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18.本当の実力

迷った末アシュリーは騎士科に進むことに決めた。


騎士科の授業は、半分の時間は貴族科と同じ授業を行う。

これは、騎士として王国に所属した際に、茶会やパーティーの護衛を行うために最低限知っておいていた方がいいとのことから実施している。


アシュリーも、王国とは違った仕来りがあることに戸惑っていたが、周りの生徒が授業で分からないところを気安く教えてくれた。


「帝国の侯爵家に滞在するからには、アシュリー様には帝国での作法を完璧にマスターしていただきます」


それだけでなく、学園から帰宅後や学園が休みの日には、メラルバ侯爵から直接指導を受けているのも大きい。


メラルバ侯爵は、レオノーラをはじめとして王族や上級貴族の教育係を務めていたとのことで、その内容はとても厳しいが教え方も上手く、アシュリーにも分かりやすく丁寧に教えてもらえた。


残り半分の時間で実技の授業を行っている。

実技の内容は、騎士団から派遣された騎士から直接生徒の指導を行うというもの。



昔は実技担当の教師が在籍していたのだが、廃止になった。


その教師が、自分の贔屓の生徒や親が高位貴族の生徒を王族の近衛騎士を始めとした、地位の実力のある人だけが入れる王宮騎士団に推薦し、見返りに金銭を受け取るといった自体が発生していたから。


現皇帝が学生時代にその事実を調査。前皇帝に訴えた結果、その教師はクビに。


その時より、騎士科に所属する生徒の殆どは将来騎士になる人たちだということから、現役の騎士が直接指導したほうがいいだろうと判断して、今の授業体制になったという。


その効果は今の帝国の力を見れば一目瞭然だろう。



アシュリーの学園生活は、王国とは比べ物にならないほど充実していた。


それは結果にも表れた。



「お嬢様、おめでとうございます!」

「お嬢様ならこれくらい当然の結果です」

「お嬢様、流石……」


と定期試験の結果を見るアシュリーを祝福しているアリア達。


当のアシュリー本人はこの事実にまだ現実が受け止められていないようで、成績表を見ながら固まっている。


「私が、主席……」

「なんじゃ? まだ信じられんのか? 現に成績表にそう書いてあろう」

「それはそうなんですけど……こんなの初めてで」

「これは当然の結果でしょう。アシュリー様は私の授業にもついてくることが出来ていますから」

「メラルバ侯爵は鬼じゃからのう……ついていけるのなら筆記試験なぞ主席以外ないわな」

「レオノーラ様はいつも逃げていらっしゃいましたものね」

「……さて、何のことかのう~……」


側でいつものやり取りをしているレオノーラとメラルバ侯爵の様子も、アシュリーの耳には入ってこない。


「私の実力で実技試験も主席って……みんなは騎士の人といい試合が出来ていたけど、私は試験でもあの人に全くかなわなかったのに」

「「……」」


とアシュリーの言葉を聞いてレオノーラとメラルバ侯爵は、いつもの言い合いをするのを止めて、アシュリーの方を見る。


「え? 二人ともどうなさったのですか?」

「いや、のう……」

「まぁ、アシュリー様は近衛隊長からしか指導を受けなかったのでしょう?」

「そうじゃが……」


歯切れの悪い二人に、アシュリーは自分が何か変なことを言ったのだろうか?と考える。


「私、何か変なこと言いましたか」

「アシュリーよ。近衛騎士はな、騎士団の中でも選りすぐりの精鋭が選ばれるのじゃ」

「近衛騎士だから、そうですよね?」

「近衛騎士に選ばれるものの実力は、他の騎士の頭一つ、どころではないな。それ以上に離れているのじゃ」

「え、それじゃあ。近衛隊長様って……」

「この国の最強騎士……じゃな」

「えっ…………」


その言葉を聞いたアシュリーは、驚きすぎてなにも言葉が出なかった。


「その近衛隊長から直接指導を受けれる時点で、お主は他の生徒より頭一つは実力があるわ」

「当然ですね! お嬢様は王国でも騎士団長から稽古を受けていたのですから」

「一生お嬢様についていきます!」

「流石私のお嬢様……」



温かい目でアシュリーを見ているレオノーラや、アシュリーそっちのけで盛り上がっているアリア達。


アシュリーが現実を直視するのには、それから数十分かかった。

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