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4.『王家の面汚し』帝国へ発つ

迎えた帝国へ出発の時、アシュリーを見送りに来たのは、宮中で彼女と親しくしていた、メイドや騎士団の人たちだけ。

ライオネルから話を聞いたアシュリーは、あの後セシルと話そうとしていたが、セシルはアシュリーとの面会を許可することはなく、今に至るまで話すことはできなかった。


セシルは本当にアシュリーのことを愛してくれていたのか……

最後までそのことを聞くことができずに、馬車は出発する。


「出してください」


アシュリーの横に座ったアリアが御者に声をかける。

その声を合図に馬車は出発する。


見送りだと思っていたアリアたちも一緒に。


「貴方たち、なんで……」

「なんでって……私たちも姫様についていくに決まってるからじゃないですか」

「姫様を一人になんてさせません!」


アリアをはじめとして、アシュリーのお付きだったメイドたちが全員自分についてきていた。

アリアたちが言っていたことは、自分を励ますための方便だと思っていたアシュリーは、驚きを隠せないでいる。

よくよく見ると、馬車を引いている御者をはじめ、馬車を護衛しているのも、騎士団でアシュリーが親しくしていた人だった。


「私についてくるのは、ご家族の方たちが反対したんじゃ……」


アシュリーの言う通り、宮中で仕えているメイドは、皆貴族の次女以下の令嬢たち。将来は家のために、他の貴族に嫁ぐために、宮中に奉公として来ている立場なのだ。

当然家の許可なく勝手なことは許されるわけがない。


「お父様の弱みはしっかり握ってますからね。ふふふ……」

「家は快く送り出してくれました!」

「私たちは皆アシュリー様に感謝しています。アシュリー様がいなかったら、あそこに私たちの居場所はなかったですから」

「貴方たち……」


アシュリーは、彼女たちの行動力にあきれるものの、一人じゃないことに安心感を覚えていた。

同時に、自分を慕ってついてきた彼女たちを不幸にしてはいけないと、責任も感じていた。


「それに、これで余計な仕事もしないで済みますしね」

「余計な仕事? それってどんな?」

「ラビニア様のお世話ですよ」

「え!?」


アリアたちは、アシュリーのお付きのメイド。それなのにラビニアの世話もしていたというのは、どういうことなのか。


「ラビニア様のお付きの人たちは、陛下から寵愛を受けているラビニア様やリーテルマ様に近づくことで、そのおこぼれにあやかろうと考えた人たちばかりなんです」


彼女たちは皆、アリアたちのことを下に見ていた。

そのため、本来自分たちがやらなければいけないことも、すべてアリアたちに押し付けていたのだ。


「私たちがいなくなって、ラビニア様の機嫌を損ねないといいですけどね……ふふふっ」

「アリア……」


一緒に乗っていた、メイドのイリスの顔は笑っているが、あれは絶対怒ってる……

馬車にいる一同が全員そう考えた。

たまらずアリアは話を変えることにした。


「帝国までの道中は長いですし。お茶にしませんか?」


そう言ってアリアは、馬車の中でお茶の準備を始めた。

「……こぼさないでよ」

「大丈夫です!」

「貴方が大丈夫って言ったときは、大抵大丈夫じゃないんだけどね」

「ひどい!?」


先日までの、暗い雰囲気が嘘のように、彼女の心は今晴れやかだった。

この時、アシュリーはこう思っていた。

彼女たちが一緒なら、帝国でも大丈夫な気がすると……。

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