてね」
「そうじゃ。こちらが王国から来た……」
「レオノーラ」
「アシュリーよ。こちらがわらわの母で帝国の皇妃の……」
「あとで話があります」
「それより先に父上のところへ行かないと……さぁ、アシュリー。父上のいる謁見の間まで、もうすぐじゃからついて……」
レオノーラはこの場を何とかやり過ごそうとするも……
「レ・オ・ノ・ー・ラ?」
「……はい」
……無理でした。