17.国王の表と裏
国王一行は王都への視察を終え王宮へと戻ってきていた。
王宮では、国王の側近をはじめとした王宮勤めの人たちが一斉に出迎えている。
「おかえりなさいませ。陛下」
「うむ」
と国王に駆け寄る側妃リーテルマ。
「すぐに着替えと湯浴みの用意を、それとお前、これを処分しておけ」
と国王は侍女に子供たちからもらった花を放り投げる。
侍女はそれを受取ろうとするも、受け止めきれない花が床に散らばっている。
「あと、余が今着ている服も汚れた。同じく処分しておけ」
「……かしこまりました」
侍女はそういうと、国王のいう通りに床に落ちた花を回収して、奥に下がっていく。
当然のことだが誰もそのことに意見ひとつ言わない。
「それとお前。さっきはよくも余に恥を搔かせてくれたな」
と国王はセシルに対し詰め寄る。
「お言葉ですが陛下。王都の役所の管理責任者はリーテルマ様の担当です」
「何かありましたの? 陛下」
国王はリーテルマに、視察中の出来事を話す。
リーテルマはそれを聞いても悪びれるそぶりを全く見せない。
それどころか逆に王妃に罵声を浴びせる始末。
「私は貴方みたいに暇じゃないの。ラビニアのことで忙しいの。貴方お荷物が無くなって暇でしょ。それくらいやりなさいよ」
「そうだな、それがいい。お前がやっておけ」
国王もリーテルマを叱責するどころが、同じくセシルに責任を押し付ける始末。
「……かしこまりました」
セシルはそれに言い返すことはせずに、ただ頷くだけ。
国王たちは、セシルなどこの場にいないかのように、自分たちだけで湯浴みへと向かっていく。
その場にはセシルと、彼女の直属の侍女が残るだけ。
「……セシル、大丈夫?」
「……ええ、大丈夫よ……まだ、ね」
「国民は、陛下があんな人だなんて知らないのよね」
「陛下、外面だけはいいから」
「……今日も徹夜かしら」
「……ごめんなさい」
「気にしないで。それよりアシュリー様のことだけど」
とセシルは侍女からアシュリーの近況について聞いている。
アシュリーは帝国で楽しそうに過ごしているのを聞いたセシルは、今日初めて安堵したようで表情を柔らかくした。
「そう、あの子は元気に過ごしているのね……よかった」
「これからの動きは? 手筈通りにすればいいのね?」
「ええ、それで大丈夫。公爵様に伝えておいてくれる?」
「分かったわ」
セシルたちは国王の知らぬ間に、行動を起こし始める……
セシルの王妃としての、最後の大仕事に向けての……