2.王妃との面会、お付きのメイド達
パーティでの騒動の後、アシュリーは彼女の母でありこの国の王妃のセシルと面会を行っていた。
王妃としての公務で多忙なセシルとアシュリーが顔を合わせるのは、実は久しぶりのことなのだ。
「帝国へ行く支度はできたかしら?」
「いえ、これからです……」
「そう。なるべく早くなさい」
二人の会話は、およそ家族がするようなものとは言えない程、淡々としていた。
「はい……あの、お母様……」
「まだ何か?」
「いえ……」
「他に用がないなら出ていきなさい。仕事の邪魔よ」
「はい……失礼しました」
自室に戻ったアシュリーに対して、お付きのメイドであるアリアが紅茶を入れてくれる。
「アシュリー様。大丈夫ですか」
「ええ……ありがとう。貴方の入れてくれるお茶は、すごくおいしいわ」
「そんな……私にはこれしかできませんから」
アシュリーの側付きメイドは、アリア含めて片手で数えるくらいしかいない。王女であるにもかかわらず。
対してラビニアに仕えているメイドの数はその倍以上。
王宮に務めているメイド達は、アシュリーよりもラビニアに仕えていた方が、将来的に有益だろうという考えているものが殆ど。
アリアを含め、アシュリーに仕えているメイドたちは、何かしら得意なことを持っているが、それ以外は失敗ばかりしており、周りから馬鹿にされてきた者が多い。
例えばアリアは、紅茶を入れるのは上手い。ただそれ以外の掃除等は満足にできず失敗しかしない。といったように。
アシュリーのお付きになったのも、最初は他のメイドから押し付けられたのが始まり。
「そんなことないわ。王女教育で辛いときも、貴方たちがいつもそばにいて励ましてくれた。私はそれに救われてばかりで、貴方たちに何も返せなくて、ごめんなさい」
「謝らないでください! 私たちは好きでアシュリー様にお仕えしているのです!」
「そうです! 王宮内で馬鹿にされ続けてきた私たちを、アシュリー様はおそばにおいてくださった。それだけで十分幸せです」
彼女たちは、アシュリーに感謝の気持ちでいっぱいだった。
「帝国へは私たちもご一緒します!」
「でも、ご家族の方たちが反対するんじゃ……」
「何とかします!」
アリアの決意に満ちた姿に、自分はこんなにも慕われていたんだと、少し感傷に浸ってしまった。