13.帝国学園入学-魔法科-
翌日レオノーラに案内されたのは魔法科。
この科は、名前の通り魔法に関して学ぶことをメインとしている。
「魔力持ちはその大小にかかわらず、所属することが可能じゃ」
「王国とは全然違うんですね……」
レオノーラから説明されたアシュリーは、王国との違いに驚いていた。
王国では一定の魔力を持った人間以外は、所属することすら叶わなかったから。
さらに高位の貴族はこう魔力持ちが殆どと言われているため、所属することすら出来なかったアシュリーは、
「やっぱり平民の子だから、大した魔力も持ってないのね」
などと周りから馬鹿にされてきた。
帝国では、魔力量に応じてクラスが分けられており、魔力持ちなら誰でもできる生活魔法から、魔法士として実戦で使用する高等魔法までを、個人の適正に合わせて授業を行っていくそう。
「少し体験していくか?」
「いいんですか?」
「構わん構わん、ちょっと待っておれ」
レオノーラは、講師と言葉を交わした後に、授業をしているとある女性に駆け寄ると、一言二言話した後に有無を言わさず、その女性とを連れてアシュリーのところに戻ってきた。
連れられた人は困惑した様子。
「こやつはリサ。非常に優秀な奴じゃ」
「そ、そんな、私が優秀なんて……」
レオノーラが連れてきたリサという女の子は、終始おどおどした様子でアシュリーも少し不安になった。
「初めまして、アシュリー・クローネと申します」
「は、はい。リサ……です……」
「ほんとにリサは相変わらずじゃのう。もう少し自分に自信を持ってよい、といつも言っておろうに」
「で、ですが私には……レオノーラ様が期待されるほどの力なんて……」
リサの自分に自信なさげな様子に何か思うところがあったようで。
「リサ様。とお呼びしてもよろしいかしら?」
「い、いえっ。私は平民ですので気軽にリサと呼んでいただければ……」
「ではリサさんと。私は魔力持ちではありますが、魔法の勉強を行ったことはありませんの」
「そ、そうなんですか?」
「ええ、王国では一定量の魔力持ち以外は、勉強する機会すら与えられませんの」
「そ、それは駄目です!」
とアシュリーの言葉を聞いたリサの雰囲気が先ほどまでとガラっと変わった。
「駄目、とは……?」
「魔力とはどんなに少量でも、体内に保持している人はきちんと制御できるように訓練しないと、暴走の危険があるんですっ!」
先ほどまでのおどおどした様子が嘘のように、前のめりになって話しかけてくるリサ。
「……す、すみません……」
しばらくして我に返ったリサは、恥ずかしさで顔が赤くなっている。
「いえ、少しびっくりしただけなので、気にしないでください」
「あっはっは!! 相変わらずリサは面白い奴じゃの! わらわが目を付けただけはある」
「うう……恥ずかしい……」
おとなしいと思ったら意外と、はっきりと言うことは言う人なんだなとこの時アシュリーはリサのことを見ていた。
「それとさっきの、暴走とは?」
リサから出た言葉にアシュリーは驚いた。
王国にいたころ、そんな話は聞いたことがなかったから。
「若いうちはそんなに問題はないんですけど、年をとってくると体が耐えられなくて普通の人よりも早く亡くなってしまうんです」
「そんなこと王国では、教わりませんでした」
「そうじゃろうな。帝国でもつい最近研究で分かったことじゃからな」
このことが分かってから帝国学園では、入学時に魔力制御ができない人を対象に、特別授業を実施している。
帝国としても、孤児院を見回り子供たちに魔力検査を実施し、万が一魔力持ちがいた場合は、魔力制御について教えている。
「まぁわらわは皇女教育で教わっていたから問題はないんじゃが、お主はどうじゃ?」
「私も、お母様から……」
アシュリーは王国学園で魔法の授業は参加することすら出来なかったが、母であるセシルから教わっていた。
王族なら必要なことだと言われて。
「わらわも魔力持ちだが、魔力量は壊滅的での。お主よりも少ないかも知れぬ」
「そうなのですか?」
「うむ。じゃからもし魔法が学びたいなら、リサに教わるとよい。そういうわけだからリサよ、頼むぞ!」
「わ、わかりました……」
「よろしくお願いします」
「まあここに通っている連中は、変わっている奴が多くて面白い所じゃ」
「(レオノーラ様より変わっている人はそういらっしゃらないと思うけど……)」
とアシュリーは内心で思っているが、それは口に出さないでおくことにした……。